昨今『ビジョナリーカンパニー(明確な理念を持ち、かつ柔軟に変化をし続ける企業)』が経営者の間で再度注目されるようになり、「経営理念」を意識することが増えてきました。
ヒト・カネ・モノ・情報の経営4大資源の中でも、特に人に関する問題解決は時間もかかり労力がかかります。
より強い会社を目指すためにも、理念に共感できない人に離れてもらい、理念に共感して働いてくれる仲間が増え定着することを目的として、経営理念の浸透に力を入れる企業も多いです。
今回は、
- そもそも経営理念とはどのようなものか
- 経営理念を浸透させることで得られる効果
- ヒト(=人材)に対する問題解決ができ、経営理念を末端にまで浸透させることができるツール「ビジョンブック」
についてご紹介していきます!
大学時代からこれまで自身が著者で出版した本は16冊、読んできたビジネス書・実用書は3,000冊以上。はじめて本を出版する企業や個人事業主の方を対象に、出版でビジネスを加速させるお手伝いに力を入れる。
経営理念の浸透とは
そもそも「経営理念」とは、企業の経営の方向性や価値観、目的など言語化し「企業のあり方」を表したものです。
「経営理念の浸透」ができている状態とは、社員が企業理念に共感し、日々理念に合う行動できている状態を指します。
経営理念という形で経営の軸を決定づけることにより行動指針ができるため、社員が主体的に社長の抱くビジョンに沿って動くことができるようになるのです。
経営理念を十分に浸透させることで、以下のような効果が期待できます。
- 社員のモチベーションの向上
- 社員の定着率の向上
- 優秀な人材の確保
経営理念の浸透の重要性が高まる背景にある「人材に関する悩み」
近年、経営理念の浸透の重要性が高まっている背景には、少子高齢化が進み、若い労働力の確保が難しくなってきたことがあります。
企業が抱える課題の中でも人材の強化は特に解決が難しい課題です。
デジタル化が進む中でもやはり人の力の影響は大きく、採用、育成、多様化への対応をほったらかしにすればするほど業績に結び付いてしまいます。
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売り上げ規模、利益の大きい会社ほど経営理念が浸透している!
下の図をご覧いただくとわかる通り、売り上げ規模や経営上利益が多いほど経営理念を大切にしていることがわかります。
出典:宮田矢八郎 1枚のシートで経営を動かす ダイヤモンド社 p.73を参考に作成
業績が良いから、余裕があるから経営理念の浸透にリソースを割けると思う方もいるかと思いますが、経営理念を保有していたから業績が良くなったと考えることもできます。
規模の拡大を目指さずとも、強い会社を目指すなら、なおさら経営理念の浸透は大切です。
また、赤字企業と経営理念の関係について、下記の図をご覧ください。
出典:中小企業経営のあるべき姿に関する調査 経済産業省関東経済産業局 平成22年3月
(*)この報告書で「活力ある中小企業」は、過去10年間の売上高経常利益率はおおむね6%以上と定義されています。
中小企業の赤字企業の割合は6割、または7割と言われており、順調に経営をしている活力ある中小企業は少数となっています。
「経営理念を明確化しているか」
「経営理念は実際の経営判断において、どの程度実践できているか」
について赤字企業と活力ある企業を比べてみると、活力ある企業のほうが経営理念を明確化しそれを実践することもできている、という結果となりました。
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貴社が優先的に解決したい経営課題は?
現在貴社で抱えている人に対する課題は、どのようなものがあるでしょうか?
よく聞く「企業が抱える人に対する問題」には下記のようなものがあります。
- 離職率が高い
- リモートワークで社員の意志疎通が図れていない
- 社員が言うことを聞いてくれない
- 社員教育にかける時間がない
- 採用できない
- 優秀な社員が辞めていって、冴えない社員が残る
- 今2代目社長が先代時の社員との意思疎通が困難
- 会社が目指している仕事のやり方を理解してもらえない
1つずつ解説していきます!
