インターネットが広く普及した今のご時世、ブランディングやマーケティングに紙媒体を使わなくなったという企業も少なくないでしょう。
しかし、真偽様々な情報が飛び交うネットにおいて、企業の価値や信頼性を証明するのは困難です。
そのため、近年は情報源として「本」の有用性が見直されてきており、さらに経営課題の解決手段として「企業出版」が定着するようになりました。
そこで本記事では経営者が企業出版を利用するメリット、および依頼する出版社の選び方を解説していきます。
企業出版とは?
企業出版とは、経営者が出版社に対して本の制作・流通を依頼し、それらの費用を経営者側で負担するスタイルです。
出版社が提供するサービスとしては、企業からのヒアリングや課題解決のための企画立案、および出版後の流通・販促などが挙げられます。
また、中には原稿の作成を丸ごと代行してくれる出版社もあるため、本の制作に時間をかけられない、あるいは全く自信がないという方でも気軽に依頼できます。
ただし、大半の出版社で数百万円クラスの依頼費用がかかる関係上、「客単価の低いビジネスでは元を取るのも難しい」という点には要注意です。
出版社によって得意なジャンルや企画方針は異なるので、出版社選びはくれぐれも慎重に行ってください。
経営者が行う企業出版と商業出版の違いは?
商業出版とは本の制作・流通に関する費用を全て出版社側が負担するスタイルです。
企業側の出費は一切必要ありません。
それでいて原稿アドバイスから出版後のマーケティングまで一通りのサポートを受けられるため、金銭的負担の少なさを重視する場合はそれなりにおすすめです。
とはいえ出版社が金を出す以上は本自体の売り上げが最優先となるため、本の中身が経営者の伝えたい内容とかけ離れたものになってしまうケースも少なくありません。
その点、企業出版では本の売り上げよりも経営課題の解決が優先されるため、商品・サービスに関する情報やそれらの提供にかける信念などを漏れなく記載できます。
また、各種サポートも商業出版に負けないほど手厚く、企業から本を出す場合は間違いなく企業出版がおすすめです。
経営者が企業出版するメリット
経営者が企業出版を利用すると、同業他社との差別化によって自社だけの強みをターゲット層に広く認知してもらえます。
企業の認知度が上がれば顧客数や売り上げが増加していくほか、採用面でも自社への関心を集めることが可能です。
また、企業出版では周年史や広報誌の制作に対応していることが多く、社内ブランディングにも大いに活用できます。
売上が上がる
企業出版される書籍には商品の基本仕様だけでなく、以下のような情報を網羅的に記載できます。
- 立案に至った社会的背景(商品の必要性をアピール)
- 開発者の思いや制作エピソード(商品に対する読者の興味を促進)
- 実生活におけるメリットや活用法(読者にとってのゴールを明確化)
ウェブ媒体においてサイト内の全ページをチェックしてくれるユーザーは案外少なく、上記全ての内容をターゲット層に広く周知するのは困難です。
それに対して「本」は一冊読み切ることを前提とした媒体であるため、最大限の情報量をもって読者に購買行動を促すことができます。
集客につながる
企業出版は商品のPRだけでなく、保険や信託といった契約型サービスの顧客を増やすうえでも役立ちます。
インターネット上には詐欺まがいの商材サイトも数多く、ウェブ媒体オンリーでターゲット層から信頼を得るのは困難です。
対して書籍の掲載内容は綿密に裏を取ったうえで決められるため、信頼性の高さがウェブ媒体とは比較になりません。
また、出版社自体のブランド力も集客を後押ししてくれるので、自社のブランドイメージに自信のない方もぜひ気軽に利用してみてください。
企業のブランドイメージの確立というと、多くの場合「競合他社との差別化をして、自社のサービス、商品をより多く売るための手法」と考えられていますが、 実は採用や社内教育にも効果が高いんです! […]
認知度の向上
企業出版された本は全国の書店やネットショップに流通し、さらに各所で精力的なマーケティングが行われます。
そのため、本に対する注目を集めることは容易であり、同時にその本を通じて自社の知名度を着実に上げていくことが可能です。
企業のビジョンや経営ノウハウを本の内容に盛り込めば、商品・サービスのみならず経営者自身に関心を集めることもできます。
