ファンづくりにつながるブランディングの肝 “ブランドストーリー戦略” 作り方や成功事例も紹介

 

ドラマや映画を見て感動した経験は、誰にでも一度はあるのではないでしょうか。

その時の感動やストーリーはずっと記憶に残っているものです。また、他人の感動体験などに共感して、同じように胸が熱くなった経験もあるかもしれません。

そんな経験をすると「ねえ!聞いて聞いて!」と人に話したくなるものですよね。

これらのストーリー性をマーケティングやブランディングに活かして、商品や企業に共感をもたらし価値を高めることを「ストーリーブランディング(戦略)」と言います。

ここでは、ストーリーブランディングがどのようなものなのか、どのようにブランディングをすれば良いのか、事例を用いて解説します。

 

 

出版 資料

 

「ブランディング」とは

「ブランド」とは、企業に対する信頼や評価のことを指します。

そして「ブランディング」は商品や企業が、顧客やクライアント、従業員や投資家などから「選ばれる仕組み」を作ることです。

企業が商品やサービスを提供する場合、消費者が商品を購入しようと思った時に、その企業の商品について思い出し、検討してくれるようなイメージを作り上げることがブランディングの目標になります。

大手企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業、また個人がビジネスを行う場合でも、ブランディングは非常に重要な要素となります。

 

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消費者が求める4種類の「ブランド価値」

「ブランド価値」とは、消費者に対して提供されるさまざまな利益や満足度の形態を指します。

以下にブランド価値の4つの要素について解説します。

 

  • 機能的価値
  • 情緒的価値
  • 社会的価値
  • 自己表現的価値

 

機能的価値

「機能的価値」は、製品やサービスが提供する具体的な機能やパフォーマンスに焦点を当てた価値です。

消費者は、製品やサービスが彼らのニーズや目的を果たす能力や効果を評価します。

【機能的価値の例】

  • 耐久性
  • 品質
  • 機能の使いやすさ

 

機能的価値は、消費者が製品やサービスを選ぶ際に重要な要素となります。

情緒的価値

「情緒的価値」は、消費者の感情や心理的な状態に対する価値です。

ブランドが消費者の感情を刺激し、喜びや満足感を提供することに焦点を当てます。

【機能的価値の例】

  • ブランドイメージ
  • デザイン
  • 感情的な体験

 

情緒的価値は、消費者にとってのエンターテイメントや感情的なつながりを提供することで、ブランドとの関係を強化します。

 

社会的価値

「社会的価値」は、ブランドがユーザーに対して社会的な所属感や共感を提供することによって生じる価値を指します。

若者に人気のドリンクを片手に街を歩いたり、流行のファッションアイテムを身に着けることで、自分をおしゃれな団体の一員と感じることがあります。

社会的価値は、ユーザーが自己同一性や共感を得ることで、ブランドとの関係を強化し、忠誠心を作り出す一因となります。

 

自己表現的価値

「自己表現的価値」は、消費者が自己アイデンティティや価値観を表現するためにブランドを使用することによって得られる価値です。

消費者は、自分自身や所属するグループ、特定のイメージやスタイルを示すためにブランドを選択します。

【自己表現的価値の例】

  • 個性的なデザインの服を身にまとう
  • 高級車を所有する

 

自己表現的価値は、個人のアイデンティティや社会的な関係構築に関連しています。

 

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ファンを増やす「ブランドストーリー戦略」とは

ブランディングにはさまざまな種類や手法があります。

「ブランドストーリー戦略」とは、企業や商品の魅力やアイデンティティを伝えるために、物語やストーリーテリングの手法を活用する戦略のことです。

この戦略では、単に商品やサービスの機能や特徴を伝えるだけでなく、その背後にあるストーリーや理念、価値観を伝えることに重点を置きます。
これにより、消費者は単なる商品や企業ではなく、物語や感情に共感できるブランドとのつながりを感じることができます。

ブランドストーリー戦略の目的は、ファンや顧客を増やすことです。
魅力的なストーリーを通じて、消費者はブランドとの共感や感情的な結びつきを深め、そのブランドに愛着を持つようになります。
するとファンや顧客は積極的にブランドを支持し、口コミや共有を通じて他の人にもその魅力を広めてくれます。

この戦略により、顧客やユーザーの感情に訴えかけ心を掴みやすくなります

 

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ブランドストーリーが必要な理由

昨今、ブランドストーリーが重要視されている理由としては、おもに以下の3つの要素が挙げられます。

  • 質が良いだけでは売れない時代に選ばれるため
  • 「ストーリー」を知ることでファンになってもらうため
  • SNSで効果的にブランド価値を伝えるため

 