離職率が高い
社員の定着がしないのは、企業にとって大きな損失になります。
そもそも採用は人材に対する投資ですので、活躍する前に辞められてしまったら損失しか残らなくなります。
人員補充のための採用ではなく、今は欲しい人材を狙って採用をする時代です。
社員の定着を見据えた採用戦略を考える必要があります。
リモートワークで社員の意志疎通が図れていない
コロナ禍の影響で、リモートワークが一般的になり、作業効率が上がった分、社員同士の意志疎通の場面が少なくなりました。
孤独感が大きい中で業務をするとなると、コミュニケーションに軋轢が生まれてしまいます。
同じオフィスで相手の仕事量がわかっていたのに、それが見えないとなると、配慮もしづらくなってしまい、段々と社員は「ここの会社(上司など仕事仲間)は自分のことをわかってくれない」と感じ、離職へとつながっていきます。
社員が言うことを聞いてくれない
経営者からしたら会社で実現したいことを可能にするために社員を雇っているにも関わらず、それが上手く伝わっていないがために「社員が言うことを聞いてくれない」と感じてしまいます。
コミュニケーション不足であることも考えられますが、そもそもの「会社の目指す方向性の共有」ができていないことが原因だと考えられます。
社員教育にかける時間がない
日々の営業や業務に苛まれて、なかなか社員教育に時間をかけられない場合もあるかと思います。
目先の売り上げのほうが大事であることは重々承知していますが、長い目で見るならば社員教育に力をいれることをおすすめします。
採用できない
「優秀な人材、自社にあった人材が採用できない」というお悩みも多く寄せられています。
優秀な人が会社を離れる理由の1つとして、会社の目指す方向性の共有や、その企業に入って自分がどこまで成長できるのか、ということが分からなければ優秀な人材は貴社で働こうと思わないことが挙げられます。
優秀な人材はただお金のために働こうとは思っていません。
自分のキャリアビジョンやその会社にどれだけ自分が貢献できるかを考え、その会社の理念に自分が合うかを見ています。
この将来を予測するのが難しいVUCA時代に転職、就職を考えている優秀な人材を取るためには、ビジョンの共有が不可欠です。
優秀な社員が辞めていって、冴えない社員が残る
これは大企業でも中小企業でも、平等に起こる問題です。
優秀な社員ほど自分の立ち位置や将来についてこまめに考え、軌道修正をはかります。
少しでも
「この会社と合わない」
「もうこの会社でこれ以上の成長は見込めない」
と考えるとすぐに次の職場を考えますし、優秀な人材は引く手あまたなので早々に会社から離れてしまいます。
一方、冴えない社員のほうが自社に定着をしたがります。
市場価値が低い会社にはそれに見合った社員しか残りません。
優秀な人材を確保するためにも、自社も優秀な会社でいる必要があります。
今2代目社長が先代時の社員との意思疎通が困難
先代から受け継いだ場合、先代派の社員との折り合いに苦労する2代目社長は多いです。
特に新しいことをやろうとすると反発がおきたり、これまでのやり方を新しくしようとすると「昔のままでいい」と賛同を得られなかったりと、そもそも通常業務すらままならないことも多いです。
どれだけ対話を重ねたとしても、時間もかかるし口先だけだとなかなか理解してもらえないことも多いです。
会社が目指している仕事のやり方を理解してもらえない
経営理念が浸透していないと、社員からは
「なぜこの仕事をしなければいけないのか?」
「なぜこのやり方をしないといけないのか?」
という疑問がでてきます。
経営理念はいわばみんなで目指す目的地です。
例えば、「北海道へ行く」と目的があり、「乗り物に乗ること」と条件をつければ、それぞれが飛行機や鉄道、フェリー、車、自転車などに乗って北海道を目指すでしょう。
しかし、その目的地や手段が明確化されていない、知られていなければ、そもそもどう動けばいいか、指示を受けても「なぜ飛行機に乗る必要があるのか?」という疑問が浮かび上がります。
会社として目指す方向を示すことは、人をまとめる上でとても大事なことです。
企業のブランドイメージの確立というと、多くの場合「競合他社との差別化をして、自社のサービス、商品をより多く売るための手法」と考えられていますが、 実は採用や社内教育にも効果が高いんです! […]
外国人を採用する際、異文化や言語の違いによる社員教育の課題は避けられません。 しかし、適切な教育とコミュニケーションの手法を用いれば、効率的な教育が可能です! 今回は、外国人社員へ[…]
理想の人材に関する問題解決
ここまで企業でよくある人材に関する問題についてまとめてきましたが、どれも企業としては早急に片づけたい問題ですよね。
ちなみに、貴社にとって理想の人材像や業務環境はありますか?
たとえば、
- 社長の考えを理解し、自発的に仕事を進めてくれる人材
- 会社の考えと合わない社員が離職し、経営理念に共感した社員が長く会社のために働いてくれる
- あれこれと指図をする必要がなくなり、社長がやるべき仕事に集中できる
- 社員のモチベーションが上がり社内に活気が出る
- 社員全員が目指すべき理想像を共有でき、効率的に仕事をこなしてくれる
- 何度も同じことを言わなくて済み、言う側(経営者)も言われる側(社員)もストレスがない環境
こんなの理想論だと思われるかもしれませんが、実はこれは実現可能なことなんです!