解決を急ぐような経営課題がなかったとしても、長期的な成長戦略の一環として企業出版はたいへん役立つことでしょう。
採用につながる
企業出版は商品・サービスの顧客だけでなく、求職者からの注目を集めるうえでも効果的です。
本を通じて企業の理念や方針をうまくアピールできれば、単に求人を掲載するよりも格段に優秀な人材を確保しやすくなります。
また、企業出版の多くは社史や広報誌などの制作にも対応しているため、社員間の結束や帰属意識を強化し、離職率の低下につなげたい場合もおすすめです。
仕事に対する社員一人ひとりの姿勢が改善されれば、経営課題を内側から解決することも容易になるでしょう。
競合との差別化ができる
広報活動をウェブ媒体のみで行う一番のデメリットは、競合他社との差別化が難しくなることです。
インターネットでは情報をこの上なく手軽に入手できますが、そのぶん各情報に対するユーザーの探究心も乏しいため、「独自性」というところまでは中々注目してもらえません。
その点、企業出版の本なら自社だけの強みを余すことなく伝えられます。
ライバルの多い商品・サービスを取り扱っている企業であれば、シェアの拡大を目指すうえで企業出版を利用しない手はないでしょう。
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また、経営者が本を出版することは経営者自身の「セルフブランディング」にもつながります。
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自社の強みを再構築できる
企業出版を利用する際、まずは企画段階で自社および経営者自身の強みを書き出していくことになりますが、この作業は経営方針を見直すうえで非常に効果的です。
企業の方向性や成長分野を明確にできれば、何をどう売り出すべきなのかも自ずと見えてくるでしょう。
本や商品の売れ行きが思うような結果にならなかったとしても、本制作の過程で再構築したアイデンティティは必ず企業を成長に導きます。
事業の停滞を感じている経営者の方は、ぜひ現状を打破する手段として企業出版の利用を検討してみてください。
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経営者が企業出版する際の注意点
企業出版用の本を経営者自ら制作する場合、執筆時間を確保することが難しく、それに伴い文章の質も低くなりがちです。
しかし企業出版で利益を得るにはそれなりの部数を売りさばく必要があるため、「とりあえず書き上げればいい」というわけにもいきません。
出版社の中には原稿作成を丸ごと代行してくれるところも存在するので、どうしても自力での執筆が難しい方は代行に対応した出版社を優先的に検討してみてください。
執筆時間の確保が難しい
経営者とは通常の社内業務に加え、各種会議への出席や取引先との交流など、膨大な数の仕事を日々こなしている人たちです。
加えて勤務時間も休日も一定ではないため、執筆に充てる時間をあらかじめ確保しておくことは困難を極めます。
結局のところ経営者が本を一冊書くには、可能な限り作業効率を高めていくしかありません。
わずかな時間で着実に書き進められるよう、日頃から体調や作業環境は可能な限り整えておきましょう。
文章の質が低くなる
企業出版の本を経営者自ら執筆すると、文章の質はどうしても低くなります。
出版を急ぐあまり表現が乱雑になったり、そもそも基本的な文章作法を理解していなかったりと原因は様々ですが、いずれにしてもプロの作家が書いた本と売り上げを競えるレベルにはなり得ません。
しかしこれはあくまでも、経営者が独力で本を制作した場合のお話です。
企業出版では一流の編集者が掲載内容や文章についてつねに適切なアドバイスをしてくれるので、それを素直に聞いていれば誰でもプロクオリティの本を書き上げることができます。
販売部数のハードルが高い
企業出版には数百万円クラスの依頼費用がかかるため、ベストセラーにでもならない限り本の売り上げ単体で元を取ることは叶いません。
よって企業出版で利益を出すには、本を通じて企業の顧客を増やすことが必須になります。
とはいえ企業出版の本を購読してくれるのはターゲット層のごく一部であり、そこから自社の顧客となってくれる人は「ごく一部」の中のさらにごく一部です。
すなわち顧客を数人増やすだけでもかなりの販売部数が必要となるため、客単価の低いビジネスにおいてはそれほど利益を見込めません。
