今回は『マネジメントはがんばらないほどうまくいく うつうつ部下をいきいき部下に変える世界一シンプルな方法』を出版されました、株式会社Studio Gift Hands代表取締役である三宅 琢氏にお話をお聞きしました。
マネジメントの定義は何であるのか。
任されたからには、とあれこれ指示を出してしまう方も多いのではないでしょうか?
うまくいっていると思っている方にこそ今一度読んでいただきたい。
現場目線だからこそみえてくる、リーダーと部下の役割についての構造に迫ります。
三宅 琢(みやけ たく) 2005年東京医科大学医学部卒業。2012年同大学大学院修了。日本眼科学会眼科専門医。株式会社Studio Gift Hands代表取締役。公益社団法人NEXT VISION理事、東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員などとしても活動。 眼科医として活躍される中、産業医としてのキャリアも重ねられた三宅氏。ヘルスケア関連総合コンサルテーションStudio Gift Hands(スタジオギフトハンズ)の代表取締役も務められている。社会的処方を行う医師として神戸アインセンター病院の支援空間のコンセプトデザインディレクター等も務める。 |
聞き手:三宅様は眼科医のキャリアから専業医や空間デザインなど様々なご活躍をされていますが、今回の著書はどのご経験から執筆されたのでしょうか?
三宅さん:これは産業医の経験からの執筆になります。職場では管理職になりマネジメントを担当するようになった後と新入社員の時の2回が鬱になりやすいタイミングなんです。特に管理職の方に研修をしない企業も多いんですが、マネジメントが苦手な管理職の方ってすごく多いんです。そんな方に部下の体調管理について背負い込みすぎないように、読んで楽になれるような本があったらいいなと思い執筆しました。
聞き手:ありがとうございます。書籍については『向日葵と僕』という別の書籍も執筆されていますが、それとは別に管理職向けの本を出したいと考えていらっしゃったのでしょうか?
三宅さん:僕は個人的に文学もやっていまして、『向日葵と僕』はその活動の一貫として書籍にしたものなんです。それとは別に、元々出版社から産業医の立場でメンタルケアの本を書いてもらえないかと依頼があったんです。
聞き手:そうなんですね。
三宅さん:ただ精神科は専門ではないので、そんな僕がメンタルケアを書くのは違うと思ったんです。なので管理職の方の気持ちが楽になる一種のマネジメント本として、ライトに読める本で良ければ書きますよ、と回答して出来上がったものがこの本になります。
聞き手:なるほど、頂いた内容に対して更に提案をされた形になるのでしょうか?
三宅さん:そうですね。産業医として企業でマネジメントやコンサルタントに近い仕事をしている経験から、管理職の方が少しでも楽に部下をマネジメント出来るようになる本がいいのではないかと提案しました。
聞き手:ありがとうございます。私も拝見させて頂いて、イラストや対話形式を使ったり、チャートを用いたページもあって非常にわかりやすい内容だったと思いましたが、執筆にあたり工夫された点はございますか?
三宅さん:我々産業医はアドラー心理学をよく使うのですが、それがよく分かる『嫌われる勇気』という本をオマージュしているんです。
聞き手:そうだったんですね!
三宅さん:『老人に若者が相談に行く』のが嫌われる勇気の内容だったと思いますが、悩める管理職が産業医に相談に来て納得して帰るもののすぐ戻ってくる、という感じで同じストーリー構成になっているんです。
聞き手:なるほど。この内容は出版社の方との打ち合わせで生まれたのですか?
三宅さん:そうですね。アドラー心理学の導入編として嫌われる勇気の内容がとても分かりやすいので真似することになりました。もう一つ参考にしたのが、医学部の学生が持っている参考書の中に分かりやすいチャートが記された一枚のシートが入ってるんです。
学生がこれを持っていると内容がコアエッセンスすぎて手抜きだと、先生に怒られるくらい内容がコンパクトで優れものなんです。これと同じように、1つのチャートを理解すれば部下の体調の管理が楽になるような物を作りたいと思ったんです。この本にはマネジメントを理解するまでの途中経過が書かれています。
聞き手:そうなんですか。チャート式を取り入れたのも、参考書の中身からインスピレーションを得たと。
三宅さん:そうですね。
聞き手:確かに視覚的にも非常に理解しやすくて、万人受けしやすい内容だと思いました。特に届いてほしい読者のターゲット層は想定されていたのでしょうか?
三宅さん:真面目すぎる管理職、ですね。
聞き手:真面目すぎる?
三宅さん:要するに、部下のことをよく見てあげたいと思ってたくさん相談に乗ってしまう人間味のある管理職ですね。そういった方が部下に深入りしすぎて自分が鬱になったり、プライバシーに踏み込みすぎてお互いにストレスになってしまう事があるんです。本に書いてあるフローでは『やる気が出ない』相談なのか『体調が悪い』という相談なのか、そこだけを見極めてほしいと伝えています。
聞き手:突き詰めるとシンプルなメッセージになるんですね。
三宅さん:そうです。やる気とかキャリアの話だったら話を聞いてあげればいいのですが、体調が悪い人にいくら上司が事情を聞いても、専門家ではないのでドツボにはまるだけなんですね。
聞き手:それこそお医者様の分野になる、という話ですね。
三宅さん:モチベーションやキャリアの話なら上司の出番ですが、部下の具合が悪かったらすぐ産業医につなげるすべきですね。いくら上司が親切な人でも、対応を間違えるとドツボにはまってしまいますよ、という事がこの本には書かれています。
聞き手:割り切って行動だけを見て評価しましょう、というセクションがありますが、あの本は現在管理職に就いている方に向けて役立つ一冊になってほしい、という意味合いが強いと思いました。
三宅さん:管理職が部下の体調を見ろと言われても医者ではないので無理ですが、部下の行動なら見れます。例えば部下の休みが増えたとしたら行動評価になり、原因の深堀ではなくフローに乗せてあげるのが大事です。部下が『今日休みます』と頻繁に言い出した行動の変化に気づいていて見逃したら、それは安全配慮義務の履行不足になります。
聞き手:どこまでがマネジメントに当たるのか、この線引が難しいですね。こちらの本を出版されて、反響やご自身に変化のあった事はありますか?