ビジョンブックを作りましょう!
先ほどあげた理想的な人材や業務環境を整備するためには、なによりも「経営理念の浸透」が大事になってきます。
この会社はどういう会社なのか、目指す方向や、それぞれの判断基準などを明確化し、末端にまで浸透させることで社員全員が同じ方向を向いて進んでいくことができます。
しかし、そのためにはただ朝礼や会議で口で伝えるだけでは不十分です。
なぜなら、人が発する言葉は、言う相手、聞く人によって受け取り方が変わってしまうため、一定の精度を保つことが難しいからです。
加えて、思いを伝えるとなるとついつい熱く語ってしまい、聞き手との温度差が出てしまう場合もあります。
そのため、誰が聞いてもある程度同じ反応をとれるものを用意する必要があり、そのためのツールとして「ビジョンブック」を作成、導入している企業がいま増えているんです!
ビジョンブックとは?
「ビジョンブック」とは、その名の通りビジョンが書いてある本のことです。
ただ経営理念を書くだけでなく、そこには人材に対する課題をクリアにするための工夫が沢山しかけられています。
また、ミッション、ビジョン、バリューを書くだけでは生徒手帳のようになってしまい、それはビジョンブックとは言えません。
大事なポイントは、
- なぜこれを設定したか、どのような思いが込められているのかを伝えること
- 経営理念について社員間、対社長と話し合えること
です。
ビジョンブックの作り方
当WEBメディアを運営する出版社ラーニングスでは、ビジョンブックの制作を多数手がけています。
ここからはビジョンブック作成の流れについて説明していきます!
- 社長へのヒアリング
- 企画立案&キックオフミーティング
- 取材
- 修正・編集
- 表紙・紙面デザイン
それぞれの工程について、詳しく解説します。
① 社長へのヒアリング
会社の行く末を決めるのは社長の役目です。
まずは社長とラーニングスで打ち合わせを行います。
打ち合わせ時に重点的にお伺いするのは下記3点です。
- 現状の人材に関する課題
- 今後想定される人材に関する課題
- 理想の会社のイメージ
他にも、
- ビジョンブックに盛り込みたい内容
- ビジョンブックを社内でどのように活用したいか
- いつまでにビジョンブックがほしいか
といったこともお伺いします。
普段社員の前では言えない愚痴や不満、不安など包み隠さずになんでも仰ってください!
社長に心のうちを隠さずに話していただくことが課題解決への第一歩となります。
② 企画立案&キックオフミーティング
社長へ行ったヒアリングをもとに、どのようなビジョンブックを作るといいか企画案をお出しします。
この企画案をもとに、さらに内容をブラッシュアップしていきます。
良いビジョンブックを作るためにも社長のヒト・モノ・カネ・情報に対する考え方、価値観を深掘りしていきます。
特に、理想的な社員像や3年後、5年後の新規事業やビジョンが具体的に明確化されていると、より良いビジョンブックをつくることができます。
③ 取材
ラーニングスでは忙しい経営者や担当者の負担軽減のため、またクオリティを重視していることから、プロのブックライターを起用しています。
そのため、社長は必要事項や想いを話すだけで原稿ができあがります。
取材といっても、事前に目次や何を話すかのコンテンツの洗い出しは済んでいる状態で行うので、効率的な本の作成が可能です
企画内容によっては創業メンバーや役員、管理職、社員への取材も実施します。
会社ごとのカラーが出るのがビジョンブックですので、臨機応変に対応していきます。
④ 修正・編集
ラーニングスではクオリティの追求も重視していることから、修正回数に制限を設けていません。
書きあがった原稿を読んでみて
「ここはもっと深く書いて貰いたい」
「このコンテンツはやっぱりカットしたい」
といった要望が出てくることも多々あります。
経営課題解決につなげるための大切なビジョンブックですので、妥協せずに作っていきましょう!
⑤ 表紙・紙面デザイン
ただ文章が書かれているだけだと、どうしても生徒手帳のようになってしまい、社員に配ったとしても能動的に読んでもらうことは難しいです。
会社のカラーに合わせたりイメージキャラクターの使用、社員の写真を掲載したりとデザイン面でも様々な工夫が可能です。
適宜コラムを挟んだり、会社の状況や従業員へのアンケート結果のグラフなどを入れたりして、その時の社内の様子を具体的に伝えることもできます!
ブランドイメージを前面に押し出し、愛社精神の熟成に繋げていきましょう!
ラーニングスのビジョンブック
ラーニングスでも実際にビジョンブックを作成し、活用しています。
社長主導で作ることが決まりましたが、編集時は社員も入り、ラーニングスの仲間たちみんなで作った1冊です!
