今回は書籍『保育施設の未来地図 ―― 選ばれる園創りとスマート保育園・幼稚園・こども園構想』を出版されました、ユニファ株式会社 代表取締役CEOの土岐泰之氏にお話をお聞きしました。
子どもが健やかに成長していくために、子ども達を取り巻く様々な人や地域の連携が必要な時代になっています。
保育施設と家庭をつなげるためにどのような取り組みが行われてきたのでしょうか。
これからの保育の現場ではどのような考え方が求められるのでしょうか。
「マーケティング出版プラス」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!
土岐泰之(とき やすゆき)
ユニファ株式会社 代表取締役CEO 1980年福岡県生まれ。青雲高校、九州大学経済学部卒業後、2003年住友商事株式会社入社。リテール・ネット領域におけるスタートアップへの投資及び事業開発支援に従事。その後、外資系戦略コンサルティングファームであるローランド・ベルガーやデロイトトーマツにて経営戦略、組織戦略の策定及び実行支援に関与。2013年にユニファを創業。全世界から1万社以上が参加したスタートアップワールドカップにて優勝したことに加え、採用率が全世界で2.5%未満であるEndeavor(エンデバー)起業家に満場一致で選出されるなど、国内外で高い評価を受ける社会起業家。 |
聞き手:こんにちは。まずは土岐さんのご経歴と、現在のお仕事について教えていただけますか?
土岐さん:2003年に大学卒業後、総合商社でベンチャー企業向けの投資や事業開発を行っていました。その後、外資の戦略系コンサルティング会社に転職し、経営支援に携わりました。
2013年に愛知県豊田市でユニファ株式会社を創業。ユニファ株式会社は「Unify+Family」の略で、「家族を一つにする」という思いを込めています。
創業以来、保育施設と家庭をつなげる新しいプラットフォームをつくる事業に取り組んできました。「家族の幸せを目指すあたらしい社会インフラを世界中で創り出す」というのが弊社のパーパス(存在意義)であり、これまでそれを軸に事業運営をしてきました。
聞き手:ユニファ株式会社を立ち上げたきっかけは何ですか?
土岐さん:学生時代から起業したいと考えており、総合商社でベンチャー企業に関わっていたことが、起業への思いを強くしました。ただ、なかなか何をテーマに起業するかという部分が見つからない状態でした。
そうこうするうちに、自分自身に子どもが生まれて、家族のために自分のキャリアを捨て縁もゆかりもない愛知県へ移住することになりました。しばらくは半分主夫のような感じで仕事と子育ての両立をしていましたが、改めて起業しようと思うようになりました。ビジネスとして成立しそうだからと太陽光関係のビジネスを考えたり、政治家を目指そうかと考えたりもしました。
今から振り返るとだいぶ迷走していたなと思うのですが、最終的には、「家族の幸せ」をテーマにすれば、自分らしい挑戦ができると思い至り、ユニファを創業することにしました。
聞き手:本を出版するまでの経緯を教えてください。
土岐さん:5、6年前に「スマート保育園・幼稚園・こども園」構想というものを提唱し始めました。日ごろから、我々がやろうとしている社会変革の、その先にある社会のイメージを言語化して発信することこそが私自身の役割だと思い、これまでにいろいろと自分なりに情報を発信してきました。
この5年の間に、保育業界の環境も著しく変化しました。昨今はアフターコロナの影響も大きく、今後変わりゆく社会の中で、保育施設はどうあるべきなのか、改めて広い視野で保育関係者の皆様と共に考えるきっかけをつくりたいと思い立ったのが出版の経緯になります。
聞き手:『保育施設の未来地図』の特徴・内容を教えてください。
土岐さん:簡単に言うと、「選ばれるべき保育施設とは何か」を様々な角度から検討して提唱しています。これまで以上に、保育の現場や園の経営者、園長先生、主任の先生や自治体関係者等全てが密接に絡み合う形で連携していくことが求められていると、我々は考えています。
これまで当社は保育者向けのオンライン研修や、「ルクミー みらい保育スクール」という実践型の有料研修を通じて、保育施設の経営や在り方に関するノウハウやコンテンツを蓄積してきました。それを体系化して、それぞれの主体がどうあるべきかというのを描いています。
全てのコンテンツや利害関係において共通している軸は、「一人ひとりの子どもと向き合う」ということです。
われわれのルクミーというサービスは「Look at me」の略で、「子どものことをもっと見守ってあげましょう」という意味が込められています。
今、子どもがどういうことに興味関心があるのか、どういう健康状態なのか、これらを保育の現場で保育者に過剰な負担をかけることなく可視化できる環境をつくりたいと考えています。園長はその仕組みをつくる必要がありますし、それを応援する義務が自治体にはあると思っています。
このように保育の現場では、子ども一人ひとりと向き合うという同じ目線を持ちながら、それぞれの保育施設や、子ども達が健全に育つために必要な地域資源などを全体でつないでいくエコシステム(未来地図)をつくる必要があるという思いを、今回の書籍の中に込めさせていただきました。
聞き手:執筆するにあたり気を付けたことはありますか?
