出版と刊行の意味の違いについて詳しく解説!間違えやすい発行や発刊、上梓とは?

 

日本語には似たような意味を持つ言葉でも、使うシーンや相手によって言葉を選ばなければいけないものがあります。

特に、普段聞きなれない言葉だと、使うときに合っているのかドキッとしますよね?

 

今回は本を出すことに関する似た言葉をまとめました!

 

出版」「刊行」「発行」「発刊」「上梓の言葉の意味や使い方を知りたい方必見です!

 

ぜひ最後までご覧ください!

 

【監修者】
 梶田 洋平
 ラーニングス株式会社 代表取締役
大学卒業後は証券会社に入社し、5年弱勤めて退社した後、出版事業を手掛ける会社を起ち上げる。
大学時代からこれまで自身が著者で出版した本は16冊、読んできたビジネス書・実用書は3,000冊以上。はじめて本を出版する企業や個人事業主の方を対象に、出版でビジネスを加速させるお手伝いに力を入れる。

 

 

 

 

出版とは

 

まずは、多くの方が知っている「出版」について説明していきます!

 

「出版」とは、言葉の通り、書籍や雑誌などが販売・頒布されることです。

 

本を作って世に出す際は「出版した」となります。

この「出版」という言葉は書籍を出す際に使われる一番オーソドックスな単語です。

 

また、これまでは紙の本がメインでしたが、電子書籍などを出す際も「電子書籍を出版しました」と使われる場合が多いです。

 

 

刊行とは

 

次に「刊行」について説明します。

 

「刊行」とは、書籍などを印刷して世に出すことで、出版と同じ意味を持ちます。

 

ただ、言葉が使われる際は威厳のある書物、例えば美術全集や専門書、学術書などを世に出す際に使われます。

 

そのため「出版」よりも格式張った言い方をしたい時に使われます。

また、「出版」はその時だけ、というイメージを持ちますが、「刊行」は定期的な出版が行われるイメージが強い単語です。

 

 

発行とは

 

「発行」は、文書や図画などを印刷して世に出すことを指しますが、この言葉が指すものは書籍だけではなく、紙幣や証券をはじめ、入場券などでも使われます。

 

身近なものの中にはビジネスシーンでの「請求書を発行する」という使い方があると思います。

価値のあるものを印刷して交付を行う際に使われる言葉です。

 

そして、著作物の複製版を世に出す際にも使われますが、気を付けたいのは海賊版(違法にコピーされたCDやDVDなど)について言及する時です。

 

正規品が流通しておらず、海賊版だけが世の中に出回っていたとしても、それは「未発行」という扱いになります。

 

海賊版が流通している数や知名度などは関係ありません。

何万部、何百万部出回っていたとしても、正規品が流通していない限りは、未発行の状態なのです。

 

「発行」は、あくまでも適法に行われていることが条件なので、使い分けには注意しましょう。

 

 

発刊とは

 

続いて、「発刊」について説明します。

 

「発刊」とは、書籍をはじめ、新聞や雑誌などの文や図画を印刷して世に出すことを指します。

出版と違う部分として、継続して出版されるものに使われるところです。

 

したがって「発刊」とは、継続して出版されるものを世に出すことです。

 

たとえば、毎週出版される週刊誌や、毎月出版される月刊コミック雑誌などが挙げられ、これらの本は「定期刊行物」と呼ばれます。

 

ただし、定期刊行物すべてに「発刊」を使用するわけではありません。

 

初めて定期刊行物を出版する時に使うのは、「創刊」という言葉です。

 

 

つまり、雑誌Aが初めて世に出た時には

2000年4月に雑誌Aが創刊された

と言います。

 

2回目以降は、

2000年5月に雑誌Aが発刊された

という使い方になります。

 

特に、新聞はこの「発刊」が用いられます。

新聞を出版するとは言いませんので、注意して使ってくださいね!

 

 

補足:知っておきたい「刊」の意味

 

ここでは、補足として「」という言葉について深堀りしていこうと思います。

 

書物を出版する際に多く使われる言葉で、例えば週誌や○○創、新聞などでは朝、夕というように、「刊」が使われます。

 

もともと書物は紙が誕生する前は「版木(はんぎ)」に文字や図形が削って刻まれ、共有されていました。

 

この「刊」という字には「けずりのぞく」という意味があるため、文字や図画を世の中に出す際に多く用いられます。

 

 

上梓(じょうし)とは

 

それでは最後に「上梓」についても説明していきます。

 

著者が書籍などを出版した際に「上梓しました」と使うことがあります。

これは「出版しました」と同じ意味ですが、少し古風な言い方です。

 

