企業のブランド力を高める方法として、「インナーブランディング」があります。
似た言葉に「エクスターナルブランディング」があるため、違いが分からない方もいるでしょう。
ここでは、
- インナーブランディングとエクスターナルブランディングのそれぞれの特徴と違い
- インナーブランディングのメリット・デメリット
- インナーブランディングの手順や具体的な施策
を紹介します。
インナーブランディングとは?
「ブランディング」とは、企業の魅力を伝えファンを増やすことです。
これには、企業の外側と内側に向けられたものがあります。
内側に向けられたブランディングのことを、「インナーブランディング(Inner branding)」と呼んでいます。
「インナー」は、英語で「Inner」のことです。
直訳すると、内側の・内部のという意味があります。
内部の英語は、「Internal」とも表現できることから、インナーブランディングは別名「インターナルブランディング」とも呼ばれています。
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エクスターナルブランディングとの違い
一方で、エクスターナルブランディングとは、企業の外側に向けられたブランディングのことです。
一般的にブランディングは消費者に向けられることが多いため、ブランディングといえばエクスターナルブランディングのことを示しています。
エクスターナルを英語にすると、「external」です。意味は、外部の・外側です。
外側に向けられたブランディングのため、対象範囲が変わると地域社会や公的機関などに対するブランディングを示すこともあります。
エクスターナルブランディングは、別名アウターブランディング(Outer branding)とも呼ばれます。
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インナーブランディングの目的
企業が従業員に向けてインナーブランディングをする目的は、企業の価値や理念を伝えるためです。
社員が会社のことを深く理解して、理念に共感してもらうためブランディングをします。
社員が自社の商品のことを知らず愛着を持っていないと、それが消費者にも伝わってしまうでしょう。
結果的に、企業の商品やサービスが消費者に受け入れられないものとなってしまいます。
だからこそ、外側に向けたブランディングだけでなく、内側に向けた働きかけを考えていかなければなりません。
インナーブランディングが重要な理由
近年では、インナーブランディングの重要性が高まっています。
インナーブランディングを行う目的は「社員が会社のことを深く理解すること」ですが、社員のひとりひとりが企業の魅力の理念を理解し日々行動していくことで、企業のブランドとしての価値が確立していきます。
インナーブランディングをしっかりと実施していくことは、会社の外に向けたエクスターナルブランディングにもよい効果をもたらし、結果的に企業の業績アップにもつながるでしょう。
また、近年ではコロナ禍によってテレワークなどが増え、社員間のコミュニケーションが少なくなっています。
コミュニケーション不足になると、社員の会社や仕事に対する姿勢がバラバラになってしまうことが考えられます。
その結果、会社や一緒に働く同僚に対して不満が溜まったり、仕事に対するモチベーションが下がってしまうこともあり得るでしょう。
変化が激しい社会で働き方も多様になっている昨今では特に、社員の方向性統一するためのインナーブランディングが重要視されているのです。
インナーブランディングのメリット
基本的なインナーブランディングの目的は、社員が企業の価値や理念を理解することです。
しかし、実は社員へのブランディングはそれ以上の効果をもたらします。
その効果には以下のようなものがあります。
- 自社に対する愛着が高まる
- 仕事へのモチベーションアップ
- 社員同士の連帯感が高まる
- 企業理念に共感する人材を確保しやすい
- 競合他社との差別化につながる
- エクスターナルブランディング向上効果
詳しく解説していきます。
自社に対する愛着が高まる
社員が自社の商品やサービスを深く理解すると、愛着が高まるでしょう。
何のための商品やサービスなのかが理解できれば、自身も納得して周りにアピールできるようになります。
社員の愛着が高まれば、自然と知人や友人にも自社商品やサービスを話したくなるでしょう。
周りに自信をもって紹介できる商品やサービスだという理解度が高まると、もっとアピールしたい気持ちが湧いてきて相乗効果をもたらします。
例えば、社員自らSNSで情報発信をしてくれるようになるという効果です。
社員に対するブランディングができていれば、会社が従業員に対し情報発信をするようにと働きかける必要もないのです。