土岐さん:読者ターゲットである保育施設関係者や園経営者の方々に理解してもらうために、分かりやすく説明するように心掛けました。具体的には、日本を代表する幼児教育の大家である汐見稔幸先生や無藤 隆先生、大豆生田啓友先生といった学者の方々にいただいたコメントやメッセージの部分を導入に持ってくることで目線を揃える章立てにしたり、保育施設の事例を豊富に入れることで、理論だけでなく実践にもつなげられる内容を意識しました。
子ども一人ひとりと向き合うための「スマート保育園・幼稚園・こども園構想」という部分は、非常に重要な部分ですので、そこのコンセプトを核としながら、全体を構成しました。
また、弊社のメンバーを登場させたり、私自身の創業の経緯を約15ページに及ぶ長いあとがきという形で出したり、途中に公的な調査データをまとめたコラムも入れています。
そこは、保育業界の問題を自分事として捉え、最終的に自分もこの問題解決の伴走者になるべきであるという理解や共感を紡ぐために工夫したポイントです。
聞き手:書籍を制作してどのようなメリットがありましたか?
土岐さん:メールやソーシャルメディアを通じて「素晴らしい書籍を出してくれてありがとう」というメッセージをたくさんいただいたので、本当にありがたく思っています。Amazon売れ筋ランキングでも、保育園・幼稚園教育や保育士採用試験のカテゴリーで1位になったりと、反響の高さを感じています。
また、行政関係の方や保育商社の方など、当社と関係のある方々からは「思いは同じです」や、「この事例の部分が分かりやすかったです」、「以前お付き合いのある園長の話も載っていて親近感が湧きました」等、多くの反響の声をいただけたのでうれしく思っています。
書籍という形態だからこそ伝えられるメッセージがあるのだと改めて思いました。手に取っていただいたり、献本させていただいたり、いろいろな形で新しいコミュニケーションを生み出せる可能性も書籍にはあると気付きました。
また、本を出版したことによって、我々の挑戦を応援してくれる会社が増えたという実感もあります。
聞き手:本を出版して心境の変化はありましたか?
土岐さん:メッセージを書籍にして出すと、文字に残りますので妻や子ども、両親なども目にします。仕事上での関係者に加えて、こうした家族のためにも、しっかりと挑戦を続けていかないといけないという覚悟が改まりました。
書籍というのはずっと残るものですし、公共性の高いものなので、ウソのない自分でありたいという思いを強めることもできました。
ですが、本の出版は保育施設の未来について発信していくスタートラインであると思っています。
今は政治家でもTwitterを活用する時代です。noteのように長文のメッセージを発信するようなメディアも出てきました。保育者や保護者たちの多くはInstagramを使っています。
いろいろなメディアにアクセスできる社会環境の中で、書籍というアプローチを使いながら、それ以外の複数のメディアチャネルを組み合せながら社会に対してメッセージを出していくことは、これからの挑戦だと捉えています。
聞き手:今後、第二弾は考えていますか?
土岐さん:また社会へ大きくメッセージを出すべきタイミングが来れば、第二弾を検討したいと思っています。
聞き手:今回の読者のターゲット層を改めて教えてください。
土岐さん:まずは、保育業界の方々に読んでいただきたいと思っています。現場の先生や園長先生、行政の方々など、一人でも多くの保育に携わる方々にこの書籍を届けたいと考えています。
また、保育関係者だけでなく、保育者を目指して勉強している学生の方、保護者の方等、子育て全体に関わる幅広い層の方達にとっても新たな視点や示唆がある内容となっていますので、ぜひご覧になっていただきたいと思っています。
まずは自分の子どもに対して、自分の所属する園から、自分の担当管掌自治体エリアから等、それぞれが対峙するところで実践できることが絶対にあると思っています。この書籍がそのような初めの一歩を後押しする力になればうれしいです。
聞き手:最後に書籍のPRをお願いします。
土岐さん:今、保育や子育ての環境が大きく変わろうとしています。
子ども達一人ひとりの健やかな成長のために、もしくは保育業界のより良い発展という観点でも、今はまさに変革のときであると我々は捉えています。そのために、まず何から始めると良いのか、選ばれるべき保育施設とはどんな園なのか等、この本にはいろいろなヒントが詰まっています。
未来の社会の担い手である子ども達を支える保育業界を、より良い環境にしていくために、初めの一歩を踏み出す勇気を得るための書として、ぜひご一読いただけるとうれしいです。
聞き手:それでは、インタビュー取材は以上になります。本日はありがとうございました。
『保育施設の未来地図 ―― 選ばれる園創りとスマート保育園・幼稚園・こども園構想』 土岐泰之・著
保育施設も「選ばれる」時代へ 本書では保育・育児関連の社会課題をDX(デジタル・トランスフォーメーション)によって解決することを目指す“Childcare-Tech“領域のスタートアップ・ユニファが、「未来の保育施設の在り方」を保育学の専門家の方々、また保育の実践者である保育施設運営者の方々と共に考える。
●本書の構成 第1章 現代の子どもたちと保育―社会の変化と今、保育に求められていること アマゾンURL |
投稿者プロフィール
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学生や子育て中のママなど、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属。
出版をもっと身近に感じてもらうために、自分の家族や友達にも読んでもらえるような、分かりやすく丁寧な記事づくりを心掛けています。
これからも有益な記事を日々発信できるよう、尽力していきます!
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