企業出版での利益はどれくらい?出版した場合の本の流通先は?

新たな商品やサービスを続々と発表しているにも関わらず、思うように顧客が増えないという企業は少なくありません。

こうした企業の多くは自社の特色や他社との差別化点を世間に浸透させる活動、いわゆる「企業ブランディング」を軽視している傾向にあります。

とはいえ日々の業務に忙殺される中、長期的なイメージ戦略をゼロから計画・実行している余裕がない企業も多いことでしょう。

そんな場合におすすめしたいのが、本を利用したブランディング手法「企業出版」です。

本記事では企業出版の仕組みや出版までの流れ、およびどういった業界に企業出版が適しているのかを解説します。

自社の認知度向上を目指す経営者の方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。

 

 

 

 

企業出版の仕組みとは?

まずは企業出版の仕組みや費用、およびどういった目的で企業出版が利用されるのかを紹介します。

似ている名前でも「自費出版」や「商業出版」とは全くの別物なので、くれぐれも混同しないよう注意してください。

 

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企業出版とは?

企業出版とは、本を通じて企業のイメージを世間に周知するブランディング手法です。

業務内容や自社製品のアピールに加え、創業理念や開発秘話など読者の感情に訴えかけるエピソードを豊富に盛り込むことにより、企業自体のファンを増やしていきます。

内容の信頼性や集客効果の持続力において、本はほかの情報媒体に大きく勝るため、インターネットが発達した今なお企業出版を利用する会社は少なくありません。

セミナーで教本として用いたり、営業時に取引先の担当者へ渡したりと、その使い道は無限大です。

なお出版費用は企業側の負担となりますが、そのぶん一般的な商業出版と異なり、本の内容は基本的に企業側が自由に決められます。

仕組み

企業出版を出版社に依頼してから、実際に本が世に出るまでの流れは大まかに以下の通りです。

  1. 経営課題や顧客のターゲット層を明確化しつつ、本の企画を練り上げていく。他媒体の併用やリアルイベントの計画など、販売戦略もここで策定。
  2. 取材などで必要な情報を集めつつ、実際に原稿を書き進める。当初の企画から内容がズレてしまわないよう、修正作業はこまめに行う。
  3. 最終稿を納品したら、出版に向けて事前に計画した販売戦略を実行。

トータルの所要時間は半年~1年程度が一般的ですが、初めての書籍制作であればそれ以上かかることも珍しくありません。

極力すぐに結果が欲しいという場合は、執筆代行に対応した出版社を優先的に検討してみてください。

 

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目的

ウェブサイト等の無料媒体に本が勝る点は、なんといっても「情報に対するユーザーの興味が初めから高い」ことです。

そのため自社の商品・サービスに対してリピーターをつけやすくなるほか、採用活動においても熱心な求職者をピンポイントに集めることができます。

また出版実績はそれ自体が企業のブランドイメージを高めるため、日頃の営業などが上手くいかず悩んでいる場合もおすすめです。

商談やセミナーの席で自社の本をサッと取り出せれば、その後の交流が深まっていくことは間違いないでしょう。

ただし企業出版は自社商品の顧客を増やすことが主な目的であるため、本自体の売り上げはそれほど重要視されません。

費用

企業出版の費用は安いところでも200~300万円ほどかかり、大手クラスになると1,000万円を上回ることも珍しくありません。

なぜなら企業出版には本の制作から出版流通、各種プロモーションにいたるまで、ありとあらゆるコストと人件費がかかっているからです。

また本自体の売り上げを重視する一般的な商業出版と異なり、企業出版において依頼費用を本の印税のみで回収することは基本叶いません。

あくまでも数ヵ月後の利益を見込んでの投資となるため、入念な出版計画はもちろん、ある程度の資金的余裕も求められます。

なお出版費用を抑える手段として電子書籍オンリーの出版社を選ぶことは、企業出版においてはあまりおすすめしません。

ウェブ媒体との差異が小さくなる分、信頼性をはじめとした本ならではの強みも半減してしまうため、ブランディング目的であればあくまでも紙媒体メインで展開するのがベターです。

 

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企業出版で利益は出るの?

