書店流通本からプリントオンデマンドまで、4つの出版形態を紹介

本の出版と聞くと、書店に並んでいる本をイメージする方が多いでしょう。ですが実際のところ、出版形態には様々な種類があります。

一般的に知られている書店流通本以外にも、冊子製本やプリントオンデマンドなどの画期的な出版方法がありますので、あわせて紹介していきます。

 

書店流通本

これは世の中の多くの人が一番イメージしやすい出版形態です。

出版社がまず出版取次とよばれる問屋に本を卸して、書店からの注文に応じて取次から全国の書店へと運ばれていく形です。

これは、商業出版でも自費出版でもあまり変わりはありません。

 

注意したいのは、出版しただけで書店に本が並ぶとは限らないということ。

書店の本棚には限りがあるので、書店側は当然売れ筋の商品を並べたいと考えます。

書店員さんに「売れそう!」と思ってもらえないと書店に本は並びませんし、仮にあなたにその自信があっても、そもそもあなたの本を見つけてもらうことが大変です。

というのも、新刊は1年間で8万タイトル近くも出版されます。つまり、毎日200タイトルもの本が出ているわけで、それを考えると、いかに自分の一冊を書店に置いてもらうことが難しいかを理解できるかと思います。

 

逆に言えば、書店に本を並べることができれば、大きな宣伝効果があると言えます。パソコンやスマートフォンなどをあまり使わない人をターゲットとしている場合には、特に効果を発揮します。

例えば健康、相続のようなテーマの高齢者向けの本であれば、従来の書店流通システムに対応した本を用意することが望ましいでしょう。

書店流通の本を出版すれば、同時にアマゾンなどのネット書店にも掲載されるので、高齢者のみならず広範囲のターゲットに届けられます。

もちろん、最近は高齢の方であってもスマートフォンなどのデジタル機器を使いこなす人は増えているので、書店に並ばないから高齢の方に届かないとは一概に言えるわけではありません。

 

印刷会社での冊子製本

最近では自身で印刷会社に依頼して、冊子感覚で本をつくる人も増えています。

パンフレットの代わりに本をつくるイメージで、事業内容を宣伝する本として個人事業主の方などが作成することが多いようです。

また、事業とは無関係に趣味の範囲で利用、作成している個人の方もいます。

 

この場合、名刺やパンフレット代わりに配布するのが最適と言えます。ただし、店舗やネット書店での流通はないため、「本」として売るのとは少しニュアンスが違います。

本を出版したというブランド力を付けるには少々物足りないかもしれませんが、それでも名刺代わりであればこれで十分という人も多いでしょう。

 

電子書籍

昨今爆発的に読者数が増えているのが、電子書籍です。

電子書籍には紙書籍では実現できないメリットがたくさんあります。

 

一つは、購入してすぐ読めるという点です。

紙書籍の場合、気になった本があったとしても実際に書店に足を運ばないといけなかったり、ネット通販で購入しても到着を待たなければなりませんよね。それが電子書籍の場合、パソコンやスマートフォンの画面のワンクリックで、即時に読めてしまうのです。

 

二つ目のメリットは、持ち歩きの利便性です。

紙は結構重く、かばんの中で幅も取りますが、電子書籍であればいつも持ち歩いているタブレット端末やスマートフォン、あるいはパソコンの画面上で読むことができます。特に出張の多いビジネスパーソンに人気です。

また、出版する側からしても、印刷や流通などにかかる費用や労力削減になるため、価格も安く設定できるという利点があります。

 

ただし、デメリットもあります。

例えば、電子書籍の場合は人を集めるマーケティング効果は見込めるものの、ブランディング効果は紙書籍に比べて弱くなります。

電子書籍の著者という肩書きが欲しい場合や、できるだけ経費をかけずに出版したいのであれば電子書籍も良いですが、ブランディングのための出版であれば、電子書籍より紙書籍の出版のほうが効果を発揮するでしょう。

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プリントオンデマンド

こちらは電子書籍と同様、近年大きな注目を集めている出版方法の一つです。

プリントオンデマンドは、「注文に応じて、本を1冊ずつ印刷、製本し、購入者に発送する」という画期的な出版方法です。注文が入る都度印刷して製本するので、在庫が余ったり、在庫が足りなくなったりすることがないのです。

 

本来、販売するための在庫がなくなると、売る機会を見逃し、ビジネスチャンスも失ってしまうことがありますが、プリントオンデマンドであればその心配はありません。

プリントオンデマンドであればアマゾンなどのサービスを提供している会社がサービスをやめない限りという条件付きにはなりますが、半永久的に本を販売し続けられるのです。

 

また、在庫切れだけでなく、在庫が余ることもありません。これも、これまでの出版の常識では考えられないことでした。

 

通常製本する場合、多くつくればつくるほど一冊当たりの単価は安くなります。

100冊よりも1000冊つくったほうが1冊あたりの制作単価は安くなるのです。

そのため、どうせつくるならと必要以上に多くつくってしまった結果、保管場所や保管料などに困ることがよくありました。

一方、プリントオンデマンドでは必要な分だけを必要な時につくるので、過剰在庫を抱える心配がないのです。

「いつでも」買えて、「いつまでも」なくならない。

プリントオンデマンドは、そんな画期的かつ革新的な出版方法と言えます。

 

以上のように、一言で出版と言っても様々な方法があります。

それぞれにメリット、デメリットがありますのでご自身の目的や用途に合わせて、最適な出版方法を選んで挑戦してみてはいかがでしょうか?

投稿者プロフィール

梶田洋平
出版ベンチャー企業「ラーニングス株式会社」の代表取締役。

大学卒業後は証券会社に入社し、2つの支店で法人、リテールの営業活動に尽力。
5年弱勤めて退社した後、出版事業を手掛ける会社を起ち上げる。

これまで自身が著者で出版した本は16冊、読んできたビジネス書は3000冊以上。

『出版を変える、出版で変える』を合言葉に、はじめて本を出版する企業や個人事業主の方を対象とした事業を展開。
出版でビジネスを加速させるお手伝いに力を入れる。

好きな本の分野は経営者の自叙伝やマーケティング、経営に関する実用書。
愛知県名古屋市出身。趣味は読書とスポーツ観戦。

近著:
「7日でマスター 株チャートがおもしろいくらいわかる本」(2017年ソーテック社)
「7日でマスター 投資信託がおもしろいくらいわかる本」(2018年ソーテック社)
「いちばんわかりやすい 60歳で2000万もらうiDeCo年金のはじめ方」(2019年ソーテック社)
「世界一やさしい 株・FX・投資信託の教科書」(2020年ソーテック社)