ブランディング出版は企業出版の一種であり、出版社に依頼費用を支払うことで書籍の制作・流通を援助してもらうシステムです。
書籍を通じて社内のブランドイメージを効果的に発信できれば、採用活動の促進や社員の勤労意欲向上など様々な効果が期待できます。
しかしブランディング出版は大企業でこそ盛んに行われているものの、中小企業にはイマイチ浸透していないのが現状です。
そこで本記事では中小企業がブランディング出版を利用するメリット、およびブランディング出版で成功するためのポイントを解説していきます。
ブランディング出版とは?
従来の企業出版が商品・サービスの顧客増加を主目的としているのに対し、ブランディング出版で生み出されるのは「企業そのもののファン」を増やすための本です。
社員・顧客層・求職者の三方面へ同時にアプローチするため、認知度の低さに困りがちな中小企業であれば特に成果を実感できることでしょう。
本項はそんなブランディング出版について、主な事例や他の出版方法との違いなどを解説していきます。
ブランディング出版と自費出版の違い
自費出版とは、出版に関わる費用を著者自身で支払うスタイルです。
他の出版方法に比べて企画・構成の自由度が高く、そのうえ本そのものが生み出す利益(印税)はもっとも大きいため、本作りに自信があれば一つの選択肢に入ります。
しかし出版までのハードルが低いぶん、本作りや経営戦略に関するフラッシュアップも乏しくなるため、業績向上に直結するような本が仕上がる見込みはほとんどありません。
対してブランディング出版では、企業からのヒアリングや課題解決のための企画立案、および出版後の流通や販促などあらゆるサービスを受けられます。
出版社によっては原稿そのものの作成を代行してくれる場合もあるので、「本など作っている暇はない」という方もぜひ気軽にブランディング出版を利用してみてください。
ブランディング出版とカスタム出版の違い
カスタム出版は企業出版におけるもっとも基本的なスタイルであり、ブランディングに限らず様々な経営課題に即した本を制作できるのが魅力です。
また書籍というパターンに限らず、社史や広報誌など多種多様な形態でメッセージを発信できるため、社内ブランディングを目的とする場合もカスタム出版は十分に有力な選択肢といえます。
ただし出版社ごとにジャンルの得意・不得意が必ず存在するため、カスタム出版で必ずしも効果的なブランディングを行えるわけではありません。
その点「ブランディング出版」と明記している出版社は確実にそれを得意としているので、企業イメージの向上を目指す場合はぜひブランディング出版を優先的に検討してみてください。
ブランディング出版の費用
ブランディング出版は安くとも100万円台、高ければ1,000万円を超えるケースもあり、経営に困りがちな中小企業にとっては中々ハードルの高いプロジェクトになっています。
なおブランディング出版の費用に関して、その内訳となるサービス内容は以下の通りです。
- 本の企画および構成
- 原稿の作成および編集
- 表紙や図版などのデザイン
- 出版に必要な印刷および製本
- 出版後の流通およびマーケティング
出費をなるべく抑えたい場合は原稿作成を自ら行うか、もしくは媒体を電子書籍に限定するのが良いでしょう。
とはいえブランディング出版が成功すれば長期的には必ず元を取れるので、あくまでも出版社選びはサービスの充実度を基準に行うよう心がけてください。
ブランディング出版の主な事例
ブランディング出版は以下の事例を含め、企業が抱える多種多様な課題を効果的に解決してくれます。
- 設立4年目の人材紹介会社が、経験不足等のイメージを払拭するために利用。
既卒・フリーター向けの就活本を出版した結果、Amazonでジャンル1位を獲得。さらに本を通じて社名が認知されたことで、月間の会員登録数も大幅に増加した。 - 創業25周年を控えたloT企業が、自社の歩みや考えを社員に浸透させるために利用。クライアントファーストの理念を丁寧に本へ込めた結果、社内ブランディングは無事成功。また取引先や関係者に読んでもらうなど、顧客・人脈の拡大にも一役買った。
中小企業にもブランディングが必要である理由
中小企業の経営者の中には、「今あるビジネスで精一杯。社内ブランディングなど手を付けている余裕はない」という方もいることでしょう。