お金と時間をかけて出版に挑戦するからには、やはり本自体の売り上げも多少は追求したいことと思います。

しかし企業出版はベストセラーを生むことを目的としていないため、出版費用をただちに回収することは考えない方が無難です。

本の印税の相場は5~10%

一般的な自費出版の場合、著者が得られる報酬は本の売り上げの50%前後が相場です。

一方で諸費用を出版社側が負担する商業出版の場合は、発行部数の5~10%程度が印税として著者に支払われます。

そして企業出版は諸費用を自社負担する形式にも関わらず、本の印税が商業出版と同様の5~10%ほどしかありません。

自費出版クラスの投資に対して商業出版レベルのリターンしか得られないと考えれば、出版費用を印税だけで回収するのは難しいでしょう。

 

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企業出版は利益を目的にするものではない

企業出版の強みはあくまでもブランディング性能の高さにあり、認知度向上やイメージアップを顧客増加につなげることで、長期的な業績アップを目指していくのが出版の主目的となります。

そもそもビジネス書は、商業出版でも1万部売れれば大成功、といえる程度には客層の分母が少ないジャンルです。

そのため「ベストセラー作家になりたい」など経営者個人の欲求で企業出版を利用すると、肩透かしを食ってしまうケースも少なくありません。

企業の売上を伸ばすにはブランディングが重要

本そのものの利益がほとんどでないと聞けば、「あえて企業出版を選ぶ理由がないのでは」と疑問に思う方もいることでしょう。

しかし紙の本を実績として携えておくことは、間違いなく企業のブランドイメージ向上に大きな貢献を果たします。

また無名の中小企業がブランディングを行ううえで、出版以上の選択肢は存在しないといっても過言ではありません。

なぜならウェブ媒体はどうしても類似情報が多く、社名などをピンポイントで検索してもらわない限り自社サイトにたどり着いてもらえないからです。

ブランディングが不十分な企業はターゲット層から中々認知してもらえず、また不透明な印象から業界内でも敬遠されてしまいます。

企業の業績を本気で伸ばしたいと考えている経営者の方は、ぜひ今からでも自社に適した出版社を探してみてください。

 

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企業出版した場合の本の流通はどうなる?

本項では企業出版によって作られた本が、具体的にどのようなルートで人の手に渡るのかを簡単に紹介します。

書店で買ってもらう以外にも様々な手段が存在するので、ぜひ自社の目的に合った販売・配布方式を検討してみてください。

自社や関係先に配布

採用強化や人材育成といった社内ブランディングを目的とする場合、社史や広報誌といった商業書籍以外の形式で製本することも少なくありません。

この場合は流通の手間がいくらか省けるため、新人研修や採用説明会など必要なときに必要な冊数をすぐに配布することができます。

また書店へ流通させる場合も、関係先などへの配布用に一定の冊数を引き取ることは可能です。

営業やセミナーの席で自社の本を気に入ってもらえれば、下手にベストセラー狙いで大量の部数を出版するよりもはるかに高いブランディング効果を得られることでしょう。

書店で流通

自社や関係先のみを相手どるならともかく、世間一般に自社のイメージを浸透させるならやはり書店販売は欠かせません。

また単に本を売るだけでなく、読者を特定の購買行動へ導くことで初めてブランディングの成果を得られるため、キャッチコピー等はかなり入念に検討する必要があります。

なお出版社の多くは経済や文化といった独自のカラーを持っているほか、長年の出版実績によって一定数の固定客を得ています。

そのため自社のカラーに合致する出版社を選べれば、本の売れ行きがある程度安定することは間違いないでしょう。

企業出版に適した業界や企業

従来のプロモーションが一時的な注目集めで特定商品の売り上げアップを目指すのに対し、企業出版は長期的に自社を愛顧してくれる「固定ファン」の獲得に重きを置いています。