特に工夫したのは、「今後入社してくる社員に自分達が伝えるときに等身大に話せるか」という点です。
会社が成長するにしたがって経営理念も変化していくものですが、その変化にも対応し楽しむことができるよう、たとえ話や事例、説明部分のわかりやすさを追求しました。
これから組織が大きくなるとなかなか末端にまで経営理念を浸透させることが難しいことは分かっているので、それを防ぐために今のうちから意識的に経営理念を伝える準備をしています。
また、ラーニングスでは社長(上司)と社員が1対1で行う面談である1on1を実施しているので、その際にも活用できるように書き込むスペースを配置しました。
メモ魔が多いのでビジョンブック全体の余白を少し多めに設置したりと、社員のことを考えた本になっています。
【ラーニングスビジョンブックの目次】
- はじめに
- ミッションについて
- ビジョンについて
- バリュー&プリンシプル(行動指針)について
- 創業前後ヒストリー
- 未来へ
- 1on1ミーティングノート
ビジョンブックの活用法
ビジョンブックをただ作っても、実際に社内で利用しなければ経営理念の浸透はしていきません。
では、実際にどのように活用をしていくかご紹介します!
1on1で使う
ラーニングスでも実際に使っている通り、1on1でのビジョンブックの使用は効果的です。
定期的に意識してビジョンブックを開く機会をつくることで目に留まる回数を増やすことができます。
定期的に全体で時間を作って読み合わせをする
ラーニングスでは週に1回の営業会議の時間でビジョンブックの読み合わせを行っています。
書かれていることプラスαで代表からなぜこれを決めたか、今後どうしていきたいか、といったことを聞き、ディスカッションを重ねています。
ラーニングスは社員数4人の会社ですが、これから増える仲間たちのことを考え、自分達が基盤を作れるように邁進しています。
少しずつ内容変更をしていく
経営理念は会社が大きくなるにつれて変わっていくものです。
そのためビジョンブックはずっと同じ内容で使うのではなく、時代に合わせて、規模に合わせて変わっていく必要があります。
それに気づくためにも日常的に利用する必要があります。
変わることを恐れずに、いつでも柔軟に軌道修正していきましょう!
ビジョンブックは採用力アップにも活用可能
ビジョンブックは優秀な社員、理念に共感してくれる社員の定着だけでなく、そういった人材を獲得するためにも使えます!
採用にも使うなら、内容には「社内の働き方改革に向けた施策、制度」「社員主導で実行したプロジェクトの経緯」などを発信するのが効果的です。
会社が社員に対して「会社に貢献し利益をあげること」を望むのと同じように、社員は会社に対して「実力を正しく評価し大事に扱ってくれるのか」ということを望みます。
もちろん会社によって望む人物像が違ってくると思いますが、理想の人材が会社に対して何を望むのかをしっかりと把握し、それに対する情報を提示することが何よりも重要です。
まとめ
- 経営理念とは、企業の経営の方向性や価値観、目的など「企業のあり方」を表したもの
- 経営理念の浸透は、企業の人材に関する課題を解決するために不可欠
- 経営理念を浸透させるには、企業のビジョンを記した本「ビジョンブック」を活用するのが効果的
なかなか最優先事項にはならない人材に関する問題ですが、今の日本の労働力をみると、どれだけ優秀な人材を自社に定着させることができるかが会社の命運を分けると言っても過言ではありません。
生産性を向上させるためにも、現場の判断が会社の理念と合致していることは何よりも重要なことです。
これを機にぜひ貴社の人材に関する取り組みの1つに「ビジョンブック」の導入をご検討ください!
ラーニングスではサービスの説明、企画書の作成を随時受け付けております。
詳しい資料もご用意していますので、少しでも気になった方は、ぜひこちらからご連絡ください!
ビジョンブックプロジェクト
弊社ラーニングスでご提供している「ビジョンブックプロジェクト」についてのサービス資料をご用意しました。
- 今、“ヒト”の課題を解決するビジョンブックが人気
- 経営理念の浸透、業績アップに効果的なビジョンブックの作り方
- サービス概要と費用
投稿者プロフィール
- ラーニングス株式会社
アドバイザー/ブックライティングサービス『ひよどり』サービス運営統括責任者
大学時代は近世文学を専攻。 日本語教師の資格を持つ。
200名以上の経営者、士業の専門家へのインタビュー経験があり、Webメディアを中心に記事を執筆。
書籍の企画~出版を行うだけでなく、出版記念のウェビナー等、イベントの企画運営も行う。
プロフィール詳細はこちら
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