仕事へのモチベーションアップ
社員が自社の商品やサービスに愛着を持つと、仕事に対しての自発的な行動をとるようになります。
誰かに指示されてやらされている感ではなく、自分で考えて行動するように変わっていくでしょう。
社員の仕事に対するモチベーションが上がるのは、自社商品やサービスに対する愛着だけでなく社会に貢献できる喜びもあります。
誰でも誰かの役に立ちたいと考えるものです。
仕事をすることが社会貢献に繋がるのであれば、自然と自ら行動する意欲も高まっていきます。
社員同士の連帯感が高まる
1つの理念に対して従業員が行動するようになると、社員同士の連帯感が高まります。
誰かが困っていれば自然と助け合う関係性が築けるでしょう。
連帯感が高まると、新しいアイディアが生まれていく効果もあります。
お互いが高め合うことで、生産性も高まっていきます。
また、インナーブランディングの定着により、自社の文化や理念に合わない社員を洗い出すこともできます。
社員が企業に対する愛着を持ち社員同士の連帯感が高まることで、社内規則を破る社員もいなくなって、組織としても管理がしやすくなるでしょう。
従業員の定着率がアップする
社員が自社の商品やサービスに愛着をもつようになると、働く意義が出てくるでしょう。
結果的に、社員の定着率がアップします。
企業にとっても社員の定着率が上がれば、新たな社員を一から育てる労力がなくなり、業績アップに繋がるとも言えます。
企業理念に共感する人材を確保しやすい
社員が自社に愛着をもち消費者にアピールするようになると、社外の認知度が高まります。
すると、企業理念に共感する人材が集まってくるでしょう。
インナーブランディングを高めることで、人材確保に悩まなくなりモチベーションの高い人材が自然と集まってくる効果があります。
競合他社との差別化につながる
インナーブランディングを行う過程では、自社の持つ魅力や顧客に提供したい価値や理念を洗い出します。
その結果、競合他社にはない自社独自の持つ強みが明確になるのです。
その独自の強みを社員が日々の仕事のなかで意識していくことで、魅力が顧客にも伝わり、自社を選んでくれるファンやリピーターが増えるでしょう。
エクスターナルブランディング向上効果
社員が自社商品やサービスを理解できると、顧客へのアピールが明確になります。
商品開発においてもビジョンが明確なため、顧客満足度の高い商品が生み出されるでしょう。
エクスターナルブランディングの効果が出るには時間がかかりますが、遠回りのようでも確実に企業の内側と外側に対する効果が見えてきます。
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インナーブランディングのデメリット
多くのメリットが得られるインナーブランディングですが、実はデメリットもあります。
インナーブランディングのデメリットは、以下の点です。
- 労力とコストがかかる
- 社員の多様性を排除してしまうリスクがある
労力とコストがかかる
インナーブランディングを行うにはいくつかの工程を踏まなければならず、多くの時間と労力がかかります。
また、社員にブランディングを浸透させていくにも、その効果が出るまでにも長い時間がかかります。
インナーブランディングは一朝一夕でできるものではないという点は、理解しておきましょう。
加えて、専門業者にブランディングを依頼する場合は依頼するための費用ががかかり、施策を行うのにもコストがかかってくるでしょう。
ただし、ブランディングについてのノウハウがない会社の場合、社内でインナーブランディングを行うよりも外注したほうが結果的に費用をかけず効果を得ることができます。
自社の状況や予算に合わせて、ブランディングの進め方や施策を検討することが大切です。
インナーブランディングの具体的な施策は、この記事の後半でまとめています。
社員の多様性を排除してしまうリスクがある
「自社の文化や理念に合わない社員を洗い出すこともできる」というのもインナーブランディング定着のメリットですが、見方を変えると「インナーブランディングには社員の多様性を排除してしまうリスクがある」とも言えます。
また、会社の理念や価値を洗い出す作業が不十分であった場合、社員の反感を買ったり、賛同しない者が出てきたりする可能性もあります。
そうならないためには、インナーブランディングを行う際はじめにやるべき「現状調査」や「経営理念や目的の見直し」を十分に行う必要があります。
社員たちの共感が得られるような価値づけをすることが大切です。
また、インナーブランディングが確立したら、採用面接などの際に応募者の価値観と自社のブランディングが合い、互いがwin-winの関係で働いていけるかという点も確認していくことも重要になります。