不動産業界や美容クリニックなど、長期契約を前提としたビジネススタイルであれば、間違いなく高いブランディング効果を得られることでしょう。

もちろんブランディングへの意欲と十分な資金的余裕さえあれば、どのような業界であっても企業出版はおすすめできます。

医療関係

単純に物を売って稼ぐ企業とは異なり、医療業界では特定のクリニックや治療法が大ヒットするということは基本的にありません。

また他業界のようなキャッチーな宣伝も難しく、病院や各種専門クリニックにとって認知度向上は大きな課題となっています。

しかし企業出版を利用すれば、患者や同業者に対して自院の存在を広く周知させることが可能です。

出版社の編集が間に入ることで読みやすさも加わるため、本の内容や文章が堅苦しくなってしまう心配もありません。

さらに医療業界ならではのメリットとして、出版した本を学術系のセミナーで活用しやすくなるという点も挙げられます。

患者数を増やしたい、業界内でつながりを強めたいと考えている医療関係の方は、ぜひ企業出版の利用を検討してみてください。

不動産関係

不動産業界では近年、将来に備えて投資目的で不動産を購入する顧客が急増しており、その多くは大なり小なり失敗を経験しています。

そうした経験を持つターゲット層に対して効果的な情報提供やプロモーションを行うことは、自社のシェア拡大を目指すうえで必須の作業といえるでしょう。

とはいえ投資に関する情報は真偽を疑われやすく、ウェブ媒体による手軽なブランディングでは信頼性をアピールしきれません。

その点、企業出版で制作した本には各情報に対して十分な裏付けがあるため、本を通じて訴えたいことを読者へスムーズに浸透させることができます。

また不動産業界はもともと限られた顧客と長い付き合いをしていくビジネススタイルであり、企業出版との親和性はあらゆる業種の中でもトップクラスです。

契約者数の伸び悩みなどに困っている不動産関係の方は、一日でも早く企業出版にチャレンジしてみましょう。

 

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美容関係

美容業界では商品・サービスに対する顧客の熱意が初めから高いため、効果的なブランディングを行えれば安定してリピーターを得ることができます。

とはいえ「美容」というのは特に情報が氾濫しているキーワードの一つであり、交通広告やウェブサイトでは信頼を得るどころか、自社の存在をアピールすることすらも簡単ではありません。

こうした競争が盛んな業界においても、企業出版によるブランディングは大いに効果を発揮します。

本には単純な煽り文句だけでなく、効能の原理や施術の実例といった裏付けを豊富に盛り込むことができるため、長期通院を前提とした美容クリニックなどには特におすすめです。

ただし化粧品や健康食品などを取り上げる場合、薬機法の関係で効能に関する表現が曖昧になってしまう点は注意してください。

ブランディングを重視する中小企業

自社の認知度が向上しないというのは中小企業共通の課題であり、ブランディングが必要と感じたらすぐにでも着手する必要があります。

大手企業にシェアを取られる中でさらに残りの顧客を奪い合うのが中小企業の世界であり、ブランディングを怠っていると事業の成長どころか会社の存続自体が危ぶまれてしまうからです。

また企業出版は決して安いサービスではないため、経営が傾いてから慌てて利用しようとしてもまず予算を組めません。

ブランディングの方法を探している中小企業経営者の方は、ぜひ早いうちに企業出版を試してみてください。

資金に余裕のある企業

ブランディングを通じて自社の顧客を継続的に増やせれば、数年後には高い確率で企業出版にかけた費用以上の利益を生み出せるようになります。

そのためただちにブランディングが必要な状況でなくとも、資金に余裕があれば挑戦しておいて損はありません。

 

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企業出版では利益よりもブランディングを意識しよう

企業出版は自社のファンを増やすうえで最適のブランディング手法であり、客単価の高い業種であればすぐにでも挑戦すべきプロジェクトであることがお分かりいただけたと思います。

企業出版に興味を持たれた方は、ぜひ自社のカラーに最も合う出版社を探してみてください。

 

投稿者プロフィール

マーケティング出版プラス編集部
学生や子育て中のママなど、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属。

出版をもっと身近に感じてもらうために、自分の家族や友達にも読んでもらえるような、分かりやすく丁寧な記事づくりを心掛けています。

これからも有益な記事を日々発信できるよう、尽力していきます!