企業が出版をするというと、その大抵はブランディング目的でした。
「本を出すと、社会的信頼度が増しますよ」
「本が書店にあることで、認知度も信頼度もアップします」
「本を出せば新しいお問い合わせが来ますよ」
と営業マンが伝えることから、広告と同一視されることもありました。
ポスターやCM等よりも多くの情報量を伝えることができますし、経営者が本の表紙に出てアピールをすることが多かったので、出版は会社名と社長の名前を売るもの、という認識があったのだと感じています。
しかし、現在状況は大きく変化し、「企業出版」とは売上アップを実現させることができるマーケティングの手段の一つになっています。
会社のプロジェクトとして出版をしていたり、社長ではなく社員が本を出したり、会社のアピールではなくこれまで自分たちがやってきたことのノウハウ、実績の発信と「自叙伝や社史とは違う」ということが周知されてきました。
また、本離れ、出版不況が続き、個人が無料で情報発信できる時代になぜ出版するんだと言われてきましたが、AIによるコンテンツ氾濫、人的資本経営やサステナビリティ開示の義務化、そして展示会やリアルイベントの復活――。
これらの潮流が、“信頼性のある情報発信手段”としての出版を再び強く押し上げています。
では、2026年の企業出版はどのように進化しているのでしょうか。
この記事では今後の企業出版についての予想をしていきます。
大学時代からこれまで自身が著者で出版した本は16冊、読んできたビジネス書・実用書は3,000冊以上。はじめて本を出版する企業や個人事業主の方を対象に、出版でビジネスを加速させるお手伝いに力を入れる。
2025年までの企業出版を取り巻く環境
まずは、2025年現在の出版業界を取り巻く環境について考察していきたいと思います。
コンテンツの信頼性が揺らぐAI時代
ChatGPTに代表される生成AIの進化によって、誰もが簡単に「それらしい文章」を生み出せるようになりました。
しかし同時に、「情報の出どころがわからない」「どれが正しいのか判断できない」という課題も浮き彫りになっています。
この状況で、「出版社から発売された本」という重みが再評価されつつあります。
ライター、編集者、校正・校閲スタッフなど著者以外の人間のチェックが入ることから、紙の本は審査や編集を経た“裏付けのある情報”として、経営層に響きやすいのです。
人的資本経営・サステナビリティ開示
上場企業を中心に、人的資本やサステナビリティに関する情報開示が義務化されています。
これまでIR資料やウェブサイトで伝えていた内容を、「本」という形で体系的にまとめ、外部に示す動きが広がっています。
書籍をフックにメディア出演をしたり、書籍を出したことで「その分野の第一人者・詳しい人」というブランディングができるため、講演会に呼ばれたりと社外活動を活性化させることが可能です。
出版は、単なる広報ではなく「企業理念や人材戦略を社会に提示する手段」としてますます活用されるでしょう。
展示会・リアルイベントの回復
コロナ禍で落ち込んだ展示会は、2024年以降回復傾向にあります。
2025年〜26年には来場者数がコロナ前水準に戻ると予測されています。
リアルの場で「手に取れる本」を渡すことは、数多のパンフレットやノベルティと一線を画す強力な差別化手段となります。
ラーニングスの姉妹会社であるセールスプロセス株式会社でも、実際に展示会で書籍をフックに多くのリード獲得、成約を実現しました。
会場にもよりますが、1人が150以上のリードを獲得でき、1割ほどが商談へとつながりました。
ちなみに、展示会で配る本は内容をイベントに合わせて作っており、より成約率が上がるよう工夫しています。
2026年に予想される企業出版の潮流
では、2026年の出版業界はどのような変化や動きがあるでしょうか?
採用・エンゲージメント目的の出版が増える
これまで企業出版は「営業・マーケティング」目的が中心でした。
しかし2026年には、採用や人材定着を狙った出版が増えると予想しています。
賃上げ、物価高、社会保険料の負担増など、中小企業にとって厳しい時代が続いています。
そのため、福利厚生や給与で差別化がしにくい企業が、書籍を通して理念ややりがい、人としての成長ストーリーを強くアピールし、そこに共感してくれる人材を採用しようと動くのではないでしょうか?