質が良いだけでは売れない時代に選ばれるため

かつては、物がなく多少質が悪くても目的を果たす物が受け入れられてきた時代でしたが、物が溢れ流通が多岐に渡る現代は、より独自性が求められる時代です。

質の良い物の選択肢が増えると、「この商品はどのようにして生まれたのだろう」、「この商品をつくった人はどんな想いで作ったのだろう」と感情で物を選ぶ人が増えました。

ストーリーを伝えずに商品のみをそのまま出していたら、競合相手との違いはスペックやコストパフォーマンスではかられることになります。

すると価格競争に巻き込まれ、他のたくさんの商品に埋もれてしまう結果になってしまうでしょう。

 

「ストーリー」を知ることでファンになってもらうため

前述したように、「感情」で物を選ぶ人が増えた現代において他の商品との差別化をはかるためには、物や企業のストーリーを積極的に発信することが大事です。

 

2011年に日本ブランド戦略研究所がおこなった創業時のストーリーが企業イメージに与える影響の調査によると、企業の創業当時のエピソードを知ことで消費者に以下のような企業イメージの変化があったと発表されています。

 

  • 「好感が増した」(30%)
  • 「信頼感が増した」(20%)
  • 「この企業の夢や願いを感じた」(35%)
  • 「親しみが増した」(47%)
  • 「技術力を感じた」(35%)
  • 「この企業の理念を感じた」(29%)

 

このように、ストーリーを知り共感することで、その商品やそれを生み出す企業に親近感を覚えます。

その結果、商品のみならず、その商品を出している企業のファンになることもあるのです。

ファンになった人が商品のストーリーを添えて自分の体験を他の人に話すようになれば、ストーリー戦略は成功と言えるでしょう。

 

SNSで効果的にブランド価値を伝えるため

昨今、Twitter・Instagram・Facebook・YouTubeなど、個人や企業が気軽に情報発信できるSNSは多くの人が利用するツールになりました。

それらのSNSをブランディングツールとして効果的に活用している企業の多くは、自社のストーリーを伝えることでフォロワーから共感を得ることに成功しており、ファンやリピーターを獲得しています。

SNSの活用方法がまとめられている書籍を読んでみると「自分をマンガの主人公だと思って、物語を発信していこう!」というような記述も多く見かけます。

SNSを使って自社のブランディングを成功させたいならば、SNS上にいる顧客の心に刺さるようなストーリーを発信していくことが重要です。

 

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ブランドストーリーの作り方【4step】

ブランドストーリーは以下の4つの工程で作っていきましょう。

  1. ターゲット(ペルソナ)の設定
  2. 自社の強みや提供できる価値を洗い出す
  3. 具体的なストーリーの作成
  4. ストーリーの根拠となる実績やデータを提示

 

① ターゲット(ペルソナ)の設定

最初のステップでは、自社の商品やサービスを誰に向けて提供したいのか具体的なターゲット(ペルソナ)を設定します。

ターゲットの特徴や興味関心、年齢層などを考え、イメージを膨らませましょう。

家族構成やライフスタイル、趣味趣向などまで具体的なイメージを持つことが重要です。

 

② 自社の強みや提供できる価値を洗い出す

次に、自社の強みや提供できる価値を明確にしましょう。

自社の商品やサービスが他社とどのように異なるのか、独自の特徴を見つけてください。

強みを洗い出す際は、マーケティングのワークフレームである

  • SWOT分析
  • PEST分析
  • STP分析
  • 4P分析
  • 3C分析

といった手法を活用することで、効率的に進めることができます。

それによって顧客が得られる利益や満足度が高まることを考えます。

例えば、優れた品質や低価格、環境に配慮した製品など、自社の強みを具体的に洗い出すことが大切です。

 

マーケティングのワークフレームについては、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください↓

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③ 具体的なストーリーの作成

次に、具体的なストーリーを作成します。

これは自社のブランドや製品の背景、価値観、目指す理念などを伝えるための物語です。
特にブランドが歩んできた経緯やこれまでの成長を伝えられるストーリーを作りましょう。

ストーリーは、顧客に共感や感情的なつながりを持ってもらうためのツールです。

実際のエピソードや体験、お客様の声を活用することで、ストーリーをより魅力的に表現できます。

 

➃ ストーリーの根拠となる実績やデータを提示

最後に、ストーリーの根拠となる実績やデータを提示しましょう。

これにより、顧客に自社の信頼性や実績を証明することができます。

例えば、過去の成功事例やお客様からの評価、製品の性能や効果を示すデータなどを活用します。

他社と比べても信憑性が高いストーリーを発信することでよって、顧客の信頼を獲得することができ、選ばれる企業・製品へと成長させることができます。

「Apple」、「ルイ・ヴィトン」、「バルミューダ」のストーリー戦略

以下では、実際に成功した世界のストーリー戦略の事例を紹介していきます。

 「Apple」の事例

Appleとその創始者であるスティーブ・ジョブズは、ストーリー戦略を語る上で外すことが出来ません。

初めてiPhoneが発売された2007年のスティーブ・ジョブズによるスピーチは、誰の記憶にも残る伝説的な商品紹介スピーチと言われています。

ステージを右へ左へと歩き回りながら、当時ボタン式の携帯電話だったのに対しタッチパネル仕様という今までの常識を覆す新しい携帯電話を、見事なストーリーを添えて世に紹介したのです。