しかし経営の余裕を失いがちな中小企業だからこそ、ブランディング出版で自社の信頼性を高めていく必要があります。
理由1. 企業が持つブランドイメージを定着させられるため
中小企業に共通する課題として、特に大きいのが認知度不足です。
ブランディング出版等を通じて理念や業務内容を積極的に発信していかなければ、ターゲット層に対して自社のイメージを定着させることはできません。
また起業が盛んな現代においてはあらゆる業界に無数の中小企業が存在するので、他社との差別化を図るためにもぜひブランディング出版を活用してみてください。
理由2. 取引先から信頼されやすくなるため
企業ブランディングで訴求できるターゲットは、社員や顧客だけにとどまりません。
経営者の信念やビジネスの動機を取引先へ効果的にアピールできれば、経営の安定につながるような長期契約も獲得しやすくなります。
実際、取引先との関係が良くなったという話は各出版社の実例でも多く見られるため、BtoB(企業間取引)をメインビジネスとしている会社であればブランディング出版は特におすすめです。
理由3. 自社のビジネスの収益化につなげられるため
緻密な計画のもとで実施されたブランディング出版は、自社に対して以下のような恩恵をもたらします。
- 自社への関心が高まるようターゲット層に働きかけられる
- 取引先からの興味や信頼が高まる
- 社員の勤労意欲も増す
上記はいずれも業績アップに直結する要素であり、ここに本自体の収益が加わることを考えれば、出版費用を回収できないケースはほとんどありません。
むしろこれからのビジネスを収益化につなげるうえで、ブランディング本の存在は長期的に役立つことでしょう。
理由4. 社内の雰囲気改善にもつながるため
ブランディング出版では商売相手のみならず、社内に対してもイメージアップを働きかけることができます。
本を通じて経営者の考えを部下に浸透させることができれば、社内の風通しや信頼関係が大幅に改善することは間違いありません。
特に中小企業では個々の社員にかかる負担が多く、何かと職場の雰囲気が悪くなりやすいので、チームワークを高めるためにもぜひブランディング出版を活用してみてください。
中小企業がブランディング出版をすることで得られる利点
本項では、中小企業がブランディング出版を利用することで得られるメリットをより具体的に紹介します。
目下の利益よりも長期的な自社の繁栄を重視したい方は、ぜひ企業出版の中でもブランディング出版を優先的に検討してみてください。
自社商品やサービスを広められる
商品・サービスそのものは通常の企業出版でも宣伝できますが、ブランディング出版ではそれらを企業そのものの魅力と関連付けながら広めることが可能です。
「開発者の思い」や「制作エピソード」などを通じて自社への関心を集めることができれば、今後生み出す商品・サービスもおのずと注目されやすくなるでしょう。
集客につなげられる
ブランディング出版では本の企画制作のみならず、書店等でのマーケティングも出版社が実施してくれるため、ひとたび流通すれば初版だけでもそれなりの売り上げを見込めます。
そして本の中には当然、企業の魅力に関する多角的かつ網羅的なアピールが詰め込まれているため、高い確率で本の売り上げを集客につなげることが可能です。
人材募集につなげられる
ブランディング出版を通じて発信された企業イメージは、顧客のみならず求職者にも届きます。企業理念やビジネス内容について、一般的な求人媒体よりもはるかに詳細な記述が可能なため、人手不足に困りがちな中小企業でこれを活用しない理由はありません。
大きな経営課題がなくとも、将来的に自社の規模拡大を目指すのであればブランディング出版は大いにおすすめです。
従業員に自社の理解をさらに深めてもらえる
中小企業では滑り止め感覚で入社してくる人も少なくないため、企業理念を浸透させるにはブランディング作業が半ば必須です。
しかし中小企業の多くは日々の社業に手一杯であり、大企業のようにブランディング用のコンテンツを自前で作成している余裕はありません。
その点、ブランディング出版を利用すれば本制作のほとんどを出版社に委託できるので、従業員のモチベーション管理を課題と感じている方はぜひ一度試してみてください。
