社内の人材を強化することは、企業の成長において不可欠な要素です。
しかし、中小企業の場合はリソースが足りず、人材強化のための施策は後回しになってしまいがちであるという問題があります。
そこで今回は、中小企業だからできる人材強化の方法についてまとめました!
- なぜいま、人材の重要性が高まっているのか
- 人材育成の方法7選
- 中小企業だからできる人材強化の方法や効果的なツール
について興味のある方はぜひ最後までご覧ください!
大学時代からこれまで自身が著者で出版した本は16冊、読んできたビジネス書・実用書は3,000冊以上。はじめて本を出版する企業や個人事業主の方を対象に、出版でビジネスを加速させるお手伝いに力を入れる。
昨今のビジネスを取り巻く環境
現在、ニューノーマル※1 やVUCA※2 と言われる時代になりました。
コロナが少し落ち着きを見せ、人々の移動が元に戻りつつある中、国外の情勢は不安定になり、日本でも人手不足や変化の激しい状態が続いています。
そんな中、ミッション・ビジョン・バリューの発信をする企業が増えました。
昔から今後日本は少子高齢化が加速し、それによって人手不足になることは懸念されていましたが、現在それを如実に実感している企業が多くあります。
昔は求人を出せば多くの応募があったかもしれませんが、今はどの企業も人材の獲得に必死です。
また、より成長したいと思っている企業は今いる人材の育成、定着にも力を入れています。
優秀な人材に長く働いてもらうことは、社内の活性化だけでなく、利益の追求や後進の育成などにも大きな影響を与えます。
企業は優秀な人材のニーズを察知し、常にスキルアップし続けることができる環境の整備、キャリアの提案、プライベートの変化(結婚、出産、育児、介護など)に柔軟に対応することが今の時代には求められています。
企業のインナーブランディングが盛んなのも、このことが理由だといえます。
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コロナ禍によって、より働き方が自由となり、求職者側の選択肢も増えました。
そのため、福利厚生などの働き方の柔軟さや、従来の年功序列を取っ払い、実力主義や若いうちから裁量権を与えて経営感覚を養わせる企業も多くあります。
経営資源の1つである「ヒト」が不足している中、更なる事業の発展のために、働く人々が最大限にパフォーマンスを発揮することが求められています。
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なぜ人材が大切なのか
単純に人手不足だからという理由以外に、なぜ企業にとって人材が大切なのか、その理由をご存じですか?
先に結論をまとめると、
- 急激な社会変化に順応できる人材はどこの企業も欲している
- 生産性の高い人材は、市場価値が高い
- 転職が一般的であり、優秀な人材が流出しやすい
これらの理由から、企業が更なる発展をするためには、より人材強化に注力する必要があります。
そもそも、中小企業のみならず、企業において人材に関する問題は後回しにされがちです。
なぜなら、人材育成には時間も工数もかかるからです。
社員一人ひとりのキャリアデザインをしっかりと形作ろうとすると、社内のリソースが足りなくなることもままあります。
また、営業など繁忙な日々を送っている部署などは人材育成に時間を割くことが難しく、結果的に後回しになってしまうことも多いです。
加えて、そもそも人材育成に対して経営者、上層部の関心が薄い場合もあります。
企業の発展に社員個人のキャリアの充実との関連性を理解していなかったり、企業の理想を追い求めるがあまりに、キャリアデザインを社員側に押し付ける形になっているケースも見受けられます。
一方、急速なグローバル化やIT化が進んでおり、順応できる企業=順応できる人材が集まっている必要があります。
これらはただ研修を受けるだけでは養うことができず、社員自身の自発的な興味関心からくる成長が重要です。
労働人口が減少し生産性の向上も求められている中で、これまで以上に一人当たりの業務量や求められる成果も高くなっています。
いくらAIなどのデジタルツールが発達したとしても、人間が必要な業務は少なからず存在し、それらを短時間でこなすことができる人材は企業にとって貴重な存在です。
これまでは年功序列で終身雇用といったキャリアプランが普通でしたが、今は自身のスキルアップのために転職をすることが一般的になり、またどの企業も人材不足のため、優秀な人材がこれまで以上に流出しやすくなっています。
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社員のスキルレベルを可視化する「スキルマップ」
人材育成の手法をご紹介するまえに、スキルマップについて解説していこうと思います。
スキルマップとは、社員各自の現在の業務内容に関するスキルレベルを可視化したものです。
Excelやスプレッドシートなどで一覧にすることが一般的ですが、大企業などでは専門的なツールを導入している場合もあります。
このスキルマップを持つこと
- まず、社内の業務を行うのにどのような知識や技術が必要になってくるのか
