出版ビジネスの仕組み|出版業界の新たな試みをご紹介!

 

 

今回は出版業界や出版社がどのようにビジネスを行っているかについて解説しました!

 

出版不況と呼ばれて早十数年…。

コロナ禍で一度需要が増えたものの、紙の本は現在も減少しています。

 

これ以上衰退させないためにも、業界全体が必死に本という文化を維持するためにさまざまな挑戦をし続けてきました。

 

本を作ること以外にもさまざまな取り組みを行っているので、余すことなくご紹介します!

 

 

【この記事でわかること】

  • データで見る出版業界の現状
  • 出版業界の仕組み『出版社・取次・書店』について
  • 進化する出版業界の新たな取り組み

 

ぜひ最後までご覧ください!

 

 

【監修者】
 梶田 洋平
 ラーニングス株式会社 代表取締役
大学卒業後は証券会社に入社し、5年弱勤めて退社した後、出版事業を手掛ける会社を起ち上げる。
大学時代からこれまで自身が著者で出版した本は16冊、読んできたビジネス書・実用書は3,000冊以上。はじめて本を出版する企業や個人事業主の方を対象に、出版でビジネスを加速させるお手伝いに力を入れる。

 

 

 

 

出版業界の現状

 

まずは、出版業界の現状についてお話しします。

 

ここで記載していることは、公益社団法人 全国出版協会 出版科学研究所が発行している『季刊 出版指標』から引用していますので、詳しく知りたいと思った方はぜひご自身で調べてみてください!

 

 

1.2023年の出版市場

 

 

2023年の出版市場は、紙市場・電子市場の推定販売価格が1兆5,963億円となり、2022年の1兆6,305億円から2.1%減少しました。

 

紙の出版は2022年が1兆1,292億円でしたが、2023年は1兆612億円の6.0%減

一方、電子は2022年が5,013億円、2023年は5,351億円と6.7%増となりました。

 

 

電子の売り上げが増加していますが、増えた部分としては電子コミックのみで、その他電子書籍や電子雑誌の売り上げは2022年よりも落ちています。

 

 

コロナ禍では巣ごもり需要があり、出版業界も少し息を吹き返しましたが、落ち着いてきたことで出版の需要が減っていることがわかります。

 

また、紙の書籍ですが、2023年の雑誌の総復刊点数が過去最低の25点となり、歴史ある雑誌が次々と休刊、または刊行本数を減らす動きとなりました。

※「復刊(ふっかん)」…発行を中止または廃止していた出版物を再度刊行すること。

 

 

出典:(公社)全国出版協会・出版科学研究所 「季刊 出版指標」2024年冬号巻頭言より

 

 

2.書籍の新刊発行点数と平均価格について

 

ここからは、総務省統計局のデータをもとに解説を行います。

 

 

上図が令和元年~4年(2019~2022年)までの書籍新刊点数と平均価格をまとめた図です。

 

まず、書籍の新刊点数ですが、令和元年(2019年)は71,903点ありましたが、令和4年(2022年)には66,885点と5,018点少なくなっています。

 

内訳を見ても、学習参考書の新刊点数は増えていますが、それ以外は減少しています。

しかしながら月平均5,574冊の新刊が出続けています。

 

そして、書籍新刊平均価格を見てみると、令和元年(2019年)は総平均が1,197円であったのに対し、令和4年(2022年)は1,268円と年々価格が上昇しています。

 

世界情勢の影響から紙の値段をはじめ、さまざまな物価が上昇しており、書籍もそのあおりを受けていると考えられます。

 

 

3.出版業界の現状まとめ

 

ここまで、出版市場の現状と書籍の新刊発行点数・平均価格について解説してきました。

 

出版市場は元々1996年まではずっと上り調子で、市場規模も当時は2兆6,564億円と現在の倍以上の売り上げがありました。

 

特に雑誌の売り上げが書籍の売り上げの約1.5倍ありました。

(1996年当時は雑誌:1兆5,633億円、書籍:1兆931億円)

