【漁業・水産業/自費出版】業界内のギャップを埋めてビジネスを推し進めている実例

 

今回は、『漁業と地域に生きる知恵 上巻~「おさかなを獲る」とはどういうことか、伝えます~』『漁業と地域に生きる知恵 下巻~「包丁が価値を生み出す」仕組み、ご一緒しませんか?~』と英語版『The Japanese fisheries and its wisdom to live in seaside community: Guide to the manner of Japanese fisheries and its business practice』『The Japanese fisheries and its wisdom to live in seaside community: Invitation to the world of Japanese fisheries created by domestic kitchen knives』の4冊を出版されました、かながわ水産株式会社から、編集にご尽力いただいた取締役の吉川育代様、調査役の渡部元様にお話を伺いました。

かながわ水産株式会社は横須賀佐島港にて相模湾沖で水揚げするお魚を、網元である『井戸隠居丸』から仕入れる事により新鮮なお魚を提供できる事を強みとしている会社ですが、一体なぜ出版することにしたのでしょうか?

一般にはあまり知られていない漁業・水産業に関するビジネス書を出すことで得た成果を余すことなくお話いただきました。

 

マーケティング出版+だけの特別なインタビューです。

ぜひ最後までご覧ください!

 

【著者プロフィール】

嘉山道夫(かやま みちお)

1946年生まれ。有限会社井戸隠居丸、かながわ水産株式会社代表取締役。沿岸漁業から一念発起し、刺し網、企業スタイルでの深海籠漁業、さばたもすくい漁業など、神奈川県沿岸での沖合漁業に大きな足跡を残す一方で、安定収益を目指した有限会社の大型定置網を経営軌道に乗せる。その目は単に漁業生産のみならず、一次加工を通じた漁業への補助手段にも届き、地方で進展した六次産業を通じた地域振興に対して、首都圏での「0次産業」という新たなビジネスシーズを志向している。

かながわ水産株式会社HP→https://kanagawasuisan.com/

 

 

聞き手:吉川様、渡部様、この度はラーニングスで出版をお手伝いさせていただき、まことにありがとうございました。色々とお話を伺いたいところではありますが、まずはこの記事をご覧になってくださっている方へ、御社がどのような事業を展開されていらっしゃるか、ご説明いただいてもよろしいでしょうか?

 

吉川さん:はい。まず、有限会社井戸隠居丸ですが、鎌倉の稲村ケ崎沖に、大型定置網漁業を営んでいる漁業会社です。そして、この井戸隠居丸の子会社が、かながわ水産株式会社になります。

井戸隠居丸で漁獲された魚を市場に持ち込むために魚種選別をしたり、一次加工から販売まで行っている会社です。そして著者の嘉山道夫はこの2つの会社の代表取締役を務めています。

 

聞き手:魚を獲り、加工から販売までと全て自社でまかなっていらっしゃるんですね。

ではなぜ、出版したいと思われたのでしょうか?

 

吉川さん:大きく2つの理由があります。1つは、企業様、主に小売業の方とお取引をする際のネックを解消したかったからです。スーパーに行けばいつでも魚が並んでいるからか「漁に出れば魚は獲れる」「常に安定して魚が獲れる」と思われるのですが、現実は全く違います。漁獲量やサイズ、形、質はその日によって異なりますし、漁師であっても海の中にどんな魚がどの位いるのかは分かりません。私たちも商売をしている手前、できる限りご要望にお応えはしたいのですが、漁獲量は年々減っているためなかなか難しい状況です。

同業者であっても漁をしている人でなければ実感が湧かないのは仕方のないことかもしれませんが、このことをご理解いただくのに苦労するため、わかりやすく皆様に知っていただけるツールが欲しいと考えていました。

 

聞き手:旬の魚や漁獲量についてニュースで見ることはありますが、最前線にいらっしゃる御社からこうやってお話を伺うと、本当にいま海に魚がいないのですね。そして、漁業関係者同士でも認識にギャップがあるのは驚きました。では、2つ目の理由についてもお聞きかせいただけますでしょうか?