ただ、書籍にはこの言葉を使いますが、新聞や広告、チラシなどには使われません

 

 

補足:知っておきたい「梓」の意味

 

先ほど、昔は版木に文字や図画が刻まれて共有されていたと説明しましたが、その際に用いられていた木が「梓(あずさ)」の木です。

 

上梓は漢文で示すと「梓(し)に上(のぼ)す」となり、古くから使われている言葉です。

 

昔は文章を共有する際に木に刻まなければいけませんでしたが、今は紙があるので実際に梓の版木は使いませんが、書籍を出版する際にフォーマルな印象を与えたい場合、この「上梓」という言葉が使われます

 

 

プリントオンデマンドの場合は?奥付に何を使うの?

 

ここでは、プリントオンデマンドの場合、どの単語を使うのか、そして奥付に何を使うのがベストなのかをご紹介したいと思います!

 

「奥付(おくづけ)」とは、書籍の最終ページなどに記載される書誌情報のことです。主に書籍タイトル、著者名、発行者・発行所名、出版年月日、ISBNなどが記載されます。

 

プリントオンデマンド」は、名前の通り、お客様の注文が入ってから印刷・製本・配達がされる仕組みのことです。

Amazonをはじめ、これに対応する印刷機を持っているECサイトや書店から流通します。

 

 

紙の本が作られて流通されるので、出来上がった際は「出版しました」「上梓しました」が使えます!

 

もし、プリントオンデマンドで学術書や専門的な高度な情報が載っている書籍を出版した場合は「刊行しました」を使ってくださいね!

もちろん、「出版しました」でも間違いではありません。

 

ただ、ここで問題なのが、プリントオンデマンドはその都度印刷がされるため、発行日をどのように設定すればいいのか、ということです。

 

奥付に厳密なルールはありませんが、それでも発行日や「版」なのか「刷」なのか悩まれる方もいらっしゃるかと思います。

 

書籍が印刷製本された日を記載する、いわゆる「発行日」ですが、プリントオンデマンドは原稿を入稿したら著者や出版社側がデータを再入稿しない限りは、いつ印刷されるかは注文次第です。

 

通常の書籍であればまとまった数を一気に印刷製本するので発行日が設定できますが、プリントオンデマンドの場合はその都度印刷であり、加えて奥付の日付が自動で変わることはないので、原稿データの時点で決めておかなければなりません

 

 

この場合の案として、「発行日」ではなく「発売日」として、記載する方法があります。

 

こうすれば、いつ注文されたとしても揺るがない数字を記載することができます。

 

そして、書籍の多くが「第●版」、「第△刷」と記載されていることと思います。

これはプリントオンデマンドでどのように対応されるのでしょうか?

 

まずは言葉の意味から説明すると、「版」は出版物の改版が行われた数を示すもので、最初のものは「初版」、原稿の修正を行った場合は「第2版」と記載します。

 

一方「」ですが、これは同じ原稿を何度印刷したか、という意味です。

もし版が初版から第2版となれば、刷はまた1からのカウントとなります。

 

 

そのため、基本的にプリントオンデマンドでは「刷」を使いません

というよりも、システム的に使うことが難しいと言うほうが正しいです。

 

もし、プリントオンデマンドで一度入稿した原稿を修正して再度入稿する場合は、奥付に「第2版」と入れるほうが丁寧です。

 

まとめると、プリントオンデマンドで本を出す際は「出版しました」や「上梓しました」を使い、奥付には「発売日」を記載し、もし修正を行った場合は「第2版」と記載してくださいね

 

 

まとめ

 

今回は「出版」と「刊行」の違いをはじめ、「発行」「発刊」「上梓」についても解説しました。

 

  • 「出版」…書籍(紙・電子)を出す際の最もオーソドックスな言葉
  • 「刊行」…学術書や専門書などに使われる言葉
  • 「発行」…書籍、紙幣、証券など価値のあるものを印刷して交付する際に使われる言葉
  • 「発刊」…新聞など継続して出版されるもの(定期刊行物)に使われる言葉 ※初めての場合は「創刊」
  • 「上梓」…出版よりも格式のある言い回し

 

ぜひ使い分けてみてください!

 

 

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投稿者プロフィール

南川 佳世
ラーニングス株式会社
アドバイザー/ブックライティングサービス『ひよどり』サービス運営統括責任者

大学時代は近世文学を専攻。 日本語教師の資格を持つ。

200名以上の経営者、士業の専門家へのインタビュー経験があり、Webメディアを中心に記事を執筆。
書籍の企画~出版を行うだけでなく、出版記念のウェビナー等、イベントの企画運営も行う。

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