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経営者が企業出版する際の出版社選び
出版社にはそれぞれ得意なジャンルがあり、企業出版を依頼する場合はその企業が手掛ける分野に強い出版社がおすすめです。
専門的な編集者やライターがいるか、書籍制作の過程で経営についてアドバイスをくれるかなど、様々な角度から各出版社を見比べていきましょう。
なお実際に出版社を選ぶ際は、可能な限り多くの会社に見積もり請求をしておくことで、どの出版社が自社に最も合うかを検討しやすくなります。
専門的な編集者・ライターがいる
原稿の作成を出版社に代行してもらう場合は、自社のビジネスについて専門的な理解を持つライターの存在が必須です。
もちろん原稿に最終的なゴーサインを出すのは企業側であるため、本の内容が経営者の意図とかけ離れたまま出版されてしまうことはありません。
それでも専門知識に乏しいライターでは必要な情報を網羅することが難しく、結果として原稿のチェックや修正に無駄な時間を費やしてしまいます。
また、原稿を経営者自ら執筆する場合も、専門知識に強い編集者に助力してもらうことで大幅なクオリティアップを望めます。
編集者やライターに関する情報は、見積もりの段階で十分に確認しておくよう心がけてください。
経営戦略を提案できる出版社
ターゲット層の情報に対するニーズは業種ごとに大きく異なっており、最適の戦略を立てなければ自社の本を広く普及させることはできません。
どんなテーマが読まれやすいのか、そもそも情報源として本当に書籍が適しているのかなど、考えることは山積みです。
これに経営者一人で取り組んでいると企画だけで膨大な時間がかかってしまうため、企業出版においては経営戦略に強い出版社がおすすめです。
とはいっても、企業出版ではもともと本の売り上げよりも依頼主の利益が優先されるため、企画段階でまともなサポートを受けられないケースはほぼありません。
また、出版社によってはSNSや動画サイトを絡めたクロスメディア展開に対応しているところもあるので、ターゲットの属性が幅広い場合はぜひ活用してみてください。
採用においても加味して提案してくれる
商品・サービスの顧客を増やすことはもちろん重要ですが、企業出版の最たる意義はあくまでも「自社のブランド力を高める」ところにあります。
そして効果的なブランディングを行うには消費者目線のみならず、人事採用の観点からも経営戦略を立てていくことが大切です。
自社の手掛ける分野に加え、経営そのものにも詳しい出版社を選ぶことが、企業出版を成功させる一番の近道といえるでしょう。
なお各出版社の得意とするジャンルは、定期刊行物をチェックすれば一目で分かります。
「プレジデント」や「東洋経済」といった大手ビジネス誌の出版社も企業出版に対応しているので、経営・経済に強い出版社を探すことはそれほど難しくありません。
「自費出版」とは著者側で費用を負担し、誰でも本を出版できる方法です。 いわば本の出版について全くの素人でも出版できるということです。 自費出版の際にまず重要になってくることは、出版の知識がなくてもトラブルに巻き込まれない[…]
まとめ
経営者が書籍を通じて顧客を増やすには、自社の手掛けるビジネスに合った最適の出版社から企業出版を行う必要があります。
また、企業を長期的に成長させるには、単なる商品・サービスの宣伝だけでなく、企業自体のブランドイメージ向上を手助けしてくれる出版社を選ぶことが大切です。
企業出版を利益につなげるのは決して簡単なことではありませんが、自社の強みや経営戦略を見直せるだけでも利用する価値は十分にあります。
本記事を通して企業出版に興味を持たれた方は、まず複数の出版社に見積もりを請求するところから始めてみてください。
投稿者プロフィール
- 学生や子育て中のママなど、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属。
出版をもっと身近に感じてもらうために、自分の家族や友達にも読んでもらえるような、分かりやすく丁寧な記事づくりを心掛けています。
これからも有益な記事を日々発信できるよう、尽力していきます!
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