 

渡部さん:2つ目は所属漁協との民事裁判において「わたくしの立場」を司法の場で適切に訴えるために、社会的信頼度の高い媒体を使いたいと考えたからです。書籍内で漁業と水産業の基本的なビジネス構成、法制度を説明することができ、おかげ様で、横浜地裁横須賀支部では圧勝、続く東京高裁では一部敗訴となりましたが、書籍が心強い味方となりました。漁業に携わっている当事者が本を書くことはかなり珍しいことですし、生の声を正確に本に落とし込めたことが功を奏したのだと思います。

 

吉川さん:著者である父、嘉山道夫も書籍にまとめて頂けたこと大変満足していました。

 

聞き手:御社のお役に立つ本ができて何よりです。この本はAmazonの水産ジャンルにおいて最高2位となりましたよね。周りからの反響はいかがですか?

 

吉川さん:取引に関しては、本を通して漁の現実を理解してくださって、とてもスムーズになりました。「あと〇個で在庫が終わってしまいます」と伝えると、以前なら「定番商品にできませんか?」と聞かれることが少なくありませんでしたが、安定供給ができないことも本の中で書いたからか、最近はすんなりと「じゃあ、次の商品決まったら教えてください!」とおっしゃっていただけます。

また、裁判の関係で隣の漁協で水揚げするようになったのですが、そこの職員さんがこの本を買ってくださり「非常に勉強になりました。いろいろあると思いますけど、今後一緒に頑張りましょう!」とおっしゃってくださったのは本当に嬉しかったです。

 

聞き手:多くの困難を乗り越えてこられたからこそ、喜びもひとしおですね。無事に出版が終わった後に聞くのもなんですが、なぜ弊社で出版することを決めてくださったのでしょうか?

 

渡部さん:ラーニングス様からお声掛けいただいた当時、私は水族館に展示生物を販売する三重県のアクアショップにいたのですが、その折から、伊勢神宮奉納などをテコに「漁業や水産業の仕組みを踏まえた、「海からおかねが生まれるまさにその瞬間」を網羅するビジネス」を、書籍を通じて紹介してみたいと思っていました。いくつかアクアショップのビジネスモデルを論文として専門学会では出版させていただいたのですが、それがラーニングス様の目にとまり、お声掛けいただいたのがお付き合いの始まりです。その後、かながわ水産に就職し、吉川より、「裁判を適切に乗り越え、今後のビジネスに役立てたい」と言う希望をもらい、「これはラーニングス様に頼むしかない!」と思い、出版を強く提案しました。

 

吉川さん:書籍で自己紹介する、いわゆる「名刺がわりのメディア」に着手するのは初めてのことで、当初は不安もありましたが、学術論文に親しむ渡部の尽力も得て、納得のいくものができました。また、ラーニングス様のご用意くださった書籍の企画・戦略提案も当社の課題や目標を達成するために必要な内容を示してくださったので、非常に助かりました。

 

聞き手:この本は業界関係者の方以外の、一般の方にも漁業・水産業を知って欲しい、という思いがあったかと思いますが、出版後にどのような効果がありましたか?

 

吉川さん:直近の出来事だと、融資ですかね。かながわ水産のほうで一次加工の作業場を作る計画があるのですが、私は日本政策金融公庫の担当者から連絡をもらうまで、この計画で該当する融資を受けられることを知りませんでした。ですが、本を渡しておいたお陰で先方から連絡を貰え、融資を受けられることを知りました。また、事業計画なども本を通して既に内容をご理解いただけていたので、通常よりも負担なく迅速に作業が進みました。関係性を深めたい方、長いお付き合いをしたい方に書籍を配っておりますが、結果的に商談や融資などが良い方向に向かっているので、今後もビジネスに役立てたいです。

 

渡部さん:実は漁業と水産業を一般の皆さんに知っていただく上で一番障害だったのが、社会から寄せられる「海への眼差し」が、民法が言う「海はみんなのもの」と言う視点に偏りがちだったことです。しかし漁業権の観点からは、「海は誰のものとも言えないもの」と言うこともできるのです。そこを今回、単行本を通じてわかりやすく訴えることができ、本当に感慨を新たにしているところです。実際、「海を見ていると「魚が湧いている」と言う漁師感覚を身につけられる」わけですが、それが金融の現場での「景気が湧く」と言う肌感覚と共通しており、「この単行本を読んで、漁業と水産業の「勘所」がよくわかった!「誰のものとも言えない」からこそ、資源管理をして、予算手当に非常に興味を持つんですね、漁師さんは。わたしたちと根っこは同じなんですね!」と言うお声も多いのです。意外なところで、理解者を得ています!

