いきなりですが、「2025年問題」に対して、あなたの経営している(あるいは勤めている)会社は真剣に向き合って対策を練られていますか?
日本の人口の年齢別比率が劇的に変化するタイミングを迎える2025年。
これまでは高齢化社会と言われていましたが、2025年からは超高齢化社会を迎えます。
すでに「人手不足」を感じていたり、「なかなか採用ができない」と感じていた方も多いと思いますが、それをより一層如実に実感するタイミングがまもなくやってくるのです。
労働力不足だけでなく、介護や医療現場の崩壊、経済悪化など多くの問題を日本は抱えます。
また、「2025年の崖」というキーワードもあり、これはIT人材不足によりDXが推進できず、国際競争力を失う、という問題を指します。
社会保障が重くのしかかり、日々の生活に精一杯で未来への希望が持てない…。
がむしゃらに働いても意味があるのか…。
終身雇用が崩壊した今、毎日を必死に生きて、そして余裕がなくなって限界を迎え、心も身体も壊してしまい休みが必要になる人もいます。
そんな若者や働き手が少ない状況に危機感を持った企業は、今いる人たちが長く働いてくれるように、働いてくれる人たちが心身ともに健康で働ける環境づくりを意識し始めました。
働き方改革や健康経営はもちろんのこと、現在「ウェルビーイング経営」が注目を集めています。
そこで今回は、
- ウェルビーイングとはなにか
- ウェルビーイング経営とはなにか
- 健康経営との違い
について解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
大学時代からこれまで自身が著者で出版した本は16冊、読んできたビジネス書・実用書は3,000冊以上。はじめて本を出版する企業や個人事業主の方を対象に、出版でビジネスを加速させるお手伝いに力を入れる。
ウェルビーイングとは
まずは「ウェルビーイング」についてご紹介します。
ウェルビーイングは「well(良い)」と「being(状態)」、すなわち良い状態という意味の言葉で、1948年に世界保健機関(WHO)憲章の前文に登場しました。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
引用:世界保健機関憲章前文(日本WHO協会仮訳)https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/
世界保健機関(WHO)https://japan-who.or.jp/about/
ただ健康な身体がある、というだけでなく、社会的にも満たされている状態がウィルビーイングなのです。
主観的ウェルビーイングと客観的ウェルビーイングについて
ウェルビーイングには、2種類あります。
「主観的ウェルビーイング」と「客観的ウェルビーイング」です。
主観的ウェルビーイングは、自分自身の感覚や認識によって自覚するものです。
人生で幸せを感じている、今の自分に満足をしている、生活が満ち足りている、嬉しい・楽しいといった感情をもとに、自分で「今ウェルビーイングな状態なのか」を判断します。
これは人によって「良い状態とはなにか」が違ってくるので、一概に主観的ウェルビーイングの状態はこうだ、と決めつけることはできません。
一方、客観的ウェルビーイングとは、自身の感覚ではなく、数値基準で把握するものです。
例えば、寿命、資産、労働時間など統計データで良いか悪いかが判断できます。
ウェルビーイングとは、定まって「こういう状態」というものではなく、あくまでも自分自身が幸福を感じられる状態がどんなものかを考えて実現させていくものなのです。
ウェルビーイング経営とは
では、現在注目されている「ウェルビーイング経営」とはどのような経営手法なのでしょうか?
ウェルビーイング経営とは働く人、関わる人すべての幸福を追求する経営手法です。
従業員、取引先をはじめ、ビジネスで関わる人たちが身体的・精神的・社会的に満たされて、いきいきと働ける環境をつくることを目標としています。
ウェルビーイングとは、人それぞれどのような状態が良いのか違いますが、経営でも同じです。
自社の理念や社風に合わせてどのようなウェルビーイング経営を目指すのが良いかは一社一社違います。
効果が出るまでに時間がかかりますし、幸福度という数値だけではすべてを計れないものに注視していく経営手法ですので、ウェルビーイング経営を行う際は、まず早急に改善しなければいけない点から対処し、中長期的に持続可能な状態を保つことも忘れないでください。
コラム|「代わりはいくらでもいる」はもう古い!
仕事において、人間関係や生産性などの諸問題の多くが「余裕のなさ」からくるものではないでしょうか?
