『生産性マネジャーの教科書』を、本間正人(ほんままさと)さんとタッグを組んで出版された河村庸子(かわむらようこ)さん。
成長市場から成熟市場への自身の経験を活かしながら、市場環境が変化した日本で生産性を上げるために、逆転の発想が必要になる課題を「上司と部下」の関係性から7つの章に分けて書き表しています。
「思いもよらなかったことが生産性を上げるきっかけになる」と気付かされる、上に立つ立場の人にこそ読んでいただきたい、目から鱗の実用書になっています。
河村 庸子(かわむら ようこ)
・株式会社コラボプラン代表取締役 リーダーの人間力向上を通じて、組織の成果を出すコンサルティング、トレーニング、コーチングを行う。 |
聞き手:様々な活動をされている著者様ですが、どのような立場をメインとして書かれた本なのでしょうか?
河村さん:リクルート社でやったマネジメント変革は、1年で生産性2倍になると同時に、組織がとても活性化しました。これを、独立して他社さんにも展開しました。そのことをバックグラウンドとして書いた本です。
主な内容は、管理職向けのマネジメントの仕組みです。人間関係の深め方や、上司がどのようにコミュニケーションすることで部下は成長しパフォーマンスを発揮できるのか具体的な方法を書いています。
前回出版した本では「PDCAの仕組み」の作り方と回し方を書いたので、それを踏まえ今回は、「部下とどのように接したら良いか」ということを中心に書きました。
聞き手:どのような背景で、本間さんと河村さんのお二人で書くことになったのでしょうか?
河村さん:コーチングの本を何十冊も出している有名な本間さんとは、以前から知り合いでした。たまたまお会いしたときに、「部下と上司の関係性をテーマとして、何か書けないか?」という話になったんです。
お互いに案を出し合ったので、このスタイルになりました。中身に関して言えば、ほぼ私の経験です。本間さんにはコーチングのような高い視点から意見をいただき、マネジメントなどの細かい視点からは私。双方で補完していき、この本を完成させていった感じです。
聞き手:本のテーマは二人の得意分野や経歴から出てきたものでしょうか?
河村さん:読み手がどのくらいいるのか、ということを意識してテーマを決めました。その結果、「生産性を上げよう!」という内容が、読者に読んでもらえるテーマなのではと思いました。
この本は2017年に出版したのですが、2016〜7年頃は政府の政策も「生産性」や「効率化」を重要視したものだったので、時代にフィットした本だったと思います。
聞き手:『生産性マネージャー』という単語は、河村さん的にはどのような定義があるのでしょうか?
河村さん:日本のブルーカラーは生産性が高く、世界でもトップクラスの取り組みをしているのに、ホワイトカラーのマネジメントはかなり低いですよね。特にアメリカと比較した場合。リクルート社員時代にNYのIBMに一年(2003年)いたことがあるのですが、日本とアメリカのギャップをひしひしと感じました。
アメリカのIBMではオペレーションの仕組みがきっちり決まっているんです。全社員に、「進捗の報告方法、誰がどこまでの権限があるのか」というマネジメントルールがしっかりと伝わっている。IBMのような大きな企業はいろんな国で展開しているので、どこの国や場所でも同じようにやれるよう、全てが規定されているんです。
それが日本には無いですね。当時は特に「個々」の単位で仕事をしていたので。個人で頑張って、体を壊すまでやる、体を壊すまで頑張れば認めてもらえる、そういう間違った意識が「頑張った」ことのアピールになる風潮が強くありました。それはアメリカでは自己管理ができていない「恥ずかしいこと」でした。
ホワイトカラーのパフォーマンスを上げるためのマネジメント方法が根底から違うと感じました。
聞き手:アメリカで感じた衝撃を日本に落とし込むために、何ができるだろうと思われたのでしょうか?
