出版業界独自の流通網「取次」の仕組みについて徹底解説!

 

今回は、日本において書籍がどのように読者の手に渡るのか、取次の仕組みから解説していきます。

 

実は、日本の出版市場は独自に成長を遂げ、外からみると特殊な世界となっています。

 

 

この記事では

  • 取次店(とりつぎてん)とはなにか
  • 日本の配本制度とはどのようなものか
  • Amazonの出版業界への影響

について書いています。

 

出版流通について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください!

 

【監修者】
 梶田 洋平
 ラーニングス株式会社 代表取締役
大学卒業後は証券会社に入社し、5年弱勤めて退社した後、出版事業を手掛ける会社を起ち上げる。
大学時代からこれまで自身が著者で出版した本は16冊、読んできたビジネス書・実用書は3,000冊以上。はじめて本を出版する企業や個人事業主の方を対象に、出版でビジネスを加速させるお手伝いに力を入れる。

 

 

 

 

日本ではどのように本が流通しているのか?

 

日本における出版物の流通には3つの大きな特徴があります。

 

  1. 取次店
  2. 委託販売制度
  3. 再販制度

 

この後1つずつ詳しく説明しますが、簡単にまとめると、書籍の流通はすべて取次店が担うことで独自の流通網が築かれており、書籍は基本的に新刊が流通し、売れないと書店が判断した本は取次を通して出版社へ返品ができるので値下げを行わない、というものです。

 

 

1.取次とは

 

それでは、まずは「取次(とりつぎ)」について説明していこうと思います。

 

日本では、出版社と書店をはじめとした小売店の間には取次会社が入ります。

わかりやすく言うと、出版社と書店間専門の流通業者です。

 

トーハンや日販などは有名なので、聞いたことがある方も多いかと思います。

 

 

日本で発売される書籍や雑誌は一度取次の倉庫に集められ、そこから全国の書店に運ばれます。

これを「配本」といいます。

 

配本の凄いところは、発売前に書店から注文を集めなくても、立地や規模、過去の販売実績などに応じて新刊書籍が届けられるところです。

 

もちろん、面陳列やPOP付での陳列を希望する場合は別途書店への営業が必要ですが、基本的に新刊書籍は全国の書店へと届けられます。

 

 

また、本を流通させるだけでなく、出版物の情報を書店へ伝えたり、代金の請求・回収なども行っています。

 

この取次がいなければ、出版社は本を自分たちで全国のお店へ運ばなければならず、負担が大きくなってしまいます。

 

1つの出版社が制作から配送、全国の小売店への販促や代金の請求・回収まで行うことは、どれだけ規模の大きい会社でも負担がかかってしまうのは想像に難くないですよね?

 

加えて、「1冊だけ欲しい」というニーズに対しては配送コストが高くなってしまいますが、取次があることで数量に左右されることなく、一定のコストで安定した配送が可能になっています。

 

 

2.委託販売制度

 

「委託販売制度」とは、出版社が取次を通して本を届け、本の販売を書店に委託する制度のことです。

 

本屋さんへ行くと、ベストセラーや定番本以外は基本的に新刊が多く目につくと思います。

 

あらかじめ書店での販売期間を定め、期間が過ぎたら書店は取次に本を返品することができます。

 

小売店が何か商品を売ろうとすると、最初の仕入れの際に代金を払い、売れ残ってしまったらその分お店の在庫、または破棄になるので負担が大きくなります。

 

ですが、この委託販売制度は売れない本は返せる、そして売れた分だけの金額を取次から請求され支払えばいいので、書店の負担も軽くなるのです。

 

委託販売制度の利点として、まず仕入れの段階で書店の負担がないので、さまざまな出版物を積極的に店頭に並べることができます。

 

読者が限られるニッチな書籍であっても棚に並べることができるので、すべての人へ万遍なく知識を伝えることを可能にしています。

 

 

しかし、取次への返品が増えている、という問題もあります。

 

返品が増えると出版社の負債となってしまうので、本が売れなくて潰れる出版社もあります。

 

そのため出版社側は最適な発行点数、冊数での出版、そして本が売れるよう、販促を行わなければなりません

 

 

3.再販制度

 

そしてもう1つ、「再販制度」というものがあります。

 

皆さんは、本屋さんでセール中の本を見たことはありますか?

古本屋ではあるかもしれませんが、新刊を取り扱う本屋さんではまずないかと思います。

 

なぜかというと、この再販制度があるからです。

 

再販制度は、正確には「再販売価格維持制度」といいます。

この制度は、出版社が決めた書籍や雑誌の定価で書店が販売するというものです。

 

これは出版社と取次、取次と書店それぞれで契約を結んでいます。

 

再販制度の利点についてもご紹介します。

 

例えば、Aという洗剤を買おうとあなたは考えたとします。

近くにスーパー、コンビニ、ドラッグストアがあり、すべての店舗でこのAという洗剤は売られていますが、お店によって値段が違います。

 

これは洗剤だけでなく、食品などでも見る光景ですよね?

 

ですが本や雑誌はどうでしょう?

場所、お店によって価格が違うことはありません。

日本中どこのお店で買っても本の値段は同じです。

 

これが実現しているのは再販制度があるからです。

 

 

補足:「発行元」と「発売元」

 

余談ですが、書籍の裏を見ると、「発行元」と「発売元」の2つが記載されていることがあると思います。

 

これ、実は制作を行った会社と、取次と取引をしている会社でわけられるんです!