三宅さん:まず1つ目に、この本は特殊な作り方をしていまして、ライターさんの対話を通してかなり長い時間をかけて書いたたんです。
聞き手:実際に対話した内容をそのまま書き起こした形ですか?
三宅さん:そうですね。こうした形式を取った理由は、僕が既に理解している事と初めて話を読んだ方との感覚にはギャップがありますので、ライターの方が納得出来なければ読んでいる方も納得出来ないと思ったからなんです。
聞き手:確かにそうですよね。
三宅さん:そんな作り方をしたので時間もかかりましたが、人に伝わりにくいものが何かを知れて勉強になりました。もう1つは、色々な企業で研修を行うなかで、あらかじめこの本を社員に配って予習復習に使ってくれるようになったんです。ただしゃべって面白い講演会で終わりましたではなく、ちゃんと皆さんがマネジメントを出来るようになるまでの素材になったなと感じました。
聞き手:やはり事前に本の知識を共有していることで、講演がプラスαに生きてくる事はありますか?
三宅さん:あの本はかなり簡単に書いてあるので、一回読むとなんとなく分かると思うんですよ。
聞き手:確かに、なんとなく知識はつきます。
三宅さん:事前に読んでもらえると『先生、こんな部下がいた時はどうすればいいですか』といった深い質問が出てくるんですよ。ただ講義を始めて終わらせるだけだと皆さん面白い講義だったという印象で終わってしまうんですね。
聞き手:確かに『なるほど』だけで終わってしまいますね。
三宅さん:ですよね。『なるほど』で終わるのではなく、明日から使えるようになってくれないと研修をする意味がないので、そのためのツールが出来たのは非常に良かったなと思います。
聞き手:出版する際も、あらかじめテキストとして使えるものにする意図があったのですか?
三宅さん:そうですね。参考書のような作りにしているので、困った時に読んでもらえると大きなミスを起こさない作りになっています。
聞き手:やはり一番のポイントは、分かりやすく入門書のようになっている所ですよね。
三宅さん:そうですね。入門書的な所と、あとは再現性があって自分で使えるスキルになっている事ですね。
聞き手:再現性という点で、今後も仕事や執筆などを通してステップアップしていきたい、または力を入れていきたいと思った点はありますか?
三宅さん:あの本を書いてからコロナ禍になり、リモートワークでのマネジメントも増えた事でそういった研修も増えましたので、第二弾という形でまた本を出せたらと思っています。
聞き手:リモートワーク版のマネジメント本ですね。
三宅さん:『リモートワーク下でのマネジメントはさらにがんばらない』みたいな。
聞き手:なるほど!
三宅さん:かなりコツがいるマネジメントですが、この二年で色々な方の話を聞いて知識が貯まっているので、どこかで文字化したいとは考えてますね。
聞き手:また本が出る時は是非インタビューをさせて下さい!
三宅さん:ありがとうございます。
今回お話を伺った三宅氏の今後の展開として、教育事業にも力を入れられています。
産業医としてみてきたビジネスパーソンが抱える課題点を解決するためには日本のビジネス構造、ひいては教育現場への働きかけを無視することはできません。
来春2022年3月には、well-beingの実践家である映画パッチアダムスのモデルとなった実在する医師、ハンター・キャンベル・アダムス医師を日本に招致し、彼の生の言葉と在り方に触れ、本イベントに関わる全ての人が分野横断的に学び成長できることを目的としたイベントを開催予定です。
概要HPはこちら→(https://gifthands.jp/patch)
また自分を形作る認知特性や興味関心などの指向性を把握し、個別最適な学びと仕事を導くシステム提供を目的とした「個別最適な学び方を作るSPACE
https://space-inc.jp」の展開にも携わっていらっしゃいます。不登校や引きこもり、うつ病といった社会問題は、学びと仕事の場で起こっている個人と環境のミスマッチに起因していることがほとんどです。こうしたミスマッチを解消し、個人の力が最大限に活かされる世界の実現を目指しています。
こうした教育への働きかけを含めて、今後も三宅様のご活躍から目が離せません!
『マネジメントはがんばらないほどうまくいく うつうつ部下をいきいき部下に変える世界一シンプルな方法』 迷走しているリーダーへ! 『なぜ心が折れるのか?を考えない』『モチベーション低下の3大原因は「不平等感」「孤立感」「裁量権の不在」』『自分7割・部下3割でちょうどいい』『部下に教えるのではなく、教わりに行く』etc… |
コンサルタントのみなさんの、理想の1か月の動きはありますか? 例えば、1か月のうち稼働日が22日だとすると、本業のコンサルの仕事が12日間、営業4日間、スキルアップのためのセミナー受講などで5日、のこりの1[…]
投稿者プロフィール
- 学生や子育て中のママなど、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属。
出版をもっと身近に感じてもらうために、自分の家族や友達にも読んでもらえるような、分かりやすく丁寧な記事づくりを心掛けています。
これからも有益な記事を日々発信できるよう、尽力していきます!
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