『医師を疲弊させない! 精神医療革命』(小椋哲・著)

今回は『医師を疲弊させない! 精神医療革命』を出版されました、医療法人瑞枝会クリニック院長の小椋 哲(おぐら さとる)さんに書籍についてお話を伺いました!

患者・医師・病院経営の“三方よし”が実現する診療モデルとは、また本書を読むことでどんなメリットがあるのかなどについて見ていきましょう。

小椋 哲(おぐら さとる)

医療法人瑞枝会クリニック院長。熊本大学医学部医学科を卒業後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局。東京都立松沢病院、東京大学医学部附属病院(助教)、宇治おうばく病院などの勤務を経て、2015 年に瑞枝カウンセリングオフィスを開所。独自に考案した心理サービス「瑞枝会モデル」の実現を目指し、2016 年瑞枝クリニックを開業し、2018 年医療法人瑞枝会クリニックに改組。小学生時代に米国現地学校で受けた人種差別、中高時代の不登校・中退の経験から精神科ユーザーとしての苦しみに共感した診療を行う。

 

聞き手:まず初めに、小椋さんのお仕事と経歴について教えていただけますか?

小椋さん:今は京都市内で精神科のクリニックの院長をやっています。平成28年の12月からやっているので、もうちょっとで5年になりますね。

大学は熊本大学医学部医学科です。卒業したのは36歳と遅いんですけど、それから初期研修を経て、後期研修で精神科の訓練を専門に始めたという感じです。その時、東京大学の精神神経科に入局しました。その研修先として東京都立松沢病院へ行き、そこでかなり鍛えられました。

 

聞き手:大学を卒業されるのが遅かったとのことですが、社会人経験を経てから医学部へ入学されたんでしょうか?

小椋さん:そうなりますね。20代はクラシックバレエという踊りを教えて生計を立てていたんですが、バブルがはじけてバレエスタジオの経営がうまくいかなくなって。それで、教室の傍らでカイロプラクティックスという整体を始めようと思いました。生徒さんの体をよくして、さらに踊りが上手になったら良いと思って。

そのためにもカイロプラクティックスの勉強をしようと考えて父親に学費の相談をしたところ、「曲がりなりにも人をケアするんだったら医学を勉強してからにしろ。それなら学費を出してやる」と言われて。解剖には興味があったし、踊りの練習をするなかで解剖の勉強を自分でしていたので、まあしょうがないなあと医学部に入ることにしたのが入学の経緯です(笑)

 

聞き手:カイロプラクティックスのために医学部に入ったんですね。最終的に精神科医を選んだきっかけはなんでしたか?

小椋さん:入学したときは、整形外科やリハビリ科など体に関わることをしようと思ってたんですが、卒業する頃には総合診療(家庭医療)を目指したいなあと思っていました。

でも、初期研修で精神科を担当したときに、精神科の医療に対して「これはおかしいんじゃないの?」って思って。ほかにもっとやりようがあるんじゃないか?ということで、精神科をやることにしました。それが好きだったからというよりも、「これはおかしいんじゃないの?」「修正したほうがいいんじゃないの?」っていうモチベーションから始まっています。

 

聞き手:なるほど。それでは、この本を出版したきっかけとテーマを教えてください。

小椋さん:本のテーマは、まず現在の日本の精神医療、得に外来は劣悪だということを現場にいる者として伝えること。そして現在の保険医療の制度が非常に不備なので、精神科医の先生が援助のスキルを向上させないとまずいぜという問題提起をしています。当院ではその辺を補う診療スタイルを実際に実践しているので、その中身はこうですよと形にするテーマですね。

その結果、「それってやりがいあるよね、面白いよね」って言ってくれる精神科の先生に届けばいいなと思ったことが、この本を書いたきっかけです。後任の精神科医の先生を確保したいっていうのが出版の意図ですね。

 

聞き手:この本のテーマにもなっている「患者・医師・病院経営の“三方よし”を叶える」。この三方よしっていう仕組みは、実際にはどのようにおこなっているのでしょうか?

小椋さん:保険制度では5分診療をしたら点数がとれるので、医院としては5分診療でがんがん患者さんを裁いていくのが良いんです。だけど、患者さんは5分でなんてとても相談することはできない。経営はよしだけど、患者さんはしんどい。

あとは、心ある精神科の先生は短時間で診療しないといけないっていうのは、ものすごい苦痛なはずなんですよね。じゃあボランティアにはなるけれど、10分20分、40分と長く診ればいいのか?それは患者さんにとってはいいかもしれないし、精神科医の先生とっても満足できる診療になっているかもしれないけど、結果的には赤字なんですよ。それは3方よしではなく、2方よしになってしまう。

じゃあ3方よしっていうのはどういう状況かっていうのが、この本で紹介している当院がやっているモデルです。基本10分は保険の範囲内、それ以上は患者さんとこちらの契約が成り立ったうえで、制度上も合法的な形で上乗せができる予約料を頂いています。このいわゆる予約診療というものを縦横無尽に使って、折衷案として三方よしを作っている。そこにやりがいあるんじゃないの?っていう提案を、患者さんではなく後任の方に向けて発信しています。

 

聞き手:この本は精神科医療の経営モデルについて書かれているんですね。患者さんには会社員の方も多いと思いますが、企業がうつ病のスタッフのためにできることや、精神科と連携することで治療がスムーズになることなどは何かありますか?