河村さん:私が入社した頃は「行動量=結果」の時代。つまり、頑張れば結果が出る時代だった。でも今は違いますよね。以前は昇進・昇給でモチベーションは外から与えられました。今は、現場で働く部下の心の中からやる気を引き出し、自律的に成長をさせないと生産性も上がらないはずなんです。
アメリカの会社員は、自らの意識で選んで仕事をしていました。常に「次の成長チャンスを探している」と言えます。仕事に対する捉え方が、全く違うんですね。そこには昔の日本の「村社会」とか、そういう文化が関係していると思います。
でもそれは日本の個性であり、協力的で気が利くなど良いところでもあると思うんです。
海外との比較は、日本のよい文化を残したまま生産性向上を考える良いきっかけになりました。例えば、日本人に根付いた「ねばならない思考」などは、過去に囚われて変化の速い時代に対応しにくいので、そういう意識から解き放つことは生産性を上げることになると思います。
聞き手:「はじめに」の前の「0」の章でプロローグがあるのですが、そこにはどういった狙いがあるのでしょうか?
河村さん:インパクトを重視して、編集の方と話し合った流れでこのようになりました。「7つの逆転の発想」に分けたので、内容が明確になっていて、読みやすいと思います。
生産性が上がりそうなエピソードだけを、研修やコーチングで伝えている内容から抜き出して書いています。効果を実際に感じていただいたことや、研修をしている中でつまづく人が多かったところなどです。
生産性を伸ばせないでいる現代の「上司」は、昔自分が厳しくされていた頃の教育を、自分も踏襲してしまっている。昔ながらのマネジメント習慣が残ってしまっているんですね。
「自分はデキる」「直すところなんて無い」と思っている上司こそ、自分を変えることで全体の業績をグッと上げることができます。
いちいち口出ししていた上司が、部下の意見を尊重するように変わったとします。すると部下が喋り出すようになります。喋ることにより、自信がつきます。自信が付いた部下に上司も任せてみようと思うようになり、任せられると部下はもっと頑張ろうと思います。すると、全体で活発な意見の交換が行われるようになり、業績が上がるんです。上司はそこで初めて、「黙ることが必要だった」ということに気付くんです。
口出しすることや引っ張ることがマネジメントだ、と思い込んでいるのが落とし穴なんですね。
聞き手:特にここは意識して書いたというところや、プッシュポイントを教えてください。
河村さん:私がサラリーマン時代は、「なんでも数値化して目標を作ろう」という風潮でした。そのほうが評価がしやすいし、正しい評価ができるからと。
でも今の時代は、「いかに数値化せずに目標が立てられるか」ということ。個人の中から目標へのモチベーションを引き出せるというのが上司の重要な役割だと思っています。
「結果」をイメージできるようになることこそが部下の自立に繋がります。部下のモチベーションや、結果の達成を後押しするという面でも、それがどんな世界につながるのかをイメージさせることは、すごく効果があります。
聞き手:数値化というと、個人の特性に合ったものではなくなってしまいますよね。
河村さん:「これさえやればいいんだ」という感じになってしまいますね。営業の外回りで言えば、「何件回ればOK」とか。こなすことが目的に変わってしまうと、必ずしも売上に結びつかないことは多々あります。
「お客様に感謝される」とか、「仲間と情報共有する」ことでワクワクして仕事をするとか。そういう『五感』を感じられる目標設定をすると、良い結果になります。まずは、どういう状態になのかをイメージする。
つまり脳に良い体験をさせます。そして、結果を出すためにどのようなことが必要か洗い出した上で、既に持っているスキル、今回の成長ポイント、マネジメントの支援を具体化する。そこのシナリオがしっかりしていて、マネジメントが計画通りに介入したら、目標が達成できないことはまず無いですね。
心が動かない数値ではなく、心が動くイメージを体験させるマネジメントができるということが実際には効果的です。一番大事なのは「気持ち」や「意図」なので。
聞き手:この本を手に取った方に対して、メッセージをお願いします。
河村さん:上司が変わると、びっくりするほど部下が変わります。自分の内面に目をむけて、何が変われるかという面からアプローチをして欲しいと思います。読者の方に当事者意識を持っていただければ嬉しいですね。
与えられた環境の中で出来ることは、自分自身が変わること。当事者の視点で読んでもらい、役立ててもらえればいいなと思います。
『生産性マネジャーの教科書』 河村 庸子、本間正人・著
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学生や子育て中のママなど、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属。
出版をもっと身近に感じてもらうために、自分の家族や友達にも読んでもらえるような、分かりやすく丁寧な記事づくりを心掛けています。
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