だからこそ、一人ひとりが余裕を持って安心して能力を発揮できる環境をつくることで、やる気のある従業員が集まり、より良いアイデアが生まれ、生産性が高まり、業績の向上が期待できます。
余裕を持って仕事をすることは、決して手を抜いて仕事をすることや楽な環境で働くことではありません。
必要な仕事に集中して取り組むために、いらない作業や無駄な会議、精神的な抑圧から解放されて、従業員一人ひとりが能力を発揮し続ける状態が、余裕を持って仕事をするということです。
少し前までの日本ではとにかくがむしゃらに働くこと、長時間働くこと、膨大な量の仕事をこなすことが良いとされてきましたが、現実問題、働く人が減るならば、利益を出すためにも少人数で最大の利益を出さなければなりません。
経営資源である人・物・金・情報のうちの1つの確保が日本全体で難しい状態となっているのです。
減っていくばかりの人に対してもう「代わりはいくらでもいる」という視点を持ち続けることはできません。
加えて、時間は平等なので、多くの時間を使って成果を出すことよりも、どれだけ有効的に時間を使って成果を出し続けることができるかが、これからのビジネスシーンでは勝負所となってきます。
健康経営との違い
ウェルビーイング経営について調べていくと、「健康経営」という言葉も気になるのではないでしょうか?
健康経営とは、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」だと経済産業省のホームページに記載があります。
(参考:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html)
従業員等の健康保持・促進への取り組みが将来的に収益性等を高める投資であるという考えのもと、例えば、労働時間や休暇の見直し、定期健診の受診率向上、病気の早期発見・早期治療に取り組むことが健康経営です。
この健康経営とウェルビーイング経営の一番の違いは「視座がどこにあるのか」という点です。
健康経営はあくまでも最終的に企業がメリットを得ることが目的です。
人的資本に投資することで、自社に合った健康的な人材に長く働いてもらい、従業員の成長によって企業が発展することがゴールとなっています。
一方、ウェルビーイング経営の目的は従業員が自分らしい幸福を心身と社会的な状態含めてすべてが満たされる状態を目指すことです。
企業側が、というよりも、従業員目線で行う取り組みがウェルビーイング経営となります。
どちらも企業の発展がゴールにありますが、最初から企業の発展ありきでそのために人を健康にしたいのか、それとも従業員や関わる人が幸せになるように企業がサポートをすることによって発展をさせるのか、という部分が異なります。
「ウェルビーイング経営」についてもっと知りたい方におすすめの本5選
それでは、ウェルビーイング経営についてもっと知りたい、具体的に検討をしていきたいとお考えの方に向けて、おすすめの本を5冊紹介します。
『ウェルビーイング経営! 社員の笑顔が会社を成長に導く』
4年連続ホワイト500の認定を受けた株式会社PHONE APPLIが実践した、ウェルビーイング経営の独自メソッドが詰め込まれた1冊です。
ウェルビーイング経営がなぜ必要なのかを理解したい方はこの本から読んでみてください。
株式会社PHONE APPLI ウェルビーイング経営出版プロジェクトチーム(著)
Amazon URL→https://www.amazon.co.jp/dp/4797987596
【目次】
第1章:なぜ私たちはウェルビーイング経営を意識すべきなのか
第2章:社員を幸せにする経営の始め方
第3章:社員が幸せになるための仕掛けをつくる
第4章:ウェルビーイング経営を導入するヒント
『最強の組織は幸せな社員がつくる~ウェルビーイング経営のすすめ~』
先ほどご紹介した書籍の著者、株式会社PHONE APPLIの2冊目です。
この本では、PHONE APPLIが実践・研究して成果に繋がった、社員のウェルビーイングを構成する「対人関係・未来・仕事・環境」の4つの要素を整えるための具体的な方法がわかりやすくまとめられています。
構造化されたウェルビーイング経営を取り入れることで、社員の幸福度も高まり、組織が成長し「最強の組織」となるために必要なノウハウを知りたい方におすすめの1冊です。
PHONE APPLI出版プロジェクトチーム(著)
Amazon URL→https://www.amazon.co.jp/dp/4295409162
【目次】
はじめに