誰もが気軽に転職できる時代だからこそ、愛社精神を持って長く勤めてくれる人を探すための手段として出版が注目されると予想しています。
AIを活用した出版プロセス
これまでは0→1を人間の手でやっていましたが、今後は編集者のアイデアをもとにAIが台本や構成案を作り、それを磨き上げる出版手法が主流になるのではないでしょうか。
実際に、骨子や素案原稿を著者がAIに作らせることが増えてきました。
我々編集者もタイトルやキャッチコピー、構成案などは自分が作ったものとAIが作ったものを比較してより良い内容にしてから著者へ提案する、という工程が出てきています。
編集側から提案する案件では、全体の6~7割がこの方法になっています。
ちなみに、すでに著者が書きたい内容が決まっているときは、AIを使うことはほとんどありません。
経験やストーリー、肉付け、人に読んでもらうための文章はブックライターや編集者の腕の見せ所です。
AIでもできるところ、人間にしかできないところの役割分担を明確にすることで、これまで以上に製作期間やコストが短縮できるようになるかもしれません。
書籍+デジタルのハイブリッド化
出版は「紙の本」で終わりません。
2026年には、書籍+LP+動画+SNSキャンペーンといった複合的な活用が当たり前になると予想しています。
制作段階からの情報発信や、出版後のイベント、キャンペーンを打つことで、より長期的に見込み顧客との接点を持てるような動きが出てくるでしょう。
すでにラーニングスでも書籍+LPは実施していますし、ウェブメディア、SNSでの掲載など、出版前からネット上での情報発信に注力しています。
LPは書籍の購買専用で制作をしFacebook広告をまわし、SNSは出版時の他、記事がある場合は1~2ヶ月に1回は情報が発信されるようにしています。
多くの企業がブランディングを重視している中、コーポレートサイトでは商品やサービスのアピールはできても、セールスに特化した打ち出しはなかなかしづらい状況になってきました。 ブランドイメージ[…]
出版の“当たり前化”
これまで出版は「一部の大企業」や「意識の高い経営者」だけのものと思われてきました。
ですが2026年には、中小企業や専門サービス業でも“当たり前の施策”として定着していくと考えられます。
ネットが普及しているからこそ、お金を払って手に入れる情報の価値が見直されるのではないでしょうか?
売上アップ、ブランディング、採用、人材の定着など、変化の激しい時代における経営課題解決の手段として、企業出版はますます注目されると考えています。
企業が今から備えるべきこと
2026年を見据え、企業が今すぐ取り組むべきことは以下の3点です。
①出版テーマを“資産”として蓄積する
今すぐ出版しなくても、社史やノウハウ、理念をまとめておくことで、いざという時にスムーズに出版できます。
②出版後の活用設計を考える
書籍を出すだけではなく、展示会・営業資料・採用活動にどう展開するかを最初から設計しておくと成果が出やすいです。
③出版を“単発”ではなく“運用”として捉える
1冊で終わらせず、複数冊で異なる切り口を提示することで、市場への浸透力が高まり、事業成長が実現できます。
まとめ
2026年の企業出版は、単なる広報手段ではなく、経営戦略や人材戦略に組み込まれる重要な施策へと進化していくでしょう。
AI時代だからこそ「人の言葉が詰まった本」が光り、社会が透明性や信頼を求めるからこそ「出版による発信」が力を持ちます。
出版は“未来への投資”です。
広告ではなく資産としての出版を行いたい、2026年に差をつけたい企業は、今から一歩踏み出すべきタイミングにあります。
出版に関心のある方は、ぜひ当社の資料をご覧ください。
また、出版するまでの流れや費用、出版後の本の活用方法など気になる点がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
投稿者プロフィール

- ラーニングス株式会社
アドバイザー/ブックライティングサービス『ひよどり』サービス運営統括責任者
大学時代は近世文学を専攻。 日本語教師の資格を持つ。
400名以上の経営者、士業の専門家へのインタビュー経験があり、Webメディアを中心に記事を執筆。
書籍の企画~出版を行うだけでなく、出版記念のウェビナー等、イベントの企画運営も行う。
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