 

しかし、消費税が増え、インターネット、スマートフォンの普及から本そのものの需要が減り始め、今日まで右肩下がりを続けています。

 

書店数も2003年には20,880店舗ありましたが、2022年には11,495店舗とおよそ半数となっています。

 

インターネットが普及するまでは、情報収集や娯楽は書籍が担う部分も多くありましたが、現在は誰もが自由に、欲しい情報に無料でアクセスできる時代となりました。

 

出版業界は価値のある情報の提供、価値のあるコンテンツ作り、売る努力をしなければ生き残れない状態になっています

 

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出版業界の仕組み

 

それではここからは、出版業界がどのような仕組みとなっているかについて簡単に説明します!

 

日本の出版は業界3社と言い、①出版社 ②取次 ③書店 の分業で業界が成り立っています。

 

その他にも、ブックライターや著者といった書籍の原稿を書く人、装丁や挿絵・イラストなどを作るデザイナー、本を印刷・製本してくれる印刷所など、多くの人が関わっている業界です。

 

「取次」について、詳しくはこちらの記事をご覧ください!

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出版社が作った本を書店に置くために、取次が配本や集計を行い、書店は読者に届けることができるよう、書籍を販売します。

 

本の利益も出版社、取次、書店の3つに分散され、販売マージンは取次が7~8%、書店が22%程度、残りが出版社となります。

 

ただ、出版社が持つ費用の中にはそもそもの書籍を印刷・製本するまでの費用や印税などがあるため、ほとんど手元には残りません。

 

そして、本が売れればいいですが、売れない場合は常に自転車操業となりますし、関わる方々の賃金も上げることはできません。

 

つまり、本がたくさん売れて出版社の売り上げがアップしないことには、他の取次、書店、出版に関わる人々は常に衰退産業ど真ん中で日々の物価上昇と闘い続けなければならないのです。

 

 

出版社のビジネスモデル

 

出版業界でそもそものコンテンツを作る出版社は一体どのように利益をあげているのでしょうか?

 

出版には主に3つの方法があります。

  • 商業出版
  • 自費出版
  • 共同出版

 

簡単に、一つずつ解説します。

 

1.商業出版

 

商業出版は、出版社が売れる本を作る際に行う方法です。

出版社側が企画する場合と、持ち込みの企画を採用する場合があります。

 

商業出版では著者となる人物に執筆を依頼し、原稿料や印刷・製本代など、出版するためにかかる費用はすべて出版社が出します。

 

その理由は売れる本を作り、とにかく利益を生み出すためです。

なので、著者の意向の反映はあまりされることがなく、とにかく出版社側の意見が強く反映される出版方法となります。

 

2.自費出版

 

自費出版は著者が出版にかかる費用をすべて払い、著者の希望する書籍を出版する方法です。

 

どこまでの工程を出版社が請け負うかによって費用も変わってきますが、例えば、企画を一緒に考えて収録を行い、ブックライターが執筆し、編集・校正を行って入稿、印刷・製本、流通、倉庫代などすべてまかなう場合は100万円~数百万円かかってきます。

 

同人誌のように個人でそのすべてを行う、またはランサーズなどでフリーランスのライターや編集者などに依頼をしてkindleで出版される方もいらっしゃるかと思います。

 

Amazonの台頭により以前よりはずっと出版は取り組みやすく、チャレンジしやすいものとなりましたが、出版社を通さなければできないこと(※)も多くあります。

 

(※)取次と取引するためには出版社を通す必要があるため、全国の書店に本を並べたい場合は出版社から本を出す必要がある。

 

 

自分の書きたい本を作りたい、社会的信頼性の高い本を作りたい、全国の書店に並べたい、とお考えの方には自費出版がおすすめです。

 

3.共同出版

 

共同出版は、出版にかかる費用を著者と出版社が一緒に負担する出版方法のことです。

 

費用負担の詳細は出版社によってさまざまですが、その多くは初版本の印刷・製本費用を著者が持ち、その他の部分を出版社が持ちます。

 

 

出版業界の新たな取り組み

 

本を作るだけでは衰退しかない出版業界ですが、生き残るために各社がさまざまな取り組みを行っています。

 

ここでは、出版業界の新たな取り組みをご紹介します!