ブランディング出版をする上でのポイント
ブランディング出版では本の制作や流通を出版社が徹底サポートしてくれますが、かといって何から何まで任せっきりにしていては、企業のメッセージを正確に反映することが難しくなってしまいます。
そこで本項ではブランディング出版を成功させるために、依頼主側が心がけるべきポイントを3点紹介します。
ターゲットや本の内容をハッキリさせる
本の制作でまず必要になるのが、伝えたい内容やターゲットとなる読者層を明確にする作業です。
いずれも出版企画の要となる情報であり、これらが曖昧なままでは出版社側も協力のしようがありません。
ブランディング出版を実際に利用する際は、出版社へ問い合わせる前にターゲットや本の内容を必ずハッキリさせておくよう心がけてください。
ブランディング出版に詳しい人材に協力してもらう
ブランディング出版では本制作の多くを出版社に一任できますが、経営者自身が楽をできるわけではありません。
原稿執筆を丸ごと依頼するにしても、出版社との打ち合わせや原稿用の取材対応などある程度の時間と手間は必要になります。
そのため出版社とのやり取りを一人でこなせる自信がない場合は、業界の伝手を頼るなどしてブランディング出版の経験者に協力してもらうのがおすすめです。
自社の状況をしっかりと把握する
ブランディング出版の大前提として、自社の経営課題がどこにあるのかは必ず把握しておかなければいけません。
他社との差別化や社内の結束強化など、求める成果によって本の方向性は大きく変わってくるからです。
また出版社とのやり取りに大なり小なり時間は割かれるので、実際に依頼する際はスケジュール面の状況もしっかり確認するよう心がけてください。
ブランディング出版の注意点
最後に、ブランディング出版の不便な要素や注意すべき点について紹介します。
本を含めてあらゆる情報媒体には必ず得意不得意があるので、いま現在ブランディング出版を検討中の場合も、最終的に依頼へ踏み切るかは他の手段と比較したうえで決めるよう心がけてください。
ブランディング出版で可能なアプローチの幅は限られている
従来の企業出版が電子書籍を含む様々な形式で情報を発信できるのに対し、ブランディング出版で採用される情報媒体はほとんどが紙の本です。
また費用の都合上、現実的に発行可能な部数も限られてくるため、ターゲット層全体にまんべんなく訴求したい場合はあまりおすすめできません。
情報の更新は不可能
情報媒体としての本はインターネットよりも高い信頼性をほこる反面、一度出版された本の内容は一切更新できなくなるため、タイムリーな情報がメインとなる場合は本以外でのブランディングを推奨します。
なお改訂版を個別に制作すれば一応は情報の変化に対応できるものの、かかる費用は初版と何ら変わりないためあまりおすすめできません。
競合他社の人間にも読まれる可能性がある
ブランディング出版で特に注意したいのが、「競合他社の人間にも読まれる可能性がある」という点です。
他社との差別化が大切とはいえ、企業戦略や各種ノウハウをあまり詳細に記載しすぎると、それらを他社に真似されてしまう恐れもあります。
ブランディング本を制作する際はくれぐれも、公開していい情報とそうでないものをしっかり区別するよう心がけてください。
中小企業でもブランディング出版は可能!
ブランディング出版は顧客や社員など多方面に自社の魅力をアピールできるコンテンツであり、中小企業においても積極的に活用すべきであることがお分かりいただけたと思います。
ブランディング出版に興味を持たれた経営者の方は、ぜひ色々なプランを見比べながら最適の出版社を探してみてください。
投稿者プロフィール

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学生や子育て中のママなど、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属。
出版をもっと身近に感じてもらうために、自分の家族や友達にも読んでもらえるような、分かりやすく丁寧な記事づくりを心掛けています。
これからも有益な記事を日々発信できるよう、尽力していきます!
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