小椋さん:医院でも、患者さんが仕事に復帰するために職場の上司の方と面談をしたり連絡をとったりしています。管理をする側の方は、社員の方がメンタルヘルスの失調っていう場合はすごい大変だろうなっていうのはすごく思っています。ここで言っても伝わる訳じゃないけど、日々おつかれさまですという感じです。

で、じゃあ何か提案があるかというと、「信頼できる精神科のクリニックを持って、そこに相談するようにしてください」と言いたいですが、本の中でもそんなクリニックはないよと言ってしまっているんですよね。

すぐにできることとしては、まずはうつ病について理解してもらうことですかね。会社の上司の方で部下がメンタルをやられて休職をされているパターンとしては、多分うつ病が多いかと思います。この本に書いているうつ病はひとつ職場で起きる典型だろうなと思っていて、うつ病ってこういうものでこういうケアが必要で、そりゃ5分診療じゃ無理だよなっていう。うつ病ってどうやってよくしていくの?っていう顛末まで書いてあります。本当に多分他になかなかここまで書いてあるものないと思うので、うつ病について知るっていう意味ではすごく役に立つかなあと思います。

 

聞き手:本には、患者さんの社会復帰の支援や独立開業についても書かれていましたね。

小椋さん:そうですね。「定型的な会社に9時17時で勤務するのがすべてじゃないよ」ということを伝えられたらなと思っています。うつ病などで休職されて、大分良くなってきてご自宅での作業とかは問題なくできるって方もいらっしゃるんですよね。でもじゃぁすぐ復職できるかというとそれは難しい場合もあるというか、復職したらまた症状が出てしまったり、そもそも休職期間が長引いて退職せざるを得なくなってしまっている場合もあります。そういう方が、自営というか、例えばWebサイトの作成だったりロゴのデザインだったりの仕事で、自分のペースで働きながら社会復帰をされていってるという成功ケースもあります。

本来は医療期間で手に職をつけるための技術を身につける環境を用意するところまでいけたら理想ですけど、現在はまだ「あなたの病気や経済状況から、会社よりも自営の方が適しているんじゃないか」とアドバイスというか、応援しているという感じですね。

 

聞き手:ありがとうございます。今回はドクターに向けた本ということで、これから本を読む医師や医学生の方に向けてメッセージをお願いします。

小椋さん:精神科に興味があると、精神科に関する色々な本を読むことは確かに面白いですよね。

精神科での患者さんへの関わり方って色々あって、例えば精神分析っていうようなスタイルの関り方もあるし、行動療法なりマインドフルネス(瞑想)なり、それに対して面白いなって興味を持ってもらえるのはすごく良いんですけど、じゃあ実際に外来で精神科の医療をやれってなった場合に、5分診療でできる訳がないんですよね。そんな絵にかいた餅というか、特定の患者さんの特定の場でしかできない医療を本にしたものがいっぱいあるんですよ。実際それは保険診療でできないよってなってるんです、今。

だから精神科にせっかく興味があるのにって思ったら、この瑞枝会モデルがあったら、あなたがやりたいことを保険診療でもできるっていう。だから諦めないで声かけてねっていうメッセージです。

 

聞き手:インタビューは以上になります。本日はありがとうございました。

 

『医師を疲弊させない! 精神医療革命』の詳細はこちら

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療”を行っています。これにより、医師の時間が削られるだけでなく、スタッフの残業時間も増え、クリニックの経営が圧迫されてしまうという状況に陥っています。この疲弊した精神医療現場を救うべく、著者は、投薬とカウンセリング双方からのアプローチで患者に適した診療を選択でき、予約制を導入することで診療時間を確定し残業を減らすなど、職員負担を抑えながら病院経営も安定するという、患者・医師・病院経営の“三方よし”が実現する診療モデル「瑞枝会モデル」を開発。本書では、このモデルを実際の診療に取り入れられるよう、余すことなく解説しています。

アマゾンURLhttps://www.amazon.co.jp/dp/4344932498

 

 

投稿者プロフィール

マーケティング出版プラス編集部
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