第1章_ウェルビーイング経営とは
第2章_ウェルビーイングの三角形
第3章_自分たちの幸せと向き合う
第4章_ウェルビーイングの三角形① 対人関係
第5章_ウェルビーイングの三角形② 未来
第6章_ウェルビーイングの三角形③ 仕事
第7章_ウェルビーイングの三角形④ 環境
おわりに
『ウェルビーイング』
この本は、そもそも「ウェルビーイング」とはなにか、基本的なことから知りたい方におすすめの1冊です。
企業や自治体の取り組み、ウェルビーイングの測定について体系的にまとめられているので、はじめの1冊におすすめです。
前野 隆司、前野 マドカ(著)
Amazon URL→https://www.amazon.co.jp/dp/4532114489
【目次】
第1章 ウェルビーイングとは何か
第2章 社会とウェルビーイング
第3章 ウェルビーイングの研究
第4章 経営とウェルビーイング
第5章 地域・家庭とウェルビーイング
第6章 幸福度の計測・向上事例
おわりに――ウェルビーイングの未来
さらに学びたい方のためのブックガイド
『キャリア・ウェルネス 「成功者を目指す」から「健やかに働き続ける」への転換』
この本は仕事に真剣に向き合っている経営者にこそ読んでいただきたい1冊です。
脇目も振らずにビジネスに命をかけることは時と場合によっては必要ですが、医療が発達し平均寿命が延びている今、100歳まで生き続けてしまうかもしれない人生について、今一度考えてみませんか?
仕事をすることが生きがいなのであれば、それこそ健康的に一生働き続けられるよう、ぜひこの本を読んでみてください。
村山 昇(著)
Amazon URL→https://www.amazon.co.jp/dp/482072956X
【目次】
第1章 「健やかに働く」ということ
第2章 労働観の変遷
第3章 研修の現場から~「健やかな仕事観」をつくる講義スライド&ワーク紹介
第4章 仕事・キャリア・人をとらえる新しい観点
『幸福の測定―ウェルビーイングを理解する』
ウェルビーイングを経営手法として取り組む際、効果測定に悩まれる方は多いのではないでしょうか?
何を幸せだと感じるかは人それぞれですが、共通の傾向があることが学術的に明らかになっています。
この本はウェルビーイング経営において効果測定の方法の情報を集めている方におすすめの1冊です。
鶴見 哲也、藤井 秀道、馬奈木 俊介(著)
Amazon URL→https://www.amazon.co.jp/dp/4502404012
【目次】
第1章 ウェルビーイング(幸福)とは
第2章 日本の幸福度
第3章 お金と幸福度
第4章 人とのつながりと幸福度
第5章 働き方と幸福度
第6章 住みよさと幸福度
第7章 幸福度の地域別比較
第8章 国内47都道府県における人々の選好の比較
第9章 大都市における人々の選好の比較
第10章 東京23区における人々の選好の比較
さいごに
今回はウェルビーイング、ウェルビーイング経営について解説しました。
【この記事のまとめ】
- ウェルビーイングとは、自分自身が幸福を感じられる状態がどんなものかを考えて実現させていくもの
- ウェルビーイング経営とは働く人、関わる人すべての幸福を追求する経営手法
- 健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること
最後にご紹介したおすすめの書籍の中で気になったものがあれば、ぜひ読んでみてくださいね!
そして、社内でウェルビーイングを推進していきたいとお考えの方に、「企業出版」をおすすめします。
出版することで、ウェルビーイングに力を入れている会社であるというアピールがステークホルダーや世間に対してできるだけでなく、つくった本を採用活動にも活用できます。
また、本づくりを通してプロジェクトの棚卸、壁打ち、数値測定をするきっかけができるので社内での取り組みを推進させられます。
自社の取り組みをカタチに残して発信したい企業様は、ぜひラーニングスまでご連絡ください!
投稿者プロフィール
- ラーニングス株式会社
アドバイザー/ブックライティングサービス『ひよどり』サービス運営統括責任者
大学時代は近世文学を専攻。 日本語教師の資格を持つ。
200名以上の経営者、士業の専門家へのインタビュー経験があり、Webメディアを中心に記事を執筆。
書籍の企画~出版を行うだけでなく、出版記念のウェビナー等、イベントの企画運営も行う。
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