 

吉川さん:これまで分かりにくかった漁業とはなにか、産業設計がどのようになっているか、実績はどれほどあるのか、投資へのリターンがどこにあるかが本を通して明確になったことから、金融関係の方と以前よりも良い関係性を気づけていると感じています。

 

聞き手:本を読んでいただければ、現場を1回視察する以上に得られる情報は多いですからね。特に今回は井戸隠居丸、かながわ水産のビジネス展開、歴史、地域社会との連携も描かれているので、担当者が上長に説明の時間をいただかなくても「この本に全部書いてあるので読んでください」と渡せばいいので、先方の負担も減らせる点も評価されているのではないかと思いました。

そういえば、今回は英語版も制作されましたが、なぜこの決断をされたのですか?

 

渡部さん:吉川から、嘉山社長が国際協力事業団(JICA)の技術講師として海外で漁業指導をしていることや、海の問題は世界全体で考える必要のあるものなので、この機会に英語版も作ったほうがいいのではないかと相談を受けたことがきっかけです。私自身も英語版は必要だと感じていました。

 

聞き手:日本語版に続き、英語版もラーニングスから出していただきありがとうございます。また、英語の漁業関係の専門用語に関して、渡部様がとても細かく言い回しや表記をチェックしてくださったこと、とても感謝しています。ちなみに、英語版はどのように活用されていますか?

 

吉川さん:社員教育に活用しています。かながわ水産で、魚の仕分けや一次加工に携わっているフィリピン人の方たちにプレゼントをしたところ、とても喜んでくれました。彼女らにとって良いテキストになったみたいで、会社に愛着を持ってより一層意欲的に働いてくれています。普段はどうしても部分的な仕事になりますが、本を通して仕事の全体像を知ることで、自分の仕事が何に繋がっているのかを意識することができたようです。

 

聞き手:書籍では経営者自ら語るスタイルで「海で働いてご飯を食べること」「漁業をビジネスとして成り立たせること」をまとめていますし、未利用魚の地産地消の活用なども詳しく書いてあるので、その点も社員教育に役立っていそうですね。

 

吉川さん:そうだと思います。「国に帰ったらこれをみんなに見せます」と言ってくれたり、魚を獲るほうにも興味を持ってくれて実際に船に乗ってきたりと、会社が展開しているビジネス自体にとても興味を持ってくれたのが嬉しかったです。

 

聞き手:それでは最後に、今後のご展望についてお伺いしたいです。書籍を活用してどのようなことをしていきたいですか?

 

吉川さん:沼津市戸田地区で、ユニークな深海魚の宅配サービスを展開されている意欲的な女性の方がいらっしゃいます。彼女のような、わたしたちとは全く違った目の付け所から事業展開されている方たちと、書籍を通じて今までとは少し違うジャンルのビジネスをご一緒できれば面白いだろうなと思います。実際、この方とはお会いしていろいろと相談をしたことがあります。「いつでも、誰でも、自分なりのアプローチで読める」ことが書籍の良さだと思うので、書籍を通じて、いろいろなジャンルに見聞を深め、ビジネスの幅を広げていきたいです。今回出版した書籍が、漁業関係や仕事で関係のある方だけにとどまらず、社会に歩み寄っていき、いろいろな方に手に取っていただけると嬉しいです。

 

渡部さん:今回の単行本出版では、編集協力という形で現場にいたのですが、漁業や水産業の「文字にまだなっていない知的財産」を、どのようにわかりやすい言葉で表現するか苦心しました。次は漁業・水産業とは一見かかわりが無いように見える業種の皆さんにも親しんでいただける、「海ならではの仕事、商品」を紹介するビジネス書にも挑戦してみたいですね。ぜひ多くの方にご覧いただけると幸いです。

 

聞き手:本日はありがとうございました!

 

 

書籍の購入はこちらから

『漁業と地域に生きる知恵 上巻~「おさかなを獲る」とはどういうことか、伝えます~』

日本:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CKKQ78SN

アメリカ:https://www.amazon.com/dp/4867281239

 

 

 

 

 

 

 

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アメリカ:https://www.amazon.com/dp/4867281247

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投稿者プロフィール

南川 佳世
ラーニングス株式会社
アドバイザー/ブックライティングサービス『ひよどり』サービス運営統括責任者

大学時代は近世文学を専攻。 日本語教師の資格を持つ。

200名以上の経営者、士業の専門家へのインタビュー経験があり、Webメディアを中心に記事を執筆。
書籍の企画~出版を行うだけでなく、出版記念のウェビナー等、イベントの企画運営も行う。

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