【5ステップ】インナーブランディングの手順
前述したように、インナーブランディングを高めるとそれによる効果は期待できますが、一方で時間やコストがかかるというデメリットもあります。
また、企業の経営理念や目的が明確ではないと、効果が弱まってしまうでしょう。
ブランディングを高めるために、次のような5ステップで進んでください。
- 現状を調査する
- 経営理念や目的の見直し
- 従業員に浸透させる
- 従業員を評価する場を設ける
- 効果を計測し改善していく
現状を調査する
まずは、社員が自社に対しどのようなイメージがあるのか調査します。
経営理念を理解しているのか、自社商品やサービスのメリットを理解しているかを聞き取りしましょう。
具体的な調査方法として、アンケートを取る方法があります。
アンケートは、仕事の合間に答えられるような簡単な選択式がおすすめです。
経営理念や目的の見直し
社員に自社の経営理念や目的が浸透していないときは、経営理念そのものに問題があると判断できるため見直しが必要でしょう。
経営理念とは、会社が最終的に目指す理想の形を明文化したものです。
なぜ経営理念が悪いとダメなのかというと、社員が何を目的にして働いているのかが分からなくなるためです。
経営理念は定期的に見直しても構いません。
重要なのは、綺麗ごとではなく経営者の本当の想いを伝えることです。
経営理念や目的ができ提供したい価値の見直しが明確になったら、「ブランドコンセプト」を作成してください。
「ブランドコンセプト」とは、ブランドのコアになる価値を簡潔でわかりやすい言葉にしたものです
ブランドコンセプトは、社外に発信するブランディングにおいても重要な要素になります。
そのため、社員に共感してもらえるものにするのはもちろん、顧客のニーズも踏まえて決定しましょう。
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従業員に浸透させる
経営理念や目的が決まったら、次は社員に浸透させます。
社員に浸透させるには、社内報を活用するという方法があります。
例えば社内ですべきこと・しなくていいことを伝えれば、ビジョンが浸透しやすくなるでしょう。
または、お客様からの喜びの声を掲載して、どんなことが喜ばれるのかを知らせる方法もあります。
さらに、社員自体の満足度を高める方法もおすすめです。言葉で伝えようとしても限界があるため、社員一人一人に自分が大切にされているということを実感してもらいましょう。
「社員あってこその会社だ」という想いが伝われば、社員の自主性を育てることができます。
従業員を評価する場を設ける
結果を出した社員は、多くの人の前で表彰しましょう。
コンテストを開催するのも、社員の意欲が高まる効果があります。
また、成果を出した社員には、ボーナスや給料アップ制度を設けるといいでしょう。
見える形で評価することで、社員のモチベーションアップに繋がります。
効果を計測し改善していく
インナーブランディングの評価方法には、必ず数値で表せるものを選びます。
データ化できれば状況把握がしやすく、改善に繋げやすいためです。
数値化するためには、定期的に社員にアンケートを取るのがよいでしょう。
スコアが高まれば改善されていると判断できます。
アンケートを行う際は忙しい繁忙期は避けるなど、インナーブランディングが社員の負担にならない工夫をしましょう。
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インナーブランディング実施時の注意点
インナーブランディングを実施する際は、以下の3点に注意してください。
- 長期的に取り組む必要がある
- 効果を測定するのが難しい
- 社員の価値観を尊重し、会社の理念を押し付けない
インナーブランディングのデメリットの項目で前述したとおり、インナーブランディングは一朝一夕で効果が得られるものではありません。
社内理念や価値観の浸透には、長い時間がかかるものです。
数カ月から数年単位かかるものだと考えて、計画・実施してください。
また、インナーブランディングは社員へのアンケートで効果を可視化することができますが、アンケートは感覚的な質問・回答になることも多いため、日々の社員の行動を観察し変化があるかを見ていくことも必要です。
そして、インナーブランディングには「価値観の多様性を排除する」というリスクがあります。
実施する際は会社の価値観を社員に押し付けず、興味を持ってもらえるような発信をしていくことが重要です。
インナーブランディングの具体的な施策
インナーブランディングの具体的な施策には、以下のようなものがあります。
- 社内イベントの実施
- 表彰制度の導入
- 社内報・ポスター作り
- 社内アンケートの実施