- それができる人材がどの程度いるのか
- 各個人得意業務や不得意な業務
- 不足しているスキル
なども把握することが可能です。
スキルマップがあることで社内の人材育成をよりスムーズに行うことができます。
また、組織内でのリーダー候補、幹部候補のピックアップにも生かせます。
それだけでなく、社内全体で共有することで
「この業務に一番詳しい人は誰なのか」
「○○のトラブルが発生して至急△△できる人がいないか知りたい」
といったことが誰でもわかります。
能力の見える化は、本人やマネジメントのスキル把握だけでなく、社内業務の円滑化にも効果的です。
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一般的な人材強化の手法7選
人材育成を考える際に大事なことは、長期的な視点を持つことです。
人の成長はさまざまで、スタートダッシュが早くその後伸び悩む人もいれば、スロースターターである時期を起点に急激に成長を遂げる人、少しずつ比較的一定の速度で成長し続ける人などといったタイプがいます。
また、会社が求める人材像を押し付けるのではなく、社員が希望するキャリアプランとの折衷がとても大切です。
ここでは、多くの企業が取り入れている人材強化の手法を7つご紹介していきます。
- 研修
- OJT
- Off-JT
- 目標管理制度 MBO
- ジョブローテーション
- 自己啓発
- eラーニング
研修
多くの企業で取り入れられているのが研修です。
社内研修・社外研修とあり、必要に応じて社員が研修に参加します。
講師の質や相性によって、参加者への効果に差が見られるものもあります。
それのフォローとして、研修+フィードバック面談などを組み合わせる場合もあります。
OJT
OJT は「On the Job Training」のことで、職場の上司や先輩が実際の仕事を通して実践的に指導することです。
知識や技術などを実践的に見に着けることが出来ます。ただ、これは教える側のモチベーションに左右されがちな部分もあり、人選がとても大切です。
Off-JT
Off-JT は「Off-the-Job Training」のことで、職場から離れて別に時間を設けて行われる教育です。
OJTは短期間での効果を期待するものですが、このOff-JTは長期目線での教育で、参加する社員のモチベーションが高くないと効果を発揮しづらいというデメリットもあります。
目標管理制度 MBO
MBO は「Management By Objectives」のことで、社員自らが目標を管理しその目標を達成させるためどのようなプロセスを踏んだのか、どの程度成果が出たのかを自身で把握させるものです。
自分自身が自分の管理者となって業務を行うことで、業務の効率化が促され、また達成感や業務への自由な工夫からモチベーションアップが期待できます。
ただ、これは企業の目標を達成するための業務が目標であり、その達成のために個人が目標を持つというものです。
自由に目標を設定できるというわけではないことを周知させる必要があります。
ジョブローテーション
ジョブローテーションは定期的に社内で職場、職種を移動し様々な経験を積む制度のことです。
さまざまな経験ができ、本人の適性の把握や部署にとらわれないスキル、人脈を持つ人材を育成することができます。
ただ、次の職場への移動の目的があいまいであったり、社員の負担や不安が考慮されていない場合はストレスを与えるだけになってしまい逆効果になってしまいます。
自己啓発
自らの意志によって学びたい事、挑戦したいことに対して行動することです。
自己啓発をする目的はさまざまですが、これは会社側が何か用意することは少なく、社員側の自由意志で行われます。
なかには自己啓発費として、毎月一定額を補助したりする場合もあります。
ただ、これは普段の業務に余裕があるからこそできるものです。
残業が多かったりそもそも拘束時間の長い仕事だと、自己啓発はなかなか進みません。
eラーニング
これまでは実際にセミナーへ足を運んだり、カルチャーセンターなどで講座を受けたりとオフラインでの学びが多かったですが、最近はeラーニングといって、インターネットを利用して学ぶ方法があります。
eラーニング専用のサイトやアプリも充実しており、通勤時間や隙間時間を学習に充てる人も増えています。
また、ビジネスや企業用のeラーニングも増えており、福利厚生として用意する企業も多いです。
ただ、知識の習得はできますが、技術面の習得は難しいものもあります。
具体的な中小企業の人材強化戦略
ここまで一般的な人材育成の手法をご紹介してきましたが、中小企業で実践できることはどのくらいありましたか?
そもそもこれまで人材の問題を後回しにしてきている場合、もっというとゼロからのスタートの場合、やることは山積みで「これまで上手く回っていたし、今さら頑張らなくてもいいか」と思ってしまうかもしれません。
しかし、人材強化は企業にとって大事なことです。
発展もそうですが、現状維持すらできなくなる危険性もあります。
ここでは、リソースも時間も割けない中小企業のための人材強化戦略を解説していきます。
求める人材像を明確化する
そもそも、社内にいてほしい人材はどのような人材か明確になっていますか?