そしてスティーブ・ジョブズが前面に出る事により彼の人生もクローズアップされることが増え、その成功と挫折のストーリーが共感を呼びAppleの人気に拍車をかけました。

現在ではApple社の製品はその機能はもとより、Apple社製品を持つことがステータスとなり世界中で愛されるブランドになっています。

 

「ルイ・ヴィトン」の事例

今や知らない人はいないと言っても過言ではないブランドの代名詞、ルイ・ヴィトン。

そんなルイ・ヴィトンを物語るシンボリックストーリーをご存知でしょうか。

 

1912年世界最高級の豪華客船「タイタニック」が、世界のセレブリティを乗せたまま氷河に激突し沈没しました。

このタイタニック号の悲劇は映画化され世界的大ヒットとなりました。

このタイタニック号が沈みかけていた時、たまたま乗客の持ち物だったルイ・ヴィトンのトランクが乗客の命を助けたという物語です。

ただし、真偽のほどは不明です。

 

その沈まないルイ・ヴィトンのトランクに捕まって助かったという物語から様々なことがわかります。

豪華客船の乗客である富裕層が持っていたトランクであること、また引き上げられたトランクには中に水が入っておらず、高い技術と品質を誇る商品であること。

それらのことが長く語り継がれ、「富裕層に高く信頼された旅の道具」というブランディングが見事成功しています。

 

「 バルミューダ」の事例

バルミューダは、高価格帯のトースターや、まるで高原にいるかのような気持ちの良い風を生み出す扇風機をヒットさせた家電メーカーです。

バルミューダは高い技術力や製品力を売りにしているのではなく、その商品を手に取った消費者が心地良さを感じるようなストーリー戦略の元に製品開発をしています。

消費者の感じる心地良さを考えて作られた製品は、製品の品質を超えた感動を与えます。

そしてその感動は人から人へ語り継がれてゆくのです。

 

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ブランドストーリー戦略を立てる際のポイント

それでは実際に自社内でストーリー戦略を立てる場合、どのような道筋であることが望ましいのでしょうか。

以下の通り、3つの段階に分けてご紹介します。

 

①「思わず人に話したくなる物語」を見つける

例えば雑学や豆知識など、知り得た情報を人に話したくなることは誰にでもあるものです。そこに何らかのストーリーが加わることで、更に誰かに伝えたくなります。

あなたにもきっと誰かに伝えたくなるようなストーリーがあるはずです。まずは紙に書き出して整理してみることをおすすめします。

②耳にした人に何らかの行動を動機づける

良い話も悪い話も、人から人へ伝わる話の影響力は非常に大きいと言えます。

ブランド戦略では、人から人へつながるダイナミズムを確保することが重要視されています。

そのためには、シンボリック・ストーリー(思わず人に話したくなる物語)をブランド戦略の中心に置く必要があります。

③共感を呼び、人づてに広がる仕組みをつくる

口コミや物語には感動し共感するエピソードが必要不可欠です。

「このような背景で作られたこの商品で、私はこのように救われました」というように、商品開発のストーリーが加わることで相手への印象も大きく変わります。

口コミは消費者のビフォー・アフターをストーリーで伝える効果があるため、重要な戦略です。

 

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ブランドストーリー戦略を立てる際の注意点

ブランドストーリー戦略を立てる際には、事実にはないウソのエピソードを含めることは避けるべきです。

消費者は真実性や誠実さを重視し、信頼できるブランドを選びたいと考えます。

ウソのエピソードは、ブランドの信頼性を揺るがすことになり、消費者の信頼を失う結果となる可能性があります。

また、ウソのエピソードを含めると一時的に注目を浴びるかもしれませんが、その後の信頼の維持やブランドの成長にはマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

持続的なブランド成功を追求するためには、真実性と一貫性を重視しましょう。
実際の経験に基づいたエピソードを活用することで、消費者との共感を深め、ブランドとの絆を築くことができます。

ブランドストーリーをつくるためには多少誇張することが必要になる場合もありますが、夢やビジョンを語る際に誇張する場合は、ストーリーの作り手が抱く熱量とストーリーの内容が一致していればウソにはなりませんので、安心してください。

まとめ

様々な方法のあるブランディングの中でもこのストーリー戦略は、商品だけではなく会社やビジネスのシーンで活用することができます。

物語ひとつでビジネスは加速するという言葉もあるように、しっかりと方向性を決め計画的に戦略を立てることがおすすめです。

「ストーリー」が持っている力は会社の経営、採用、従業員や顧客の満足度までに及びます。

経営の全ての過程でこのストーリーが明確で信憑性があるかどうかによって結果が違ってきます。

ぜひ、自分のオリジナルストーリーでブランディングをしてみてください。

 

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投稿者プロフィール

マーケティング出版プラス編集部
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