 

  • 発行元……書籍の制作を行った出版社
  • 発売元……流通を担当した出版社

 

なぜ発行元と発売元がわかれるかというと、取次会社との契約は新規の出版社ではなかなか難しく、取引ができる状態(実績や安定した売上見込など)になるまで時間がかかってしまいます。

 

そのため、小規模法人や他業種が本業の発行元に対して、流通責任出版社というところが発売元となって、取次を通して全国の書店へと本を流通しています。

 

また、発売元は取次各社との間に発生する業務の窓口となってくれるので、業務の負担も軽くすることができます。

 

 

出版社、取次、書店、著者の取り分は一体どうなっているのか?

 

取次や出版物がどのように流通しているか理解できると、では一体それぞれの取り分はどうなっているのか気になりますよね!

 

まず、書籍には原価があります。

書籍の原価は製本方法や使う紙、ページ数などでも違ってきます。

 

基本的に原価で売ってしまうと利益は出ないので、原価よりも金額を上乗せして定価を設定します。

(例:原価が600円であれば、定価を900円にして利益が出るようにする)

 

そして1冊の本は出版社、取次、書店と3つに利益が分散されます

 

販売マージンは取次が7~8%、書店が22%です。

 

残りが出版社の取り分になるので60~70%程度が入ってきますが、印刷代や人件費、印税などがここから支払われます。

ちなみに、著者に支払われる印税は書籍の売り上げの7~15%ほどになっています。

 

こう見ると、出版社の取り分が多いので一番儲かっていると思われるかもしれませんが、それはベストセラーやヒット作が出たときに限ります。

前述した通り、委託販売制度があるので本の返品が多ければ、その損失はすべて出版社が負うことになります。

 

本を作るために必要な印刷費や編集やライター、デザイナーなどの人件費をはじめ、さまざまなコストがかかっているので、本が売れなければ出版社は厳しい状況へと追い込まれます。

 

 

Amazonによる書籍の買い切り方式での販売について

 

ここまで、出版物は委託販売制度と再販制度によって流通、販売が行われていると解説してきましたが、実はAmazonが買い切り方式を試験的に実施することを2019年1月に発表しています。

 

「買い切り方式」とは、Amazonが出版社から直接書籍を購入し、売れ残っても返品は行わない。

そして売れ残った在庫は一定期間を過ぎたら出版社と協議のうえ値下げ販売を行う、というものです。

 

これが実行されることで、流通させたい本を売りたい分だけ入荷して、余ったら値下げする、ということが書籍の販売でも可能になります。

 

また、2020年からは書店向けに書籍などの出版物の卸販売が「アマゾンビジネス」にてスタートしました。

 

実際問題として、人手不足から取次に書籍を注文しても予定通りに届かないケースは多々見られているため、Amazonを通すことで消費者へスムーズな商品の提供ができるようになります。

 

Amazonの発展により、出版業界もこれから大きな変化が訪れると考えます。

 

 

プリント・オン・デマンド(POD)について

 

Amazonの出版に関する話でもう1つお伝えしたいのは、「プリント・オン・デマンド」という出版方式がある、ということです。

 

Kindleはご存知の通り電子書籍ですが、このプリント・オン・デマンドは紙の本で発売、お客様の注文に応じて1冊から印刷→製本→配送がされるというものです。

 

これまで、紙の本を売るとなると印刷費や流通のためのコストが大きくかかっていましたが、このプリント・オン・デマンドでは印刷も配送もAmazonが担うため、低コストでの出版が実現できるようになりました。

 

Amazonにデータがある限り絶版もないので、通常の書籍だけでなく、希少本、特注本なども半永久的に買いたいときに買うことができます

 

このような特徴からプリント・オン・デマンドは新刊だけでなく、絶版したものの再販手段としても注目を浴びています。

 

そして、このプリント・オン・デマンドでの出版は普段書店へ行かず、ネット検索で本を買う人々へのマーケティングとして高い効果を発揮します。

 

マーケティング施策の一貫として出版をご検討中の方におすすめです!

 

詳しくはこちらの資料をご覧ください!

 

 

 

さいごに

 

今回は出版業界の取次の仕組みについて解説しました。

 

 

【この記事のまとめ】

  • 出版社と書店の間を繋いでいるのが取次
  • 委託販売制度と再販制度で出版業界は守られてきた
  • Amazonの台頭と取次の人手不足から出版業界が大きく変わっていくことが予想される

 

 

そして、出版をご検討中の方、企画についてお悩みの方はぜひラーニングスにご相談ください!

 

書店流通にのせた出版、Amazonプリント・オン・デマンドでの出版だけでなく、個人への配送(ブックDM)など柔軟に対応いたします。

 

ぜひお気軽にご連絡ください!

 

 

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投稿者プロフィール

南川 佳世
ラーニングス株式会社
アドバイザー/ブックライティングサービス『ひよどり』サービス運営統括責任者

大学時代は近世文学を専攻。 日本語教師の資格を持つ。

200名以上の経営者、士業の専門家へのインタビュー経験があり、Webメディアを中心に記事を執筆。
書籍の企画~出版を行うだけでなく、出版記念のウェビナー等、イベントの企画運営も行う。

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