 

1.ウェブメディアの運営

 

一番大きいものとして、ウェブメディアの運営が挙げられます。

 

幻冬舎ゴールドオンラインや日経ビジネス電子版など、出版社の専門性、社会的信頼性の高い情報提供を行うことで、インターネット上での読者獲得に精を出しています。

 

メディア運営では、主にタイアップ記事の作成や広告を受け入れることで利益を出しています。

人気のあるメディアの場合、1記事PⅤ保証付きで100万円~、紙の書籍や雑誌との連動で500万円~が相場となっています。

 

出版社は紙の本を作るだけにはとどまらず、そもそもの情報をまとめて発信するという、本来の役割をより強く意識してビジネスを行っています。

 

他にもウェブメディアの役割は大きく、メディアを見たことをきっかけに本を出したいという人々との接点づくりや、ファンダム(熱狂的なファンのコミュニティ)を形成した限定的なイベントの開催など、新たなビジネスチャンスの機会創出に役立っています。

 

2.新たな販路の確立

 

これまでは、書店に本を置いてもらうために、必ず取次を通す必要があり、直販ができませんでしたが、2023年10月に紀伊國屋書店、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、日販による共同出資会社「株式会社ブックセラーズ&カンパニー」が誕生しました。

 

 

ブックセラーズ&カンパニーでは、書店と出版社間での直接取引契約の締結を目指し、参画書店の代表として交渉を行っていきます。

出版不況により取次も赤字が膨らむ中、持続可能な出版流通サイクル創出のために作られた会社です。

 

出版社向けの説明会なども開始され、順次この取り組みが広がっています。

 

3.無人書店

 

東京メトロの溜池山王駅構内に、日販が手がけた完全無人書店「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロロピア店」が2023年9月にオープンしました。

 

人件費の高騰や相次ぐ書店の閉店をうけ、持続可能な書店経営モデルとしての確立を目指すためにスタートした取り組みです。

 

詳しくはこちらをご覧ください!

https://www.nippan.co.jp/news/hontasu_20230914/

 

 

今後の出版業界

 

さて、出版業界の現状やビジネスモデル、新たな取り組みを今回はご紹介しました。

 

本は文化や教養を築くメディアであり、全国どこでも平等に享受することができるものです。

しかし、やはり利益が生み出されなければ出版を支えている人々はいずれ共倒れとなってしまいます。

 

そうならないよう、業界全体が試行錯誤して出版の在り方を模索しているので、ぜひ日常の中で本屋さんがあったら立ち寄ってみてくださいね!

そして、気になる本を見つけた際はぜひお買い求めいただけますと幸いです。

 

出版社はただインパクトのある情報を発信したり、流行に乗った情報を発信したりするのではなく、読者のためになる情報、誰かにとってプラスとなる知識を届けています

 

 

企業出版」もその取り組みの一つで、著者にとっても読者にとっても利益のある出版方法として確立し始めてきています。

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昨今は、オンライン上での情報発信はどの企業もやっているという事態が発生しています。ライバル企業と同じことをやって、差別化…

 

 

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投稿者プロフィール

南川 佳世
ラーニングス株式会社
アドバイザー/ブックライティングサービス『ひよどり』サービス運営統括責任者

大学時代は近世文学を専攻。 日本語教師の資格を持つ。

200名以上の経営者、士業の専門家へのインタビュー経験があり、Webメディアを中心に記事を執筆。
書籍の企画~出版を行うだけでなく、出版記念のウェビナー等、イベントの企画運営も行う。

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