ただ優秀な人、文句言わずに働いてくれる人、というものではありません。
また、さまざまな業務があるかと思いますが、その業務に合った求める人材像があるでしょうか?
大企業と違って中小企業の場合は様々な業務を1人がこなさなくてはならない場合も多々あります。
その場合、一番の主力業務について考えまた順応性や好奇心、向上心なども必要になってくるので、1つの業務に集中して仕事をする人よりマルチタスクで仕事ができる人が求められます。
もし現在「社内にいて欲しい人材像」が明確になっていなければ、色々と行動をとる前に考えてみてください。
少し具体的にお伝えすると、営業マンであればただ
「月○○円売上がある人材」
とするのではなく、
「お客様に寄り添える人」
「持っているスキルを抱え込まずに人に教えられる人」
「紹介を多く取ってこれる人望のある人」
「お客様とのトラブルへのフォローが早く、また的確な人」
「商品知識や業界の情報を豊富に持っていて、社内でもお客様にも頼られる人」
というように考えてみてください。
最初は抽象的でもいいので、少しずつ掘り下げていって具体的な人物像をつくってみましょう。
そして、具体的な人物像が見えてきたら、そういう人はどのようなスキルを持っているのかを想像してみてください。
頭の中で考えるとごちゃごちゃになってしまう場合は、マインドマップや曼荼羅チャートなどを活用してみてもいいかもしれません。
大事なことは
- その業務に携わる上で必要な能力、スキル、人柄は何かを明確化させること
- それができる人材はどのような考えや行動を起こすかのイメージを持つこと
です。
自社の理想と社員個人のキャリアプランを合致させる
社員はロボットではないので、それぞれ自分の思い描くキャリアプラン、人生プランがあります。
また、人生での優先順位もさまざまです。
普段は働き者で優秀な人であっても、人生の中で仕事の優先順位はもしかしたら低いかもしれません。
仕事があまりできない人でも実は仕事が大好きで、プライベートの時間よりも仕事を頑張りたいと考えているかもしれません。
人材に対して考える際、企業がどこまで社員の人生の実現を可能にするために寄り添うか、というところがキモになってくると思います。
企業として、社員に寄り添いすぎるのではなく、大事なことは選択肢を提示できる余裕を持つことです。
社員の実現したいこと・会社側が社員に実行してほしいこと・達成してほしいことをお互い提示した際、社員側が会社に提供するのは労働力とその達成のための時間や思考・知識・行動です。
では、会社側は何を提供できますか?
理想的なのは社員がやりたいことも実現できるように時間の融通が利くように勤務時間の調整することや、業務量や業務内容の見直し、社内でのキャリアアップの提示するなどです。
(例)
従業員側(社員の実現したいこと)
もうすぐ子どもが生まれるから、今までは残業や休日の急な出勤も対応してきたけれど、これからはできるだけ業務時間内だけで仕事をしたい。
ただ、職業柄休日急に呼び出されることは理解しているから、どうしてもダメな日は前もって伝えるからその日は絶対に休ませてほしい。
業務内容自体はとてもやりがいがあるし業務量を減らしたいとかは考えていなくて、もっとスキルを磨きたいと考えている。
これからはより効率的な働き方を実践していきたい。
会社側(会社側が社員に実行してほしいこと、達成してほしいこと)
休日や残業に関しても最大限配慮します。
また、○○さんの家族との時間や子どものことを考えた場合、今後もし△△のような仕事にも興味を持っていたら、キャリアとしてこういったものが提示できます。
今の職場でもっと□□の知識や経験を積んで、2年後に△△の仕事をする可能性もあるけどどうですか?
もちろん、今の職場でマネジメントや管理職を目指すこともできます。
○○がしたいなら、会社として△、◇、●の支援ができる。
と選択肢を社員側に投げることで、社員は自身で選択しその選択に責任を持つことが出来ます。
特別なことをしようとせず、また社員のことをなんでも知ろうとするのではなく、お互いの仕事をする上での優先順位や幹の部分を理解し合うことが大事です。
企業の発展には「理念の共有」が不可欠
中小企業で経営者1人で人事関連のサポートがいない場合、社員のことまで気を回すのはなかなか大変ですよね。
「できれば社員自身で自己啓発もモチベーションの維持も理念への共感もやってほしい!」と思ってしまうこともあるかと思います。
社員数が少ない場合は、人事のプロを外部から呼ぶ資金投入が惜しく、できるだけ社内のリソースでやろうと考えるのではないでしょうか?