- 自社の動画を作る
- 自社の書籍を作る
- ビジョンブックを作る
社内イベントの実施
社員が交友するイベントの実施は、社員同士のコミュニケーションや価値観の共有につながります。
企業理念やビジョンに関連したイベントを実施すると、インナーブランディングにさらに効果的になるでしょう。
表彰制度の導入
会社の理念や価値観を十分に理解し結果を出した社員を、多くの人の社員の前で表彰するのもインナーブランディングには効果的です。
ボーナスや給料アップ制度を設けことで、より社員のモチベーションアップにつながるでしょう。
社内報・ポスター作り
定期的に発行する社内報に、社員の活動報告などを載せることはインナーブランディングに役立ちます。
成果を出している社員を紹介すれば、モチベーションアップにもつながるでしょう。
また、ブランドコンセプトを記したポスターを制作して社内に貼り出すというのも、よく使われる手法です。
毎日目に付く場所にポスターを貼っておくことで、自然にインナーブランディングを浸透させていくことができるでしょう。
自社の動画を作る
企業理念や企業の価値観、商材の紹介を動画という形でまとめるのも、インナーブランディングに効果的です。
これらを動画にまとめると、多くの情報をわかりやすく短時間で視聴者に伝えることができます。
動画を作る過程の、企画・撮影・編集などには多くの時間や労力がかかります。
動画を作る場合は、費用はかかりますがクオリティの高い動画を作るために専門会社に外注するのもおすすめです。
自社の書籍を作る
企業の情報を盛り込んだ書籍を作る「企業出版」も、ひとつの手です。
「企業出版」とは企業の経営課題を解決するための本ですが、自社の社員に読んでもらうことで人材育成に役立ちます。
社長が書いた本であれば、社員が社長の抱くビジョンに共感する大きなきっかけになるでしょう。
また、企業出版の書籍は著作権が自社にあるため出版後は自由に使用することができます。
取引先に配ったり、書店やAmazonで販売したりすることで「エクスターナルブランディング」に対する効果も期待できます。
企業出版をするなら、企業出版を専門に扱っている出版社に依頼するのがおすすめです。
企業出版を取り扱うおすすめ出版社についてはこちらの記事でまとめています↓
企業出版とは法人が出版社に対して書籍の流通を依頼し、出版費用を法人側が負担するスタイルです。 書籍を通じて商品・サービスのPRやブランドイメージの発信を行えば、ほかの媒体を使うよりもはるかに長期的な集客効果を見込めます。 […]
ビジョンブックを作る
よりインナーブランディングに適した本を作りたいなら、「ビジョンブック」がおすすめです。
「ビジョンブック」とは自社ががどんな存在で・どんな目的を持っており・どのような歴史を持っている会社なのかをまとめた書籍のことです。
社内でビジョンブックを配布することで、企業理念の浸透を促すことができます。
また、冊子の後半にノートをつけておけば、社長や上司との面談(1on1)を行う際に社員が抱える悩みや相談したいことをまとめておくことができ便利です。
このように、ビジョンブックは社内のコミュニケーションにも役立つのです。
当WEBメディアを運営する出版社ラーニングスでは、ビジョンブックの制作サービスをご提供しています。
ラーニングスの社内でも、作ったビジョンブックを活用しています。

ビジョンブックの制作サービスについては、ラーニングスホームページブログにて詳しく解説しておりますので、気になった方はぜひご覧ください。
ラーニングスホームページはこちら↓
最近、企業での人材教育や人材育成ツールの一つとしてビジョンブックが注目を集めています。ここでは ●ビジョンブックとはどん…
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まとめ
企業の内側に向けるインナーブランディングは、外部への働きかけに比べて軽視されがちです。
インナーブランディングには、時間や費用がかかります。
しかし、自社のブランディングに成功している企業の多くは、インナーブランディングを丁寧に行っているという背景があります。
成功している企業を見習い、ぜひ企業の内側のインナーブランディングも試してみてください。
投稿者プロフィール

- 学生や子育て中のママなど、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属。
出版をもっと身近に感じてもらうために、自分の家族や友達にも読んでもらえるような、分かりやすく丁寧な記事づくりを心掛けています。
これからも有益な記事を日々発信できるよう、尽力していきます!
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