ヒトに対する問題の解決の方法の中で最も困難だと言われているのは、「理念の共有」です。
正直言ってしまうと、仕事量や休日などは、その時どうにかすればなんとかなるものも多いです。
また、人数が少ない会社で働いている社員たちはそもそも少数精鋭の優秀でガッツのある人が多く、また「社長のためにがんばりたい」「会社が好きだから働きたい」「仲間の力になりたい」と思っている人も多いはずです。
ただ、人数が少ないとどうしても家族間、友達感が出てしまい、ビジネスに関して意見を言いづらくなってしまうこともあります。
もし、周り全員がその判断が間違っていると感じても「まあ社長の会社だしな…。」「こういうモードになるとなんも聞かないからな」と思って賛同するフリをするかもしれません。
それは社長と社員の間柄だけでなく、社員同士でも「あのやり方辞めたほうが良いのに、またやっている。あれをやられると後の作業する私大変なんだけどなー」とか小さな鬱憤が溜まっていきます。
しかし、仕事をする上での理念の共有ができていれば、お互いが年数などに関係なく会社にとってダメなことはダメだと言えるので、上記のような状態を解消することができます。
理念の共有というとどうしても規則のように受け取られてしまいますが、そうではなく「会社をやっていくうえで、みんなで共通してもっておきたい仕事へのスタンス」だと、まずはフラットに感じてもらうことが重要です。
どうしてもこういうことをしようとすると型にはまりがちで仰々しく堅苦しくなってしまいますが、そうすると抵抗感を覚える社員も中には出てきます。
社風にもよるかと思いますが、これまでの社内の良い雰囲気を保ちつつより発展をするためには、その会社にあった理念の共有をすることが大切です。
では、そのためにはどのようなことをすればいいのでしょうか?
1つご提案したいのは、ビジョンブックを持つことです!
理念の共有に役立つ「ビジョンブック」とは?
「ビジョンブック」とは、会社の理念や創業者の想い、これまでの会社の歴史や展望をまとめ、メモをとるスペースなどを設けた、社内で使う本のことです。
ただ理念を唱和したり暗記したりするのではなく、なぜそれを設定したのか、理由やその本質まで掘り下げて伝えることで社員からの共感を得ることに繋げていきます。
また、今後人員が増えることを見越して、求職者に配布することを見越して作ることも大切です。
こういったヒトに対する社内での取り組みは大企業やある程度規模のある企業のことだと考えがちですが、今は少人数の会社だからこそ、今いる人員の定着のため、今後の社員のために形にして残す企業が増えています。
ビジョンブックを専門に作る出版社も増えてきていて、ただ作るだけではなく、その効果的な使い方まで提案してくれますので、気になった方は一度説明だけでも聞いてみてください。
ビジョンブックについてはこちらの記事で、より詳しく解説しています↓
昨今『ビジョナリーカンパニー(明確な理念を持ち、かつ柔軟に変化をし続ける企業)』が経営者の間で再度注目されるようになり、「経営理念」を意識することが増えてきました。 ヒト・カネ・モノ・情報の経営4大資源の中[…]
まとめ
- 昨今は、急激な社会変化に順応できる人材はどこの企業も欲している、転職が一般的であり優秀な人材が流出しやすいといった理由から、人材の確保が企業の重要課題となっている
- 人材強化にリソースが割けない中小企業の場合は、求める人材像を明確化することや、社員個人のキャリアプランと自社の条件をすり合わせていくことが重要
- 社内の良い雰囲気を保ちつつより発展をするためには、その会社にあった理念の共有をすることが大切
ビジョンブックプロジェクト
弊社ラーニングスでご提供している「ビジョンブックプロジェクト」についてのサービス資料をご用意しました。
- 今、“ヒト”の課題を解決するビジョンブックが人気
- 経営理念の浸透、業績アップに効果的なビジョンブックの作り方
- サービス概要と費用
参考文献
- 坪谷邦生(2020)『図解 人材マネジメント 入門 人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」100のツボ』 ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 村山昇(2018)『働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える』 ディスカヴァー・トゥエンティワン
投稿者プロフィール
- ラーニングス株式会社
アドバイザー/ブックライティングサービス『ひよどり』サービス運営統括責任者
大学時代は近世文学を専攻。 日本語教師の資格を持つ。
200名以上の経営者、士業の専門家へのインタビュー経験があり、Webメディアを中心に記事を執筆。
書籍の企画~出版を行うだけでなく、出版記念のウェビナー等、イベントの企画運営も行う。
プロフィール詳細はこちら
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